『大会予稿集』目次


日本手話学会第44回大会

2018年12月1日(土)・2日(日)

タワーホール船堀(東京都江戸川区)

 

【研究発表】

文末指さしを再訪する:手話文を考察するための予備的研究

遠藤 栄太(香港中文大学大学院)

文末指さしは主語を指す「文末コピー」であると指摘されているものの、未解明な点が多い。本研究では聾者による自然な会話を資料として、文末指さしの出現を分析し、その多くは主語を指し示すことを再確認した。加えて、NM 表現(松岡2015)などとの関連性も調べることによって、手話言語の文末指さしや手話文の研究はもちろん、自然言語一般における文末の統語的構造の解明へ向けた予備的研究を試みた。

 

日本手話通訳者は日本手話の不適格音節を正しく判定することができるか

原大介(豊田工業大学)中野聡子(大阪大学)米田 拓真(Toyota Technological Institute at Chicago)

全日本ろうあ連盟が出版する「新しい手話」シリーズのうち入手可能な9冊に含まれる不適格な音節409個を特定した。次いで、手話通訳者がこれらの不適格性をどの程度正しく判定できるのかを調査した。その結果、通訳者とろう者の不適格音節判定能力に大きな違いあることが明らかとなった。

 

日本手話における鰻文構文の布置:指差鰻文における連続体構造および非決定論的構造

末森 明夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所)

本稿では鰻文構文における主題 network 理論を援用し、日本手話における鰻文構文の布置をはかった。具体的には、指差2 語文、「象は⿐が⻑い」に該当する表出、体言止め文に該当する表出における鰻文構文の適用をはかることにより、鰻文構文の述部におけるclassifier predicates や文法化の影響を考察した。さらに、指差2 語文や指差3 語文における指差の属性や語順を検証し、指差(構成素)の連続体構造および非決定論的構造の可能性を考察した。

 

【基調講演】

Sign Language Studies in Myanmar

Tin Aye Ko (Myanmar Deaf Community Development Association)

This paper will first of all define the situation of the deaf in Myanmar and followed by the existed and possible ways of integration in the society, and then the presentation of the works done to standardized the Sign Language in Myanmar. The conclusion part will emphasise on the recommendations and encouragements for progressive future of the deaf in Myanmar; especially not to be left behind by the society in this very fast moving era of democratization of Myanmar.


日本手話学会第43回大会

2017年12月2日(土)・3日(日)

タワーホール船堀(東京都江戸川区)

 

【基調講演】

手話(法)教育時代の手話を研究する為に:能動的志向性を堅持した、「テバナシ」への接近

岡本 洋(関東聾唖史研究会)

手話は学校語である。稿者は、手話(法)教育が普く漲っていた驚異的な時代に培われた言語が後に遭遇した矮小化等の消長を例証し、必ずしも内発的共有知とは成らない問題群を各個の当事者性も踏まえ先鋭にした(2014,2016)。片々と為らざるを得ない中で方策の一つ一つを端的に示し得た。統語の親和乃至融和の内向型偏差にも着目して論じ、形成過程に対する幾許かの影響を指摘して謙抑的であった大恩人の小西信八へ与えなければならない正当な評価を学際的に行った。調査研究を構成するべき要件を前稿に続いて定立·充足させて行き、その大切さを摘録させながら随所で直截に物語る一目瞭然の両史料を挙げ、逐次手説する事は可及的解明への橋頭堡建立を支える。

 

ウルビノ稿本『絵画の書』における聾唖態概念編制

高橋和夫(独立系研究者)末森明夫(特定国立研究開発法人産業技術総合研究所)

Leonardo da Vinci 著《絵画の書》には唖者と身振りに関する記述が散見される。本稿では選択機能体系言語学および翻訳論的視座に基づき、《絵画の書》に見られる聾唖態語彙・文脈を様々な言語の下に対照し、聾唖概念編制史への照射をおこなった。

 

日本におけるろう学校理容科の歴史と変遷:設置の経緯と開設後の動向ならびに卒業生たちによる実践

吉岡佳子(一橋大学)山本直弘(岡山県青鳥理容文化会)

日本のろう教育における理容科は80 年以上の長い歴史を有し、多くのろう理容師たちを社会に送り出してきた。本発表では、ろう学校における理容科設置に至る経緯を概観し、以後の変遷を追う。さらに、手話話者(=言語的少数者)として聴者(=言語的マジョリティ)である客と対峙する卒業生たちのコミュニケーション実践を、口話教育の効果の有無や範囲を念頭において検証する。また、ろう理容師たちが独自に結成している全国規模の団体「全国ろうあ理容連盟」について報告する。

 

立聴覚特別支援学校の手話研修に技能評価が導入されない理由の分析

坂井肇(筑波技術大学大学院技術科学研究科)大杉豊(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター)

教員を対象とする手話研修の実施状況に関して全国の公立聴覚特別支援学校(以下、聾学校)を対象に質問紙調査を実施した結果、回答のあった53 校の聾学校においては全ての学校で手話研修が実施されており、108 件のプログラムが報告された。これらのプログラムにおける教員の手話技能に関する評価の導入状況について見ると、12.04%のプログラムにおいて導入されている一方で、導入されていないものは87.04%にのぼることがわかった。評価をする必要性がないため評価を導入していないとするプログラムが過半数を占めるが、「適切な評価法がない」「評価基準が定まっていない」などの事情から評価を導入していない或いはできないプログラムも存在している。

 

「手話言語」の有意な音韻・情緒・文法的な媒体特性分析試論

吉澤昌三((一社)栃木県聴覚障害者協会)

手話は「音韻性・情緒性をも持つ形態性・動態性言語」。言語は、音声の大小、強弱、声音、長短、遅早、連続・非連続等で、持つ「意味と音種・質」が変化する。手話は、これらの他に発出と消失までの位置、形、大小、方向、速度、休止・繰り返し、表情・身振り併用等の要素から、形成・表象される視覚・動態(形象)性音韻つき言語。山の形での山の音韻と語義。

 

手話言語を視覚言語モデルでみる:日本手話と日本語対応手話(手指日本語)の再定義を提案する

川口聖(関西学院大学手話言語研究センター)

これまで日本における手話について、同時法手話、伝統的手話、シムコム、日本語対応手話、日本手話、中間手話、中間型手話、手指日本語など、様々な分類名が生じてきた。日本での音声言語においては、他国言語との言語接触に和製英語など、借用語としての日本語が生じてきたというだけで、手話と似たような分類名は生じていない。また、日本では二つの手話があるとか、日本の手話とは日本手話も日本語対応手話もまとめて一つとか、日本手話と日本語対応手話の間に中間手話があるなど、昭和43 年栃木聾学校が同時法の新しい手話を作り始めてから50 年近く経ちながら、音声言語において生じるはずがないような論争が続くほど、まことしやかに主張する人が今もなお多く目立っている。そこで、その論争の的になっている、日本手話と日本語対応手話それぞれの定義を検証するとともに、それらの再定義を提案する。

 

日本手話研究の課題:言語接触の問題を中心に(日本手話と書記日本語)

砂田 武志(日本国際手話通訳・ガイド協会 手話通訳学研究チーム)

手話言語学に関する研究は、多岐に数多くの発表や報告がなされている。これら公表された研究内容を精査してみると、音声言語学に依拠したものが多くみられ、必ずしも視覚的創造を尊重したものではないことがわかる。このことから、手話母語話者の立場から、従来の研究方法ではなく、そもそも日本手話の起源である視覚的創造を尊重した上で、日本手話を分析した。そして、本発表では、従来の音声言語学に依拠した研究から得られた結果は、日本手話を説明するには適さないことを指摘し、新たな概念を提案する。

 

文末の「いう」が表す習慣性について

黒田栄光(NPO 法人日本手話教師センター)高嶋由布子(東京学芸大学 日本学術振興会)原千夏(NPO 法人日本手話教師センター)

本発表では日本手話の文末に表れる「いう」が作る構文を分析し、「[NP1][NP2]いう」という形式で「NP1 はNP2である」というコピュラを表す用法以外に、「[[NP]i [VP]] [PTi(NP)いうPTi]」で、「NP は(いつも)VP スル」という事態の習慣性・一般性を表す用法があることを示す。日本手話は、動詞の活用などで義務的にテンスが指定されないため、事態を表す裸の文では、いつ起こったのか特定できない。このテンスが指定されない事態を表す文に、「いう」が後続することで、述べられた事態が、「主語について、いつも起こっている」という習慣性を指定する用法があり、さらに非手指要素が変わると意外性を表すことから、「いう」は主語の性質を示す機能があると主張する。

 

日本手話単語/あく・あける/の意味地図

村越啓子(NPO 法人手話教師センター)

本研究では、日本手話の自他同形型自他交替の機序を明らかにするために、日本手話談話における日本手話単語 /開く/ の他動詞的用法を検証し、意味構造および構文構造のスキーマ統合プロセスおよび範疇化を整理した。その結果、/開く/ は実体CL スキーマと構文スキーマが拡張的範疇化されることにより他動詞的構文を表出されることが窺われた。

 

日本手話複合語[聾] [損] の合成構造の拡張記号図式に基づく記号論的分析

末森明夫(特定国立研究開発法人産業技術総合研究所)

日本手話には日本手話単語2 語[聾][損]の当て手話により「LAWSON 〈ローソン〉」を意味する表出が見られる。本稿では手話言語の記号論的分析のために、認知文字論の拡張記号図式(黒田2013、2015)を拡張し、意味空間・音韻空間・書記空間・手話空間の4 空間よりなる拡張記号図式を用意した。この図式を用い、音韻形態論・意味論・語用論・歴史社会言語学に立脚して、[聾][損]の合成構造の記号論的分析をおこなった。その結果、当て手話は当て字ないし判じ物と共通する特性を持つ傍ら、諸空間の重層性・複層性により喚起される意味拡張に変化が生じることが明らかになった。

 

「私」の存在と手話言語:心と身体との一体性を求めて

髙山 守(東京大学)

「私」が存在するということは、絶対に確実であると私たちは考えている。けれども、この絶対確実な「私」の存在が近年揺らいでいる。まずは哲学の領域においてだが、「心の哲学」と称される一連の議論において「私」つまり「心」が、全面的に脳(物)に解消されるという見方が支配的になっている。また、私たちの日常においても、「私」とはどこに存在するのかと問うてみると、たちまちその存在の不確実さに気づかさるという状況にある。しかし、いま手話言語に着目してみると、「私」の存在は、こうした不確実な揺らぎから解放されて、そもそもの絶対的な確実さへと立ち返ることができるように思われるのである。

 

日本手話言語の修辞的表現:日本語の修辞的表現と比較して感情を表す日本手話単語を分析する

川口聖(関西学院大学手話言語研究センター)

巷に溢れる日本手話辞書の多くには、手話単語一つ一つにその意味として日本語単語一つずつ、また逆の場合も同様に、対応しているかのように載せられているため、日本国内大学の言語学専門の先生たちも含めて多くの人に、日本手話言語は日本語から言語変化、あるいは派生化されてきた、コミュニケーション手段であると、重大な誤解を招いている。更に、厚生労働省委託の手話研究・普及等事業で、様々な日本語単語の一つ一つ対応するべく、ただ手話を知っているだけの特定の人によって、新しい手話単語としてどんどんつくられ、そして、それらを標準手話にして半強制的に普及させているため、日本手話言語の多義性や多様性が失われつつある。これまでの手話言語学研究に、自然言語としての日本手話言語があることを示すべく、テンス、アスペクト、モダリティなどで、手話言語の多義性や多様性について証明されてきた。そこで、日本手話言語の修辞的表現について、市田(2005)などが軽く触れられた位なので、ここで深く掘り下げていきたい。

 

ミャンマー手話のNMs:ミャンマー手話/食べる/のNMs を分析して

中山慎一郎(日本手話研究所)

本研究は、筆者が初めてミャンマー手話と接したときに、MS (1)は全く違うものの日本手話との類似点があると感じたことがきっかけになっている。世界中のネイティブサイナーの会話を注意深く観察すると、例外なくNMs(2)を駆使して会話していて、NMs が手話において重要な機能を担っていることがわかる。しかし、欧米の一部の国の手話を除き、日本も含めた各国の手話におけるNMs の役割や性質については十分に解明されているとはいえず、NMs の果たす機能について明確にする必要がある。

 

手話習得過程における補完的学習法の検討:手話学習者の手話プロソディの特徴

繁益陽介(筑波技術大学大学院情報アクセシビリティ専攻)大杉豊(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター)


日本手話学会第42回大会

2016年12月3日(土)・4日(日)

タワーホール船堀(東京都江戸川区)

 

【基調講演】

Sign Language Studies in Indonesia: The use of pingky finger in Jakarta Sign Language

Iwan Satryawan Setyohadi (Sign Language Research Laboratory, Department of Linguistics, University of Indonesia)

 

【研究発表】

日本語対応手話は自然言語であるべきか:日本語対応手話(手指日本語)を言語学的アプローチで見た一考察

川口聖(関西学院大学手話言語研究センター)

日本語対応手話(手指日本語)について、これまで数多くの文献で指摘されているとおり、日本語対応手話擁護論や中間型手話などで、日本語対応手話の存在を学術的に示唆されたり、ろう教育の現場において、日本語対応手話活用の重要性が唱えられたり、一般社会においても、日本語対応手話はクレオール言語であるとか、自然言語であるなど、まことしやかに主張したりする人が目立っている。そこで、日本語対応手話は、学術的で言語学的分析の対象になるべきである自然言語にふさわしいかどうか検証する。

 

手話習得過程における補完的学習法の検討:手話学習者の手話習得に対する自信度の調査研究

繁益陽介(筑波技術大学大学院情報アクセシビリティ専攻)大杉豊 (筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター)

本研究は日本での公費による手話教育の一環である手話奉仕員養成講座基礎課程修了予定者を対象に、手話学習者の「個人の特性」および「学習動機」、「学習方略」、そして手話習得に対する自信度について質問紙調査を実施したところ、サンプル数が少ない点で課題はあるものの、学習方略が手話学習者の手話習得の自信度に対する影響を及ぼしていることが示唆された。

 

日本手話言語における指さしの分類:視覚モダリティとしての指さしとは何か新しく提案する

川口聖(関西学院大学手話言語研究センター)

手話言語の指さしについて、これまで数多くの文献で指摘されている通り、日本手話言語において指さしの使い方は多種多様である。しかし、聴覚モダリティの音声言語の言語学的分析に合わせているため、ますますわかりにくくなっているきらいがある。そこで、視覚モダリティの手話言語に合った言語学的分析として、意味論及び語用論的なアプローチを用いて、指さしについて新しい分類を提案する。

 

ミャンマー手話のNMs:ミャンマー手話疑問文を分析して

中山慎一郎(日本手話研究所)

本研究は、筆者が初めてミャンマー手話と接したときに、MS (1)は全く違うものの日本手話との類似点があると感じたことがきっかけになっている。その後、ミャンマーろう者と接しているなかで、類似点はNMs(2)およびMSとNMs の重層表現(3)のルールにしぼられてきた。世界中のネイティブサイナーの会話を注意深く観察すると、例外なくNMs を駆使して会話していて、NMs が手話において重要な機能を担っていることがわかる。しかし、欧米の一部の国の手話を除き、各国の手話におけるNMs の役割や性質については十分に解明されているとはいえず、NMs の果たす機能について明確にする必要がある。

 

日本手話にみられる変種と言語変化:東京と大阪における数詞・色彩・親族・生活基本語彙を対象に

相良啓子(国立民族学博物館)

本研究では、東京と大阪、それぞれの地域で使用されている手話語彙に着目し、どのような表現があるのか、また、どのような通時的変化が生じているのかについて、文献記録から得られる情報および実際に使用されている手話データにもとづいて分析を行う。また、それらの変化と、台湾手話における台北と台南の表現の違い、および台湾手話にみられる語彙の変化がどのように関連し得るのかについて考察する。

 

日本手話の言語構造の考察:動詞「行く」と「とぶ」を中心に

伊槻 悟

私の手話が通じにくいのは、手話を日本語で考えているからと思い、言語の違いを明らかにしたいと思った。手話は3 次元言語であり、音声は1 次元である。音声言語とは違う手話の言語構造を知るために、動詞表現を考察する。手話言語の音韻パラメータを松岡(2015)は「位置、手型、動き、掌の向き」であると述べているが、本稿では、動く方向も考察することとした。本稿中の<>は手話単語を意味する。まず、音声日本語の動詞「行く」「とぶ」を取り上げ、手話の言語構造を考察する。次に、「行く」と「とぶ」の手話の一動作表現の意味・内容を考察する。さらに、一動作表現は単語といえるのかを考察する。

 

文末詞「いみ」の作る日本手話の複文構造

黒田栄光(NPO 法人日本手話教師センター)原千夏(NPO 法人日本手話教師センター)高嶋由布子(日本学術振興会/東京学芸大学)

本発表では、日本手話の文末詞「いみ」がどのような意味の文で出現可能であるか分析する。結論として文末詞「いみ」は、「朝、道が濡れていたのは、昨夜雨が降ったからだ」のような、ある状況の叙述P(朝、道が濡れている)の理由を説明する文Q(昨夜雨が降った)の文末につく標識であり、複文を構成するマーカーであることを提示する。直接経験した事実である状況P に対し、理由Q は基本的には確認された事実でなければならず、事実としての因果関係を提示する用法が基本であり、論理構造を示す接続詞であると考えられる。また、「白髪が増えたのは、年をとったからだ」の後件のような、ニュアンスとして〈絶対そうである〉といった〈決めつけ〉を提示する用法もあることを指摘する。

 

日本手話における二重表現:解説文を題材とした予備的研究

遠藤栄太(香港中文大学大学院)

自然言語では「形態統語的素性、形態素、語、句などの構成素が2 回以上表現される構文」がしばしば見られ、二重表現(Doubling)と呼ばれている。手話言語でも、アメリカ手話で動詞のサンドイッチ構造が観察されている。日本手話では、指さしの二重表現が指摘されているものの、未解明な点が多い。本研究は予備的研究として、坂田他(2008)のDVD 手話映像の説明文に、動詞や形容詞など様々な単語の二重表現を確認し、今後の研究の可能性を示唆している。

 

RS再論のための予備的議論:言語一般における「引用」現象への接近としてのRS

森 壮也(JETRO アジア経済研究所)

市田(2005b)は、動詞の一致現象を手がかりにRS に行為型と引用型の二種類あるとした。本稿では、數見・森(2012)に引き続く議論として、RS を手がかりにこの市田の議論を検証すると共に、この枠組みの限界と問題点を指摘する。

 

手話言語と因果表現:手話言語特有の世界了解をめぐって

髙山 守(東京大学)

私たちは、この世界に起こることには、すべて原因があると考える。すなわち、私たちの世界は、根本的に因果関係で成り立っている、つまり、とにかくもすべてについて、まずは原因があり、その原因によって一定の結果が引き起こされるという構造になっている、と。しかし、実はそうではないのではないか。因果関係というものは、実は、単に、私たちの内的な気持ちの表現なのであり、客観的には(事柄としては)存在していないのではないか。こうした私たちの世界の客観的なあり方を、実は手話言語が正確に表現しているのではないか。本発表は、こうした問題設定のもとで、考察を進める。

 

洋学資料における「態」概念の照射

末森明夫 高橋和夫(日本聾史学会)Corrie TIJSSELING(Utrecht University)

近世後期の蘭和・和蘭辞書『江戸ハルマ』『訳鍵』『長崎ハルマ』や英和・和英辞書『和英語林集成』に採録されている「態」語彙および「聾」「唖」語彙の緝輯をおこない、近世日本語における「態」語彙が「仕方/仕方話」「態語」「手容」「手真似」など多岐に渉る他、近世蘭語 [stommetje] が「態」概念を包含することを明らかにした。次いで「態」語彙の意味論的ないし類型論的考証をおこなうことにより、「聾」「唖」「態」概念編制の動態的重層化の可視化を図ると共に、「聾」「唖」「態」概念編制史誌の射程の外延を図った。

 

手話法の実証研究に資する史料の排列及び適用:歸唖初學(オシニカヘレウヒマナビ)

岡本 洋

本邦では嘗て僥倖にも手話教育を以て始動したが途絶して以降、口話教育が依然として持続している。口話生とその関係者には想像の埒外にある手話法の実態が問題となるが、各方面で史学的な整備が遅々としている現状に鑑みて些少乍らも存在する史料を用意した。無論そこには精疎があり、時に応じて内容的に益する史料を採択し併せて遺された可能性を極力追究して行く事が肝要。そうする事で手話生と口話生の相違や共通部分等、特に統語的な観点を重視した研鑽が可能となる。錯綜した手話と口話が織り成す綾と錦を解きほぐす試論が断片的に終わると雖も、共有課題とする可く各機関各人との連携をも長期的視野や計画の起点で進展しなければならない。

 

手話生の史料学事始め:「睦ニュース」に見る、栗山カノ女史の手話を通して

岡本 洋(関東聾唖史研究会)

手話時代の事象を手話学の各領域で微細に検討するには前提条件となる史学的裏付けが一定上の分量で確保され、それを基点に進めて初めて得られる知見を積み重ねるのが最善であり、それを逐次敷衍したい。当時受けた教育の反映が手話生と口話生の言語景観に於て如実に顕れ、生活の基盤となっているが、手話生を記録した物は僅かであるし正面切っての調査研究も殆ど見当たらない。それは手話生との面会又はその史料が「容易」には得られない事に起因する。更には両生間の断絶が大きく影響した。手話生を直視し学術的に分析して行く事が言語の本質や核心等に迫れる足掛かりとなろう。全般に寄与する映像を紹介する。小西信八が在職中の尊い遺産である。

 


日本手話学会第41回大会

2015年12月5日(土)・6日(日)

タワーホール船堀(東京都江戸川区)

 

【基調講演】

Linguistic Issues in Taiwan Sign Language

Jung-hsing CHANG (Professor of National Chung Cheng University, Graduate Institute of Linguistic)

 

【研究発表】

FSL は,どのようにASL と異なるか?:強調形にみる音韻の違いから見た考察

森 壮也(JETRO アジア経済研究所)

フィリピン手話(FSL)は,フィリピンのろう者が日常のコミュニケーションに用いている手指言語である。同国での公教育の開始が米国からの教員が主導して行われたという歴史的経緯,またその後の米国平和部隊(PC)の国際協力投入により,FSL にはアメリカ手話(ASL)の影響が強く見られ,時にはFSL とASL が同一視されることもあった。しかし,PDRC & PFD(2004)も論じているようにFSL とASL とは異なる言語である。このことは,同書でも語彙の違いを事例に説明しているが,主要語彙の手型が異なることもその後,確認されている。語彙論的にも各地域の手話変異の調査でASL とは大きく異なる語彙が多数存在することも明らかになっている。本研究では,これらを踏まえた上で、手話の強調形という観点から,両者がどのように異なるのかを明らかにした。

 

有契性の高い語・文の呼称についての提案

中山 慎一郎(日本手話研究所)

日本の聾者界において有契性の高い語は「CL」、「具体的表現」、文は「CL構文」、「CL述部」などの呼称が用いられてきた。それも、それらの語が普及してきたのはここ10数年のことである。前大会では、CLの定義の再確認および分類の整理を試みた。今回は、「CL」などの呼称が手話使用の実態に基づいた相応しいものであるかどうか検証を試み、新しい呼称を提案する。

 

超分節接辞的「中動態」非手指標識:操作類辞系動詞/壊す/の他動性交替および態・意味地図におけるcogito 的自己関与

末森明夫

日本手話の操作類辞系動詞[壊す]に非手指表出が呼応する用例の形態統語的ないし意味論的考察をおこない,[壊す]の態・意味地図を作成した.各用例における態およびcogito 的自己関与に基づく主体/客体認知を考察し,無標[壊す]は中動態に位置付けられ,中動態標識と認められる非手指表出が共起することにより,他動性交替を包含する態および意味の変化が生じる機構を明らかにした.また,非手指表出は一律に非手指標識と位置づけられるわけではなく,文脈に応じて非手指表出と非手指標識が動的に前景化されるものと考えられた.本稿における知見は日本手話の語学学習支援資料にも資するものと考えられる.

 

日本手話における空書:「~代」の語彙化に関する予備的考察

原千夏(NPO 法人手話教師センター)黒田栄光(NPO 法人手話教師センター)末森明夫

高齢の日本手話話者の談話や日本手話による演説体に散見される空書の用例を集輯し分析をおこなうことにより、日本手話語彙体系における空書の語彙化の可能性を明らかにした。しかしながら、派生接辞「~代」は高齢聾者においては空書で示される例が散見されるものの、壮年および青年層においては空書の手話単語あるいは指文字による代替が進んでいることがうかがわれた。

 

日本手話の数詞抱合における制約:Part Ⅱ

池田 ますみ(香港中文大学:手話言語学及びろう者研究センター)

日本手話における数詞抱合の研究で、抱合時の制約の可能性を探った。日本手話における数詞抱合には、数を表す手型と分類詞という2 つの形態素が関わっており、数を表す手型が分類詞の動きをたどることで表現される。この数詞抱合の産出には手型や動きからくる制約が見られる。また、両手と片手による制約の比較、肌タッチにおける数詞抱合の産出に生じる制約に焦点を当てる。

 

日本手話の関係節 再考:研究対象としての可能性を探る

遠藤栄太(香港中文大学)

関係節はこれまで、様々な言語学者によって幅広く研究が行われてきた。日本手話についてはあまり研究の対象とされておらず、言及している先行研究も少ない。Endo(2015)は引き出し課題等を用いて自然な日本手話の語りを収録し、関係節の分析を試みたところ、出現数は少ないものの、先行研究で報告されている2 種類の関係節(主要部前・主要部内在型)を確認できた。本研究では、聴者である筆者が同様の手法で撮影した別の手話データにおける関係節を分析し、研究対象としての関係節の可能性を探る。

 

日本手話の応答詞・文末詞に呼応する借用口型/いみ/

黒田栄(NPO 手話教師センタ)原千夏(NPO 手話教師センター)末森明夫

日本手話の自然談話に見られる借用口型/いみ/の用例の集輯分類をおこなうことにより、述べ立て文、疑問文、ないし問いかけ文における文末詞的用法に加えて、応答詞的用法もあることを明らかにした。また、文末詞的な意思応答的用法はreferential shift においても許容し得るものであることがうかがわれた。借用口型/いみ/は日本手話の文末詞ないし応答詞に呼応する形で再分析を経ることにより、複合語・語彙化および語義派生が生じている可能性がうかがわれた。

 

「わかる」同義語の分布:映画《名もなく貧しく美し》における談話分析

村山正昭(放送大学教養学部全科履修生)末森明夫

昭和時代中期に日本で用いられていた手話の位相をうかがう言語資料として映画《名もなく貧しく美しく》を取り上げ、/わかる/および同義語の手話単語の記述資料を作成し、言語学および社会言語学に立脚した分析をおこなうための基礎資料とした。/わかる/および同義語にみられる手型は指文字「て」と指文字「さ」の2 種類が見られ、手型の分布と表現者に相関性が見られたものの、語用論ないし社会言語学的に優位な規則を見出すには至らなかった。

 

日本手話 [少ない] 呼応非手指表出の意味地図:データ解析による非手指表出群における意味範疇の動態様相の可視化

末森明夫 小林京子(NPO 法人日本手話教師センター)

本稿では日本手話単語[少ない]に呼応する情意的非手指表出群を意味論的に分類し,データ解析ソフト「R」を用いて主成分分析,群分析,および多重対応分析をおこなうことにより,意味地図を作成し情意的非手指表出群の意味範疇の可視化をはかった.意味地図より,(1) 非手指表出群における意味範疇「驚き」「疑問」「不満」が共有含意されること,(2) 非手指表出群の成分は「目・眉」が第一成分,「手話口型」が第二成分となるものの,「手話口型」により「目・眉」の意味範疇の前景化ないし後景化が生じる傾向もあること,の2 点が窺われた.この意味地図は手話言語学習の支援に資するものと考えられる.

 

ろう者の政策参画における当事者性の反映に関する一考察:群馬県手話言語条例の「教育」をめぐる議論に着目して

二神麗子(群馬大学大学院教育学研究科障害児教育専攻)金澤貴之(群馬大学教育学部障害児教育講座)

群馬県手話言語条例制定過程において、当事者の「想い」がいかにして反映されたのかを検証するために、「群馬県手話言語条例(案)研究会」での配布資料を基に、教育に関する事項である第12 条の議論の推移を分析した。その結果、当事者の「想い」を反映させるためには、「根拠に基づく事実を提示」、「手話言語条例があくまでも「理念法」であること」、「執行部からの指摘を正面から反論するのではなく、一部受け入れた上で修正案を提示すること」といったストラテジーが用いられていたことが示唆された。


日本手話学会第40回大会

日程:2014年11月1・2日

場所:タワーホール船堀・小ホール

 

【基調講演】

Issues and future directions of Korean sign language studies 

Sang-Bae CHOI

 

【研究発表】

北朝鮮手話について

佐々木大介(成蹊大学)

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で手話言語が使用されているといわれているが(北朝鮮手話),その実態についてはほとんど知られていない.本研究では,筆者が入手した『손말사전』(手話辞典)という北朝鮮手話の辞典に基づき,北朝鮮手話の語彙と韓国手話・日本手話の語彙を比較し,どの程度語彙の類似が観察されるかを研究した.その結果,3手話言語間の類似率は,歴史的な関係がない手話言語間の類似率に比べはるかに高く,韓国手話・北朝鮮手話間の結びつきが日本手話・北朝鮮手話間の結びつきよりも強固なものであることが示唆された.

 

絶滅言語としての「日本手話」に関する一考察:聾唖史学構築との相関を中心に

岡本洋(関東聾史研究会・大塚聾学校同窓会・筑波大学附属聾学校同窓会)

手話教育を守り続けた小西信八が東京聾唖学校長を退いて既に89年が経過した.爾来口話教育の支配により,実体の分裂,消滅,変貌が様々な問題を複雑にした.一昔に比して調査研究は増えつつあるが,手話生と口話生の間では大きな隔絶が存在し,そこに立脚した考究が遍くなされているとは言い難い.「聾唖」と「手話」.その物に対する概念や定義等の学術的検討による問題提起を目的とする.その過程に於いて教育史・社会史の手法等を披瀝し,知見蓄積と対照させつつ今後の調査研究上,明確かつ新たな指標となるような基準点を提供したい.

 

聾唖表象の解体における手話学的考察:逆進化的手法による日本手話複合語〈聾唖〉変遷経路及び分節素間相互作用の類推 

末森明夫

日本手話語彙体系の歴史言語学的考証にあたり,手話複合語〈聾唖〉の焦点化並びに逆進化的手法に基づく言語適応度景観の構築を図り,〈聾唖〉の変遷経路群及び変遷における分節素間相互作用の影響の可視化を試みた.〈唖〉並びに〈聾〉の意味論的優位性を考慮することにより,〈聾唖〉変遷経路群の多岐性並びに多岐化における利き手・非利き手の影響,〈聾〉の変遷における換喩事象を見いだした.

 

CLの定義および分類の検証・整理

中山慎一郎(日本手話研究所)

日本の聾者界においてClassifierの略語,「CL」という用語が普及してきたのはここ10数年のことであるが,身振りと見まがうばかりの表現をCLとする,文であるのにCLとするなどのCLという語の一人歩き,そして,CLの定義およびCLの分類に混乱が見られる.ここでは,CLという用語を使っている主な文献からCLの定義や分類を抽出することによりCLという用語が使われてきた経過を検証すると共に,CLの定義の再確認および分類の整理を試みた.

 

器具CLの表現傾向調査:器具CL表現の聾者・聴者表現の対比調査を通して

山岸千華・小林大輔・坂内常子(城東ゼミ第1期生3グループメンバー)・岩田美佐子(手話通訳者)・加藤裕子(手話通訳者)

城東地区聴覚障害者団体懇談会手話研究所ゼミ(以下城東ゼミ)の第1期生第3グループは,スパラ(1986)の類辞の種類の中から「器具類辞(CL)以下,器具CL」を取り上げ,分析した.以下,第3グループ(以下3G)の調査方法及び分析結果を述べる.

 

日本手話の数詞のバリエーションについて:関東地方と近畿地方の数詞「10」,「100」,「1000」に焦点を当てて

相良啓子(国立民族学博物館)

本研究では,日本手話の数詞「10」,「100」,「1000」にみられる各二種類の変種に焦点を当て,関東地方と近畿地方でどちらの表現がどのように使用されているのか,またその現象にはどのような社会的要因が影響しているのかについて,37 名の手話データを基に社会言語学研究としての一考を述べる.また,それらの表現が,同じくJSL ファミリーに属するとされている(Fischer& Gong, 2011)台湾手話と韓国手話では,どのような分布がみられるのかについても,今後の歴史言語学的研究への手がかりとなるものとして一例を紹介する.

 

日本手話における数詞編入の制約

池田ますみ(香港中文大学・手話言語及びろう者学研究センター)

研究テーマとして「数詞」を取り上げ,昨年は「数詞」のベースを中心とした各国の手話(日本手話,香港手話,アイルランド手話,インドネシア:ジャカルタ手話,スリランカ手話)を分析した.今回は「数詞編入の制約」にスポットをあてて,分析と考察を行う.

 

手話言語の語彙共有現象を記述・分析するにあたって

大杉豊(筑波技術大学)・坊農真弓(国立情報学研究所)・金子真美(筑波技術大学)・岡田智裕(国立情報学研究所)

日本のろう者コミュニティにおいて手話言語の語彙はどのように共有されているのであろうか.本発表では,「日本手話話し言葉コーパス」の語彙データを「共有」の観点で分析する中で,語彙レベルの一貫性を見るだけでなく,内部構造のレベルにおける一貫性にも着目する方法が,手話言語語彙の共有現象の記述・分析に有効であることを見いだしたことを報告する.あわせて,話者が表現に要する時間の測定数値が「共有度」の検証に意味を持つ可能性を指摘する.

 

借用口型「これ」における指示詞派生文末詞的用法

黒田栄光(日本手話教師センター・寺子屋手話)・原千夏(日本手話教師センター・SoftBank手話教室)・末森明夫

日本手話には日本語指示詞「これ」より派生し,指差に共起する借用口型「これ」が散見される.該当事例の語用論ないし意味論的検証を行うと共に,ベトナム語指示詞派生文末詞との対照を行うことにより,指差に共起する借用口型 「これ」は指示詞派生文末詞的機能を強く帯びたものであり,文脈に応じ様相性的機能ないし接続詞的機能を含意する可能性を見出した.この事例は手話言語体系における借用口型の語彙化及び文法化に関する見解(Sandler 2009)に与するものと考えられる.

 

手話口型「ん」の様相性に関する内政に基づいた予備的考察

原千夏(日本手話教師センター・SoftBank手話教室)・黒田栄光(日本手話教師センター・寺子屋手話)・末森明夫

談話における非手指動作の文末詞的用法に際し,目要素及び口要素における含意の分布に関する予備的考察を行った.4種類の目要素及び5種類の口型要素を汲焦ることに得られるそれぞれの表出に関する容認度,情報確認に関する含意,及び話者の判断に関する含意について内省的考察を行うことにより,目要素による含意と口型要素に関する含意の関係を見いだすと共に,相手を見据える目の動きないし口を閉じたまま一文字にするわけでもない口の形に相手に対する敬意が含意される可能性を見いだした.

 

日本手話<含む>の項構造と情報構造

下城史江・西佳子(NPO法人手話教師センター)

日本手話の語彙<含む>(片手、手型B)は,「新しいビルが建った」「道路が新しくできた」など,主に無生物(物)の出現を表すが,人や有生物を対象とする場合など同じ文型でも許容度が異なる場合が観察される.本発表では,この<含む>がどのような場合に使用できるか,どのような表現を追加すると許容度が上がるか,その原因は何かを探り,この語彙の特異性が,(1) <含む>は場所を表す外項と対象を表す内項をとる二項述語である,(2) 内項の出現が新情報であることを保証するような旧情報が必要であるという 2つの仮説から導けることを示す.

 

日本手話における「話題化」

磯部大吾(香港中文大学)(概要なし)

 

日本手話の文末指さしに関する一考察:aboutness topicを含む文における文末指さしを中心に

原大介(豊田工業大学)・小林ゆきの(筑波技術大学)・内堀朝子(日本大学)

本研究では,主語または話題を指すとされてきた日本手話の文末指さしについて,従来観察されてこなかった aboutness topic を含む文を加えて考察した.第一に aboutness topic 文のうち文末指さしが話題を指せるのは,いわゆる所有者上昇構文においてのみであった.第二に,その場合文末指さしは主語を指せず,一方,所有者上昇構文ではないaboutness topic 文では主語を指せた.従って,文末指さしの対象は,主語または話題化された要素とは一般化できず,より詳細な条件が必要であることが分かった.

 

音楽的要素を取り入れた手話ポエムと言語習得との関わり:手話コーナの実戦からNMMについて考える

赤堀仁美(学校法人 明晴学園)

2008 年にバイリンガルろう教育を実践する学校として開校した明晴学園では,幼稚部から中学部まで,日本手話が第一言語となる環境を保証し,経験したことや考えたことなどを自分なりに手話で表現し,相手の話す手話を聞こうとする意欲や態度を育て,手話に対する感覚や手話で表現する力を養うことを目標としている.幼稚部では音楽的な要素を手話表現に取り入れ,日本手話の文法を的確に使って手話ポエムを作ろうとする姿勢がみられるようになってきたので,その実践について報告していきたい.


日本手話学会第39回大会

日程:2013年10月26・27日

場所:鈴鹿医療科学大学・千代崎キャンパス

 

【TISLR 11報告】

稿者は,2013年7月10日から13日の4日間,イギリスのロンドン大学(University College London)で開催されたTISLR 11に参加した.本稿は,その大会の通訳に関し,見たものや感じたことを論述する.

 

【研究発表】

フィリピン手話法とその直面する壁:政治と教育に翻弄されるフィリピン手話(FSL)

森壮也(JETRO アジア経済研究所開発研究センター)

フィリピン手話(FSL)は,フィリピンに居住するろう者の言語である(PDRC and PFD 2004).同国では,2012年下院に始めて手話言語法が提出され,下院で可決された.上院で審議が始まったが,2013年5月の上院中間選の時期に入ってしまったため,残念ながら廃案となってしまった.しかしながら,同法案は,アジア初の手話言語法となる可能性もあった.その法案を巡る様々な関係者の間での議論や手話法のあり方などは,手話の社会言語学という側面はもちろんのこと,日本でも議論されている手話言語法との関係からも非常に興味深いものがある.本報告では,同法の背景にあるフィリピンのろう教育の状況やろう社会における手話使用の状況も踏まえて,フィリピンの状況から得られる示唆について論じる.

 

イタリアのバイリンガリズム(リベンジ編):ろうの卒業生・教員らへのインタビュー調査と日仏伊三カ国比較の試み

小谷眞男(お茶の水女子大学)

イタリアの普通学校における,ろう児と聴児が共に在籍するクラスでの,イタリア手話(LIS)とイタリア語のふたつの教室言語が交錯する相互作用的なバイリンガル統合教育実践例の報告(第36回,第37回大会報告の続き.リベンジ編).報告者は,2012年11月に現地校のひとつを日本人ろう者らと再訪し,幼・小・中のバイリンガル・クラス(通常科目),LISのクラス,およびろう児だけを対象とする「スーパーLIS」クラス等を見学した.そして,この仕組みのもとで学校生活を送ったろうの卒業生5名,及び同学校に勤務する現職のろう教員2名らにインタビュー調査をおこなった.さらに,2013年9月にフランスにおけるバイリンガル教育実践項を参照事例として訪問予定である.以上の調査結果について,授業風景等を交えつつ紹介し,分離/共生の軸と同化/異化の軸を組み合わせた理念型図式に日仏伊三ヶ国におけるそれぞれ異なるろう児教育の転回と現状をプロットし,比較・評価・展望を試みる.

 

手話言語の二次元投影におけるἀπορɛία:日本の絵画及び写真における手話の描写に関する考察

末森明夫・新谷(近畿聾史研究グループ)・高橋和夫(日本聾史学会)

筆者等は日本の中近世より近代初期に渡る非文字史料に見られる手話描写事例の類推的ないし実証的輯録を図り,三次元事象に属する手話言語の二次元投影という表象過程における言語学ないし図像学・表象学的考察を行った.手話言語の二次元投影に伴う言語的要素の欠失及び寓意の表出に象徴される手話と聾唖の文脈的類縁関係の整理及を図った.

 

日本手話の文末の指さしが指し示すものは何か

原大介(豊田工業大学)・黒坂美智代(藤田保健衛生大学)

日本手話の文末に現れる指さしは,当該の文の主語を指し示す代名詞であるという考えが日本手話学の通説となっている.しかし,実際には文末の指さしが主語以外の名詞句を指示するケースが散見される.文の主語以外が指示されるケースがどのようなケースであるかを検討する.

 

日本語—日本手話バイリンガル児のモダリティーと手話のタイプ

平英司(関西学院大学)

本研究は,手話環境で育った聴児K(3歳11か月)の言語仕様を分析したものである.具体的には,Kが音声付き手話から音声を消した際の手話表現の変化を,語順をもとにみていく.結果,音声を消そうとする行為が手話のタイプにも影響することが示唆された.

 

日本手話における動詞連続構文

市田泰弘(国立リハビリテーションセンター/国立民族学博物館)

世界中の多くの言語と同様,日本手話には同市連続構文が存在し,その表す領域は移動事象に限定されない.語彙概念構造による分析に従えば,その基本構造は「活動局面を表す他動詞」+「過程局面と状態・位置局面を表す自動詞」であり,「様態」+「経路」を表す移動の同志連続構文もその基本構造は同じである.また,その観点によれば,身体部位を表す二重同士構文も同志連続構文の一種であるとみなすことができる.

 

「日本手話話し言葉コーパス」の可能性:語彙化代のデータを分析する

岡田智裕(筑波技術大学)・大杉豊(筑波技術大学)・坊農真弓(国立情報学研究所)・菊地浩平(国立情報学研究所)

本年5月より「日本手話話し言葉コーパス」が公開されている.本発表ではこのコーパスを利用した手話語彙データの分析例を紹介し,同コーパスの言語資源としての存在意義を確認するとともに,今後に向けての課題を探ることを目的とする.

 

いわゆる「中間型手話」の中間性の検証:中間型手話使用者の用いるCL手型から見えてくるもの

黒坂美智代(藤田保健衛生大学)・原大介(豊田工業大学)

CL手型のタイプの選択には,媒介手話H,日本手話,一般聴者の手指表現(身振り)における物品への焦点の当て方の違いが反映されており,この違いは媒介手話Hが独自の体系を持つ可能性を示唆している.

 

手話空間における数詞の移動と場面パターン:話者との関係をめぐって

原千夏(NPO法人手話教師センター)

手話空間における数詞の移動には,位置固定のほかに縦,横,斜めへの移動がある.先行研究(原2013)で日本手話第一言語話者の大半が場面に応じて数詞の移動の使い分けがあると報告した.本発表は,これをもとに同場面における複数パターンと話者との関係について分析を行う.

 

日本手話における形態論:数詞

池田ますみ(香港中文大学:APSL)・磯部大吾(香港中文大学:APSL)

日本手話における「数詞」のシステムを,手型の構造や手の向きを基準として記述する.また,その記述を基に,他の手話言語の(スリランカ手話,インドネシア手話,香港手話など)数詞と比較する.


日本手話学会第38回大会

日程:2012年7月7・8日

場所:群馬大学教育学部・荒牧キャンパス

 

【研究発表】

日本手話における語彙の音韻変化

池田ますみ・今井美香・磯部大吾・古川香・Felix Sze(香港中文大学: APSL)

香港中文大学で学んだ手法を用いて,日本手話における歴史的音韻変化の過程を分析した.Frishberg(1975)のアメリカ手話における歴史的変化の分析を援用し,日本手話にもアメリカ手話と同じパターンの音韻的変化が起こったことを主張する.

 

日本手話における RS(Role Shift)を含む文の統語構造:ASL を初めとした他手話との比較の観点から

數見陽子(NPO法人手話教師センター)・森 壮也(アジア経済研究所:JETRO)

RSについては,小薗江ほか(2000)が先行研究としてあるが,NMMと動詞タイプの分類の基本的な枠 組みの提示のみに留まっている.一方,ASL の Lillo-Martin(1995),LSCの Quer(2006)に見られるように 海外では統語構造についての分析と提案が出ている.本報告では,これらの先行研究に倣い,日本手話でRSと共起しうる動詞及び,そうした動詞とRSによって構成される文の統語構造についての分析を行う.

 

日本手話における敬意表現に関する実験的考察

ジョニー・ジョージ(名古屋商科大学)

本論文は日本手話使用者の敬意表現方法に関する実験研究報告である.研究結果は日本手話者が敬意を表現するため非手指動作(nonmanuals)を頻繁に利用する事を示した先行研究を裏付けている(市田2005,岡部ら2005).

 

「日本手話話し言葉コーパス」の構築に向けて

坊農真弓(国立情報学研究所)・大杉豊(筑波技術大学)・菊地浩平(国立情報学研究所)

我々は2011年から「日本手話話し言葉コーパス」の構築に取り組んでいる.本発表では我々のプロジェクトの目指すところ,コーパスのデザイン,具体的な作業工程を紹介する.

いわゆる「中間型手話」の中間性の検証:中間型手話と日本手話の語内の時間構造の違いについて

原大介(豊田工業大学)・黒坂 美智代(藤田保健衛生大学)

媒介手話H(聴者の用いる中間型手話)と日本手話を,手の動き(ストローク)の観点から調査し,それぞれの手話の語内部の時間構造には違いがあることを示す.

 

日本聾教育黎期における指文字及び手真似文字の系譜

末森明夫

聾教育黎期に考案された指文字群及び手真似文字群の対照を行い,群分類由来樹状図及び二進系列・最尤法由来分岐図を描画することにより,指文字群及び手真似文字群の系譜を作成した.一致,類似,及び同源の3種類の分類法の分類群ないし分岐群への影響を検証し、指文字群手真似文字群と大曾根式指文字の関連性及び聾唖教育界と専門職業界の言語媒体接触に関する考察を行った.

 

日本手話における頷きの分類の試み

神庭真理子(東京大学大学院・日本学術振興会)・砂田武志

日本手話において,頷きは接続詞に相当するものであり,その役割は重要である.本研究では,文中に現れる頷きの形式の違いに注目し,それぞれの形式がどのように機能しているのかについて,インタビューを基に分析,考察を行う.

 

【基調講演】

「手話の復権」:手話言語法運動の背景と法的根拠を考える

田門浩


日本手話学会第37回大会

日程:2011年10月15・16日

場所:関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス

 

【研究発表】

サイン・バイリンガリズムの可能性について

植田麻美(東京工科大学) 

ろう児の言語習得のアプローチの1つにサイン・バイリンガリズムがある.これは手話のみで母語の習得を目指すものである.本発表では,サイン・バイリンガリズムのアプローチをとる東京特区指定の明晴学園の例から,その可能性について,学習者である,ろう児の動機づけとの関係から考察を試みる.

 

イタリアのバイリンガリズム:コッサート小学校の調査から

小谷眞男(お茶の水女子大学)

統合教育の理念が支配的なイタリアでは,すべてのろう学校が閉鎖された.その結果,理念とは裏腹に,ろう児が教室のなかでただ一人置いてきぼりにされている,などの批判も聞かれる.この指摘を一概に否定はできないが,逆に統合教育の利点を活かして双方向的なバイリンガル教育に取組んでいる学校も,少数ながらある.例えばイタリア北東部ピエモンテ州コッサート市の市立小学校では,ろう児・聴児統合教育の場で,イタリア語とイタリア手話(LIS)の二つの言語が,ほぼ対等の教室言語として用いられている.その結果,ろう児はもちろん聴児までもがLIS を自由に使いこなすにいたり,子どもたち全員がLIS とイタリア 語を使ってコミュニケートしあうという希有な情景が生まれている.2011 年 3 月に実施した現地調査の結果を録画で紹介しつつ,この実践例の持つ含意について検討する.

 

難聴児の手話学習-小学校難聴学級における日本手話指導の取組み

鳥越隆士(兵庫教育大学)・前川和美(関西学院大学) 

通常の学校に在籍する難聴児に対して,継続して手話指導を行っている。本論文では,特に,難聴児に対する手話指導のあり方について,社会・文化的な視点から検討するものである.具体的には,難聴児たちが初期の手話学習場面で,日本手話という言語に対してどのように振る舞い,また講師である日本手話話者に対してどのように関わっていたのかを明らかにする.これをもとに,今後の難聴児の手話指導のあり方について考えたい.

 

バイモーダル児のモダリティー使用に関するケーススタディー

平英司(関西学院大学) 

本研究は,日本手話-日本語のバイリンガル・バイモーダル環境にある家庭(ろう児を日本手話で養育している聴親家庭=Sign Language Family :SLF)のろう児のきょうだいである聴児による母親へのモダリティー使用(1音声2手指3音声・手指併用)について量的に分析を試みたものである.

 

手話会話分析のための文字化資料作成手法の提案

菊地浩平・砂田武志・坊農真弓(国立情報学研究所) 

会話は複数の話し手の発話が連鎖することで構成される相互行為である.会話分析研究は,会話の中で起こる様々な現象をとらえ,その秩序を明らかにすることを目的としている.この目的を達成するために会話分析研究では,参与者の振る舞いを発話の重複や沈黙等を含め,極めて微細なレベルで書き起こした文字化資料が作成される.本発表では従来の手話記述手法の特性および課題を検討することから,動作レベルでの文字化資料作成を提案する.

 

日本語対応手話擁護論:自然言語としての日本語対応手話

神田和幸(中京大学) 

専門家の間では日本手話以外の手話が存在することは知られている.しかし,実態が解明されることはなく,自然言語でないかのように喧伝され,偏見の対象となっている.かつての日本手話がそうであったように,力のない人々の使用する手話変種に対し,社会言語学的な考察を加え,その歴史と将来の展望について述べる.

 

いわゆる「中間型手話」の中間性の検証~語表出の特徴について

原大介(豊田工業大学)・黒坂美智代(藤田保健衛生大学) 

聴者の使ういわゆる「中間型手話」(以下,媒介手話H)の語表出に焦点を絞り,語表出において媒介手話Hに日本手話と日本語(または日本語対応手話)の文法的特徴の混合が見られるかどうかを検証した.その結果,媒介手話Hの語表出のレベルにおいても両言語の混合はほぼ見られないことが確認された.

 

同源語二進系列および最尤法による手話言語系統樹の作成

末森明夫

語彙統計論に立脚した先行研究論文(2 例)記載資料に基づき,同源語二進系列の作成および最尤法の利用を図ることにより,手話言語を操作的分類単位とする分岐図(系統樹)群を得た(分岐図群 I の操作的分類単位:英国手話系統手話言語群,分岐図群IIの操作的分類単位 :タイ手話方言群およびベトナム手話方言群).同源語二進系列の作成における諸要因(基礎語彙目録における名詞群,基礎語彙目録と無為抽出語彙目録の相違など)を検討し,手話言語系統樹の作成における諸課題の考察を行った.

 

ケニア手話(KSL)文の基本構造

森壮也(日本貿易振興機構アジア経済研究所) ・宮本律子(秋田大学)・ Nickson Kakiri(ケニアろう者協会)

論者たちは,第 36 回大会にてケニア手話(KSL)のプロジェクトの概要と先行研究,また2010年度に実施した現地ワークショップで得られた知見の一部を紹介した(森・宮本・ニクソン,2010).これを承けて,2011年度に実施した現地ワークショップで収集されたKSLデータから,KSLの基本文法について,ASLとは異なる構造がかなり具体的な形で見えて来ており,統語論的な観点からこれを報告する.

 

高校の手話教育におけるナチュラル・アプローチの導入とその改善 

村野光則(お茶の水女子大学附属高校) 

本校では,7年前より高校2年次の「総合的な学習の時間」において「初級手話講座」を開設している.年間授業数は26−7回で1回45分である.本年度の受講者は12名(定員)である.当初は,ろう学校での勤務経験がある村野が講座を担当していたが,昨年度より本学の附属幼稚園の保護者で,ソフトバンクの「ナチュラル・アプローチ手話教授法講座」を修了したろうの女性に年間を通じて指導してもらっている.本報告では,その授業実践をもとに入門期における手話教育のあり方について考察する.


日本手話学会第36回大会

日程:2010年10月30・31日

場所:慶應義塾大学日吉キャンパス

 

【研究発表】

手話言語基礎語彙比較対照資料の可視化:語彙近似値群の群解析

末森明夫

比較対照手話言語学の語彙統計論分野において蓄積された様々な手話言語間の基礎語彙近似値群の群解析を行い,手話言語系統類縁関係の可視化に関する予備考察を行った.すなわち語彙近似値群より言語距離行 列及び樹形図の作成並びに得られた樹形図群の比較を通して,手話言語基礎語彙近似値群の利用における知見及び課題の整理を行った.

 

「中間型手話は日本手話と日本語対応手話の「中間」なのか? (予稿なし)

原 大介・黒坂美智代

 

子どものコーダとろう親のコミュニケーション:手話と日本語のバイモダル・バイリンガリズムに着目して(予稿なし)

澁谷智子

 

ELANを用いた手話教材の開発

南田政浩(手話教師センター)・松岡和美(慶應義塾大学)・矢野羽衣子(日本ろう福音協会)

 

日本手話は危機言語化しているか

岡典栄(一橋大学大学院言語社会研究科博士課程)

ろう児の約90%が聞こえる親から生まれることから,日本手話は母語として自然に継承されにくい言語である.また,書き言葉(文字)がないことや教授言語として聾学校で使われていないこと,教科としての手話科がないことなど,脆弱化しやすい状況にある.危機言語に関するユネスコ特別委員会の報告(2003)を参照しつつ,日本手話の現状を見直す.

 

日本手話のアスペクト:状況/視点/局面アスペクトとその相互作用

市田泰弘(国立障害者リハビリテーションセンター)・赤堀仁美(明晴学園)

日本手話において,状況アスペクト,視点アスペクト,局面アスペクトがどのようにマークされ,各アスペクト間にどのような相互作用がみられるかを論じる.さらにアスペクトをめぐる類似表現を比較することにより,それぞれのマーカーがどのような意味を内包しているかを探る.

 

1950−1960年代の手話データベース構築

大杉豊(筑波技術大学)・神田和幸(中京大学)

 

手話通訳者のスキルサイエンスと対人援助サービスへの応用可能性に関する考察

田中沙織(MID)・中園薫(NTT未来ねっと研究所)

The goal of this paper is to introduce a examination called Skill-Prosody and to demonstrate that it can be an indicator for the other general skills of interpreters. For this purpose, we conducted two experiments: one is to study the relationship between the interpreter’s experiences and the performance score on Skill-Prosody(Experiment-1), and the other is to investigate the specific skill that can be estimated by Skill-Prosody(Experiment-2). Finally we end this paper with the discussion about the possible application for the other interpersonal support skill such as the medical examination skill required to doctors.

 

ろう児の第一言語としての日本手話理解力の評価:日本手話の理解力を評価するために明晴学園で開発した動画による評価方法とその実施

明晴学園では,ろう児の第一言語としての日本手話の理解力を評価するためにパソコンを利用したゲーム感覚の評価法を開発した.問題は全部で50問あり,語彙,CL(名詞及び動詞),人称を表す指差し,NMS(副詞,従属節を導くうなずき),手話語彙につく独特の口型および対話形式で正しいやりとりを選ばせる等の課題が含まれている.

小学3年生から中学1年生までの18人を対象とした評価の結果を報告する.

 

手話語彙の形態論的分析

神田和幸・木村勉

手話辞典搭載語彙約2千語について,形態素結合を分析し,傾向を調べた.手話の複合語は逐次結合と同時結合及び両者の融合があり,鞄型結合もあるため,分類は音声言語より複雑になる.語形成の種類の統計分析し,一部の語について派生分布,意味分析をした.

 

日本手話における口型の予備的研究

松岡和美・南田政浩・矢野羽衣子

 

日本手話とリテラシー:「明晴商店街」の活動から見えたこと

榧陽子

明晴学園は,日本手話と日本語によるバイリンガルろう教育の学校として2008年4月に開校した.第一言語として日本手話の能力を高めることに重点をおき,それによって第二言語として日本語の能力を伸ばすことを目指している.そのようなバイリンガル教育の環境の中で,「明晴商店街」は,2008年12月から1年4ヶ月以上にわたって,明晴学園の小学部廊下で生まれ,郵便局,銀行,商店,警察など,次々と発展・変遷していった,1つの教育的活動である.それは子どもたちの自発的な活動によって作られたものであり,子供達のさまざまなリテラシーが発揮されていた.それについて考察し,報告する.

 

イタリアにおけるバイリンガリズム:研究序説

小谷眞男(お茶の水女子大学)

イタリアのいくつかの学校のろう児・聴児混合クラスでは,聴児たちがサイン言語をマスターし,クラスの中ではサイン言語と音声言語のバイリンガル状態となっている.見学者にはどの子が聴児でどの子がろう児なのか,一見しただけではまったく判別がつかない.今回の報告では,このようなイタリアでのバイリンガル教育実践の試みを紹介し,国際比較の観点からそのインプリケーションについて考察する.

 

日本手話における埋め込み構造の予備的研究

内堀朝子(日本大学)・松岡和美(慶應義塾大学)・南田政浩(日本ろう福音教会)・矢野羽衣子(日本ろう福音教会)

人間言語の本質的特徴には「回帰性」と「階層性」があり,これらは統語的な埋め込み構造で観察されることが知られている.本研究は,日本手話において,直接引用文と統語的埋め込み文とで,手話表現に違いがあることを報告し,この違いにより日本手話において統語的埋め込み構造が存在することが裏付けられると指摘する.この観察は,日本手話が人間言語の一つであるかどうかを考える上で,基本的かつ重要な意味があると言えよう.

 

ケニア手話の言語構造分析序論

森壮也(JETROアジア経済研究所)・宮本律子(秋田大学)・ニクソン・カキリ(ケニアろう協会)

ケニアでは従来,同国で公用語とされているスワヒリ語によるKSL(ケニア手話)記述があったが,語彙が中心であった.90年代にはろう学校での教育言語である英語による記述も始まった.2000年代以降,米国系機関によるKSLテキストも発行され,初歩的な言語構造の分析も出てきた.これら従来の研究での文法記述を現在のKSLの話者との共同作業で見直すと共に,ろう者を主体とした研究チームの育成が図られている.このプロジェクト概要と共に得られた知見の一部を紹介する.


日本手話学会第35回大会

日程:2009年10月31日-11月1日

場所:東京大学(駒場キャンパス)

 

【研究発表】

「統合教育現場における「手話」の実態:難聴学級設置校におけるフィールドワークをもとに

羽田野真帆(筑波大学)(予稿なし)

 

バイリンガル・バイカルチュラル教科書 『ハルミブック』の作成と実践

赤堀仁美(明晴学園)(予稿なし)

 

日本手話動詞の項構造:Argument Structure of JSL Verbs

神田和幸(中京大学国際教養学部)

日本手話動詞の多くは項を含み,その数も語彙範疇により決まっている.項は形態素として実現し,語形成としての形式は音声言語より複雑で,日本語とは異なる言語タイプである.項形態素は人称,数,性により音型変化がある.人称は視線(NMS)と位置で,数は手型で,性も手型で表され,それらに動きの方向が結合することで方向動詞が形成される.

 

手話に対する手話話者・ ろう者の見解

櫻井敏彦(予稿なし)

 

学術的な内容を手話通訳することについて;手話通訳者の視点から

渋谷智子(埼玉県立大学)

本報告では,学会や大学での通訳経験を持つ手話通訳者6人へインタビュー調査から,学術的な通訳する時の難しさはどこにあるのか,個々の通訳者はどのような工夫をしているのかを明らかにし,日本手話学会として改善できる余地があるかどうかを検討する.

 

日本手話 日本語バイリンガル家庭における聴児の言語使用:発話内コードスイッチングを中心に

話者交替規則に基づく日本手話対話のオーバーラップ現象の分析(予稿なし)

斎藤涼子・堀内靖雄・黒岩眞吾(千葉大学)

日本手話対話を分析した結果,話者交替の約75%で発話の重複現象(オーバーラップ)が見られたが,話者交替規則に基づいて分析すると,その重複のほとんどがTRP(移行適格場所)で生じており,話者交替規則に従った一般的な話者交替であることがわかった.さらに話者交替時には両者の視線は一致するが,交替後は後続話者が視線をそらすこともあった.また,疑問文による話者交替後は後続話者が視線をそらしてから発話する現象も見られた.

 

関西学院大学における「日本手話」授業の現状と課題

前川和美,松尾美幸,平英司(関西学院大学人間福祉学部非常勤講師)

関西学院大学人間福祉学部では,2008年度より「日本手話」を言目として導入し授業をすすめている.大学において日本手話を言目として教授する取り組みは,日本において的なものであり,カリキュラムや教材の活用,テストの方法など試行錯誤の現状である.本論は,本大学の言目としての「日本手話」教授の現状と課題を報告するものであり,今後の言語としての日本手話教授をフロアとともに考えていきたい.

 

日本手話における等位構造

小谷克則(関西外国語大学)

本稿は等位接続用法に対する統語分析を提案する.等位接続用法において(非)顕在的接続詞が用いられ,等位構造に特特有の制約が課せられる.したがって,等位接続用法は接続詞を主要部とする等位構造を形成すると考えられる.

 

日本手話におけるmirativeとしての「発見」のNMS

市田泰弘・小薗江聡(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

mirativeとは「予期しない新情報であることを示す文法的要素」である.日本手話には,特定の頭の動きと目のふるまいによって表される「発見のNMS」と呼ぶべき形式があり,これがmirativeとして分析可能であることを示す.

 

国際手話の研究:語形変化の比較

中山慎一郎(外国手話研究部)

 

日本手話における時間的近接性を表す構文の意味拡張

小薗江聡・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

日本手話には,二つの動詞の連続において,最初の動詞の表出の途中や終了直後に,後続の動詞を時間をおかずにすばやく表出するような形式が存在する.この形式は,二つの出来事の間の時間的金背悦性を図像的に反映した構文である.この構文は,限定性,偶然性,意外性といった意味に拡張される.

 

【基調講演】

境界線とコラボレーション

米内山明宏(手話文化村代表)

 

次世代の映像通信技術

黒田知宏(京都大学)

 

必要なときに,必要な場所で,必要な支援を!:遠隔情報保障システムの開発

内藤一郎(筑波技術大学)

 

【シンポジウム】

手話研究のあり方を考える

パネリスト

田中紗織(MID)

桜井強(日本聾史学会)

小薗江聡(国立障害者リハビリテーションセンター学院)


日本手話学会第34回大会

日程:2008年9月14・15日

場所:神戸研究学園都市大学交流推進協議会・大学共同利用施設 Unity

 

【研究発表】

日本手話の表現速度変化に伴う手の速度と動きの変化の分析

安ヶ平雄太・堀内靖雄・西田昌史・黒岩箕吾(千葉大学)

日本手話は強調表現や情動表現により単語の動作が変化することが示唆されている(1,2)が,手話の発話速度を変化させた場合にどのような現象が起こるのかについては,文献(3)でビデオ映像に基づいて,単語や静止の時間長に関する分析が行われているだけであり,手動作変化に注目した研究はまだ行われていない.

そこで本研究では,手話発話速度の違う手話文の腕の動作をモーションキャプチャシステムにより,収録•分析し,手話発話速度の変化と腕の動作変化との関係を明らかにすることを目的とする.

 

弁別的特徴を用いた指文字認識性能向上の試み

田畑 慶人(京都医療科学大学 医療科学部).黒田 知宏(大阪大学 基礎工学研究科)

発表者らは,かねてより指の形状を認識する機能を有するデータグローブ装置,Stringloveの開発を行っている.本研究では,昨年度本会にて原らによって報告された弁別的特徴の考え方を導入して,日本手話指文字を対象にStringloveの手形認識性能の向上を試みた.評価の結果大幅な性能向上が実現されたので報告する.

 

ミャンマー手話の分析のための予備的考察

森壮也(日本貿易振興機構アジア経済研究所 新領域研究センター主任研究員)

 

「似ている手話」とはどのように似ているのか

佐々木大介(北星学園大学/テキサス大学オースチン校大学院)

 

日本の聾者人口の推計

神田和幸(中京大学国際教養学部)・木村勉(豊田工業高等専門学校)・原大介(愛知医科大学看護学部)

 

日本手話の接続詞とうなずきの関係の分析

堀内靖雄・斉藤 涼子・亀崎 紘子・西田昌史・黒岩慎吾(千葉大学)・市川 窯(早稲田大学)

本研究では日本手話対話における後続うなずきと接続詞の分析を行なった.結果として,日本手話の話し手の後続うなずきは,うなずき単独で「話題化」「順接」「条件」「 ロールシフトを抜ける」という接続詞と類似した機能を果たしていることが示唆された.接続詞とうなずきの共起関係を分析したところ,前後を接続する接続詞が手指で単語として表現された場合,その単語と同期してうなずきが生じやすいが,否定的な単語に関してはうなずきが共起しないことが示された.

 

日本手話の手型に関する一考察:非CL 起源の手型をめぐって

小薗江聡・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院手話通訳学科)


日本手話学会第33回大会

日程:2007年9月15・16日

場所:日本社会事業大学

 

【研究発表】

音素配列論再考日本手話タイプIIIについて一

原大介(愛知医科大学看護学部)・木村勉(豊田工業高等専門学校情報工学科)・神田和幸(中京大学教養部)

日本手話のタイプIII(両手手型が異なるもの)について,手話が表出される位置と動きをそれぞれニュートラルスペースおよび下方直線運動に固定し,両手手型の組み合わせと両手の接触の有無だけを変えた約2300個の手話サンプルを作成•録画し,日本手話母語話者の評価(5段階のリカートスケール)を受けた.その結果にもとづき,両手手型の組み合わせ等を含めて語の適格性について考察する方法を示す.

 

JSLの移動表現について

今里典子(神戸市立工業高等専門学校)

「移動事象」を表現する場合,Talmy理論では,日本手話はどのような類型パターンを取るのかを分析し,理論の妥当性について考察することを目的とする.

 

日本手話におけるNMSの機能

神田和幸(中京大学教養部)・原大介(愛知医科大学看護学部)・木村勉(豊田工業高等専門学校情報工学科)

日本手話研究においては従来,Sの文法機能が重視されてきた.これはアメリカ手話研究の影響であり,直接的にはLiddellの文法論である.本論は日本手話文法の多くは形態論で実現されているという立場で,Sのジェスチャー機能に着目し,手話母語話者がSの重要性を主として感情表現に求める理由を説明する.

 

台湾手話および韓国手話の語彙比較研究

佐々木大介(北星学園大学/テキサス大学オースチン校大学院)

 

韓国手話に見られるいくつかの副詞的非手指動作について

岩井智彦(東京大学COE「心とことば」研究員)

 

マダガスカル手話の語順

箕浦信勝(東京外国語大学外国語学部)

 

手話三者会話における話者交替についての準備的考察

坊農真弓(日本特別研究員PD/京都大学)・山中照章

 

コーダの感じる日本語の苦手意識,手話の苦手意識

澁谷智子(日本学術振輿会)

 

手話談話における空間と視点:手話研究とジェスチャー研究の接点

坊農真弓(日本学特別研究員PD/京都大学)・高梨克也(京都大学学術情報メディアセンター)

 

日本手話におけるポーズ直前のうなずきの分析

堀内靖雄・亀崎紘子・西田昌史・市川熹(千葉大学)

対話型自然言語である日本語音声と日本手話の対話におけるうなずきを比較分析した結果,発話末(ポーズ直前)のうなずきに関して,両言語間で異なる傾向が見られたため,日本手話の発話末のうなずきについて詳細に分析した結果,最後の単語に同期するうなずきと最後の単語に後続するうなずきの二種類のうなずきが観察された.それらのうなずきについて,手話熟達者に聞き取り調査を行なった結果,後続うなずきは単語と共起することなく単独で出現し,接続詞等と同等の機能を有することが示唆された.

 

日本語手話辞典の自然言語処理による分析

黒田知宏(大阪大学大学院基礎工学研究科)・岡本和也(京都大学大学院情報学研究科)・竹村匡正(京都大学大学院情報学研究科/京都大学医学部附属病院医療情報部)・大星直樹(近畿大学理工学部)・黒田嘉宏(大阪大学大学院基礎工学研究科)・大城理(大阪大学大学院基礎工学研究科)

日本語手話辞典は,日本手話の学習や研究の重要なリソースとして広く用いられている.本研究では,手話アニメーションの効率的処理を目的に,日本手話辞典の手話イラスト説明文を計算機上に取り込み,簡単な自然言語処理を試みた.本報告では,分析によって明らかになった同辞典の問題について報告する.

 

「日本手話・日本語電子辞書」の試作と評価ー音素等のグループ化によるあいまい検索方法の提案一

木村勉(豊田工業高等専門学校情報工学科)・原大介(愛知医科大学看護学部)・神田和幸(中京大学教養部)

筆者らは手話表現された手話単語から,それに対応する日本語の意味を調べることができる「日本手話・日本語電子辞書」の開発を行っている.この辞書システムは,データベースにMicrosoft社のEXCEL,GUIは同社のOfficeシリーズに付属しているVisual Basic Applicationを用いて開発した国しかしこのシステムでは,手話を調べるための検索キーが細かく分類されており,初心者には使いにくいGUIであったそこで本研究では,この問題点を解決するために検索キーの分類方法や選択方法を改良し,初心者でも直感的に検索できるような方法を提案する.

 

【基調講演】

対話の言葉としての手話と音声

市川熹(千葉大学 グランドフェロー・障害学生修学サポート企画室アドバイザ)


 日本手話学会第32回大会

日程:2006年6月25日

場所:国立身体障害者リハビリテーションセンター学院

 

【研究発表】

インターネットによる可変速手話視聴システム

磯野春雄・滝口雄介・勝又謙・中間正人(日本工業大学工学部情報工学科)

聴覚障害者を対象に手話ニュース映像の再生速度と読み取りやすさの評価実験をおこなった。その結果,読み取りやすい再生速度は手話の習熟度や経験年数,手話映像のコンテンツに依存することが分かった.そこで手話映像の再生速度を5段階に可変速再生Deきるシステムをインターネット上に構築し,アンケート調査したところ便利で役に立つとの回答が得られた.また,手話映像の臨場感を高めるために立体手話映像を制作し,同様にインターネット上で立体手話映像を5段階に可変速再生できるようにした.

 

コンピュータを用いた分節学習による手話学習の提案

 田中紗織(神戸大学大学院自然科学研究科)・松坂要佐(早稲田大学)・上原邦昭(神戸大学大学院自然科学研究科)

本稿では,聴者にとってより難しい手話である,日本手話の読み取り学習を支援するための効果的な学習方法を提案する具体的に,ろう学校教員や手話サークル等に属する日本手話初学者のためのオンライン教材として,日本手話母語話者の会話を読み取る学習機能をそなえたCAS(Computer Assisted Sign Language)の開発を目指し,提案学習手法に対する学習者の成績を既存手法と比較する実験を行った.

 

時間構造を考慮した手話アニメーションの検討

堀内靖雄・西田昌史・市川窯(千葉大学)

手話アニメーションは実際の手話と比べて動きが不自然であるため,読み取りづらいという問題がある.その原因の一つとして,手話単語の時間構造を考慮していないことが挙げられる.そこで本研究では手話の時間構造に影響を与えていると考えられる要因を検討し,重回帰分析を行なうことにより,単語時間長の予測モデルを作成した.そのモデルでは,手の移動距離や運動の種類,係り受けといった要因が時間長に影響を与えていることが示唆された.本研究ではこのモデルを手話アニメーションヘ実装し,モデルの妥当性を検証するための評価実験を行った.従来の手話アニメーションと提案モデルを導入した手話アニメーションのどちらが読み取りやすいかを手話の熟練者である13名の聴覚障害者に評価していただいた.実験の結果,本研究で提案する手話アニメーションが従来の手話アニメーションよりも良い評価を受け,提案モデルの有効性を確認することができた.

 

手話母語話者のノンバーバル・コミュニケーション研究:相槌の特徴

砂田武志(世田谷福祉専門学校 専任講師)・田中文(世田谷福祉専門学校 手話通訳専攻学科)

 

日本手話におけるメトニミー

佐伯敦也(東京大学大学院総合文化研究科)

 

手話の空間的表現における学習者のエラー分析 :「動詞の一致」 に着目して

鎌田麻祐子・松崎丈・菅井裕行(宮城教育大学)

日本手話(以下,手話)には,日本語の助詞にあたる機能は,空間的表現や非手指動作によって果たされると考えられる.空間的表現は,音声言語手話を学習する聴者が習得する上で,必ずと言っていいほど「つまづき」を感じる部分ではないかと思われる.そこで本研究では,空間的表現の中の「動詞の一致」に着目して,手話学習者(以下,学習者)が「動詞の一致」を用いる手話分を産出するときにどのようなエラーが生じるのかを分析し,「動詞の一致」の効果的な習得方法を検討することを目的とする.


日本手話学会第31回大会

日程:2005年7月16・17日

場所:千葉大学・けやき会館大ホール

 

【研究発表】

手話はCL言語か?

今里典子(神戸市立工業高等専門学校・神戸大学大学院)

音声言語の類別詞研究のコンテクストに日本手話を位置づけ,日本手話も類別詞(classifier)言語に分類されるべきかどうかを判断するための5つのポイントを紹介する.

 

形式としての運動とアスペクト

佐伯敦也(東京大学大学院)

 

「新しい手話」に対するろう者と手話学習者による容認度判定の違いについて

原大介(愛知医科大学看護学部)・前田吉則(愛知医科大学情報処理センター)

ろう者,Coda,聴者(通訳者および手話学習者)の各グループに対して,日本ろうあ連盟発行の「新しい手話Ⅰ」に掲載されている手話単語を掲示し,1から5までの5段階で容認度判定を実施した.ろう者と通訳者,ろう者と手話学習者による容認ど判定の結果には,統計的に有意な差が認められた.ここでは,ろう者と手話学習者(日本語対応手話学習経験なし)の2者間の容認度判定結果に論点を絞りその詳細およびχ2乗検定結果を詳しく論じる.

 

日本手話における頭の位置の言語的地位

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

手話詩におけるリズム:俳句を例に

金子倫子(ブリストル大学)

 

手話単語の時間長に関する検討

大高崇・西田昌史・堀内靖雄・市川熹(千葉大学)

手話における発話意図の理解には時間構造が重要な役割を担っていると考えられている.そこで,手話の時間構造を解明し,それを手話合成などの光学技術へ応用することが望まれているが,従来この分野に関する研究はあまり行われていない.そこで本研究では,手話文の構成要素である単語に着目し,単語時間超の分析から手話の時間構造に関する詳細な検討を行った.分析の結果,単語の時間長は手の移動量や運動の種類に影響を受けることが示唆された.また,移動量や運動の種類,単語の係り受け,文のキーワードを説明変数として重回帰分析を行なった結果,単語時間長がこれらの要因から予測できる可能性が示された.

 

会話研究のための話順交替モデルの提案

菊地浩平(千葉大学)

日本国内での手話会話を対象とした研究は,鳥越・小川(1997)による分析以降,徐々に増えつつあるが(寺内ら:2002,2002,2003),研究はまだまだ少ない.本研究ではろう者館で行われた会話データの観察から鳥越らが提示した発話交替モデルを発展させ,会話を研究対象として扱うための話順交替モデルを提案する.

 

自然手話対話における話者交替現象に関する考察

堀内靖雄・山崎志織・時田佳子・西田昌史・市川熹(千葉大学)

日本手話は音声と同様に実時間でコミュニケーションを行える対話型自然言語である.本研究では自然手話対話における話者交替現象の分析を目的とし,(1)自然手話対話の収録,(2)手話におけるポーズの概念を導入し,ポーズにより分割された発話単位の提案,(3)話者交替に関する分析を行った.結果として,手話対話の話者交替においても音声と同様の傾向が見られ,対話型自然言語としての共通性が示されると同時に,音声には見られない手話特有の現象もいくつか観察することが出来た.

 

情報処理から見た手話とその期待される役割

伊藤昇(a member of yokohama JSL&ASL societies)

As representatives of information processing media, a sign language, a verval language and a computer are selected, and compared with each other. In its result, the facile access to the sign language is emphasized and the medium is recommended as a common language of human beings for survival on emergencies such as sickness, traffic accidents, robberies, a loss of important papaers, and so on.

 

事象関連電位N400による日本手話の文脈理解分析:呈示例文の収集

宮本一郎(沖電気)・田中久弥(工学院大学)・長嶋祐二(工学院大学)・竹内晃一(沖電気)

 

テレビ電話を利用した手話通話

中園薫(NTT,千葉大学)・長嶋祐二(工学院大学)・市川熹(千葉大学)

携帯電話などのテレビ電話を利用した手話通話が利用可能となってきた.筆者らは,各種の品質条件で作成した手話画像をもちいた評価実験を実施し,手話通話のための品質の基準について検討した.その結果,手話の可読性を高めるためには,フレームレートの高さが最も重要であり,次Nに画像の符号化サイズが重要であることがわかった.また,各種の画面サイズで表示させた手話画像の評価実験の結果,画面サイズの違いは手話の可読性に影響がないことが示された.さらに,手話画像の特徴を生かした,手話画像用符号化方法を考案し,その有効性を確認した.

 

「国際手話の研究」:非手指動作の認知度の比較

中山慎一郎・宮本一郎・加藤三保子・亀井伸孝(日本手話研究所外国手話研究部)

 

異文化間におけるバーバルコミュニケーションの研究

砂田武志(世田谷福祉専門学校)

 

フィリピンのろう教育史とフィリピン手話

森壮也(アジア経済研究所)

フィリピンの言語的特殊性や開発途上国としての条件は,そこのろう教育の歴史や手話の形成に深く影響を及ぼしている.フィリピンにおけるろう教育史を概観することから,なぜフィリピンで用いられているのがASLであるというような状況が生まれたのかがおおよそ理解できる.その原因としては,フィリピン最大のろう学校,フォリピンろう学校(PSD)の由来,またフィリピン全土で展開されたPeace Corp.によるナイーブなASLしよう,アメリカ帰国者がフィリピンろう社会のリーダーになったことが挙げられる.しかし,新たに発足したPFDのリーダーが日本で研修を受け,ASL以外の手話に接したこと,また国内でフィリピン手話の第二世代の研究者が出現し,ろう社会と共に活動を開始したという状況により,現在,自分たちの手話を(姉妹言語ではあるけれども)ASLとはまた独立の言語としてFilipino Sign Languageとして,改めて認識しなおす流れが主流となってきている.

 

日本手話・日本語対応手話・日本語 言語接触による言語転移

ハロフスキー・W・J(名古屋学院大学)

 

日本手話および台湾手話の語彙比較研究:手形パラメターの違いに注目した予備的研究

佐々木大介(北星学園大学文学部英文学科)


日本手話学会第30回大会

日程:2004年6月5・6日

場所:中京大学・八事学舎

 

【研究発表】

手話の音素をキーワードとした手話・日本語辞書システムの試作

尾崎保紀(豊田工業高等専門学校 情報科学専攻)・木村勉(豊田工業高等専門学校 情報工学科)・原大介(3愛知医科大学 看護学部)・神田和幸(中京大学 教蓑部)

本研究では,手話の音素をキーワードとした手話・日本語辞書システムの試作を行ったまず,手話単語を音素に分類し,階層データモデルでデータベースを設計した.この設計したデータベースを基に,ユーザが直感的に手話の動きを入力することで,手話の意味を検索することができる手話・日本語辞書システムを試作した.

 

手話単語の時間構造に関する一考察

大高崇・西田昌史・堀内靖雄・市川熹(千葉大学大学院自然科学研究科)

手話においては,文の構造や強調などによって手話を表現する時間長が変化するという特徴があり,この点が手話の読み取りを容易にする一つの要因になっていると考えられている.こうした手話の時間的構造のメカニズムについて検討するため,先行研究ではメトロノームを用いて手話の時間構造の基準となる単位を求めようという試みがなされた.分析の結果から,手話の時間構造の単位(時間構造単位)は単語よりも細かい単位であるということが推察されたが,本研究では,この点について更に詳細な検討を行った.その結果,手話においては単語の種類によって時間構造に差異が見られ,これらは動作転換点の特徴によってある程度分類が可能であるという点が示唆された.

 

手形記号出力可能な手袋型計測装置の開発

田畑慶人(京都医療技術短期大学)・黒田知宏(京都大学医学部附属病院)・後藤忠敏(株式会社アミテック)

本稿では新しい手袋型計測装置を提案する.近年、様々な分野で動作計測装置は利用され,その中で、手袋型入力装置は重要な位置を占めている手話の中で,手は複雑な動きをする.この手の動作計測するためには,従来の手袋型計測装置では難しく,特に指同士の接触などの情報を計測することは困難である。本研究では、指の屈曲と指同士の接触情報を同時に計測でき且つ手形記号を出力できる手袋型計測装置を開発した.

 

日本手話における韻律要素の文法化について「遅さ」と「静止挿入」

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

日本手話における韻律要素である「遅さ」と「静止挿人」が、図像性をもつ領域(CL)ではどのような意味をもち、それが、図像性をもたない領域(フローズン)にどのように引き継がれ、文法化しているかを明らかにする。

 

日本手話と日本語対応手話:手話の変種と社会的認識の差異

神田和幸(中京大学教養部)

社会言語学から見た手話の変種と、日本における手話の歴史、また手話に対する社会的認識の差異について考察学問的事実と社会認識の差について検証した.

 

アイコン性と自然言語:日本手話の「Classifier」の場合

ハロフスキー·W·J(W.J.Herlofsky)(名古屋学院大学外国語学部)

日本手話に於けるclassier構造に見られる類像的(iconic)な手の形の性質を記述・分析し、他の自然言語の類似形式と比較する。

 

日本手話における複数性の表示としての3回の反復

岡 典栄・水野 里香

日本手話において同じ表現が複数回表出されるものの中で,特に3回で現れているものに着目した.CLにおいては,1回の表出では「1回性(単数)」が,2回の反復では「2回性(複数)」が強く示唆されるために,複数性の表示として3回の反復が用いられる反復運動の起こる位置には,「移動」「固定」「交互」がある複数性には,存在の複数性と動作の複数性があり,それらは反復運動の起こる位置を引き継いで,文法化,語彙化,およびその組み合わせ,という形でフローズンに現れる.また,様態を表す局所運動を移動させることによって,様態の広がりが表される.

 

wh疑問文の類型論と日本手話

箕浦信勝(東京外国語大学外国語学部)

日本手話のwh疑問文において、疑問詞は文末に置かれる。このことが言語類型論においてどんな意味を持つのかを吟味する。

 

日本手話における語彙的アスペクチュアリティー「過程性」からみた品詞一

佐伯敦也(東京大学大学院総合文化研究科)

語彙的アスペクチュアリティーの観点から品詞について考察した。時間的展開性があることを示す「過程性」を動詞らしさの特徴とし、語ごとにその有無を調査した。すると形容詞的語彙、名詞的語彙には「過程性」がなく、動詞的語彙には「過程性」があることが確認できた。

 

聾中3生と聾学生の「語」の認知処理様式の比較

田中光子

聴者の言語認知(ひらがな無意味語の「読み」)について心理学的実験を行った(田中・川端・多羅間,2003).対象として小3生から中3生の7クラスの児童生徒と大学生を比較した.分析の結果,中1生時には既に成人大学生と等質の認知処理をすることが明らかになった.では聾者においても同じことが言えるのだろうか.同じ課題を用いて,聾学生と聾中3生を対象に検討した.

 

手話アニメーション用Java3D版Mpeg-4Face&BodyAnimationPlayerの構築

黒田知宏(京都大学医学部附属病院)・田畑慶人(京都医療技術短期大学)

手話アニメーション環境は、手話アプリケーション開発に必須の環境である。本研究では、ISOによる標準人体身振り通信規格であるMpeg·4Face&BodyAnimationに準拠した手話通信・アニメーション環境構築ライブラリを、プラットフォームフリーなソフトウエア開発環境であるJava3Dを用いて構築した。本ライブラリを適用した手話アニメーションプレーヤーを構築し、通常のPC環境下で十分な描画速度が得られることを確認した

 

【パネル討論会】

日本手話学会の歴史と展望

パネラー:田上隆司・神田和幸・森壮也

 

【ミニ講座】

ろう児の文法獲得

武居渡(金沢大学 教育学部)

 

【記念講演会】

聴覚障害児教育と手話:言語獲得・言語資本・障害認識

上農正剛(九州保健福祉大学社会福祉学部東洋介護福祉学科)


日本手話学会第29回大会

日程:2003年10月18・19日

場所:東京大学先端科学技術研究センター

 

【研究発表】

日本手話における語彙的アスペクチュアリティー:「過程性」と「継統性」をめぐって

佐伯敦也(東京外国語大学外国語学部)

本手話の品詞分類について80年代以前は7〜9品詞を想定していた.しかし,箕浦(1998,2002,forthcoming)のように2品詞(実詞,虚詞)とする考えがある.形態論的基準で分類できないこと同じ語形が主語位置にも述語位置にも現れうることを踏まえると箕浦の主張は正しい.しかし一方で,日本語口型を伴わない傾向がある,屈折をするなど,いわゆる「動詞」に関する経験的事実がある.また,音声日本語話者による日本手話学習上,「名詞」「動詞」という区分は手立てとして有効であろう.そこで本発表では「動詞」を取り上げ,語彙的アスペクチュアリティーの観点から動詞らしさについて考察する.

 

サインライト

萩原友美(無所属)・桑原康恵(日本ろう福音協会)

 

日本手話における語彙の強調変化の音韻論的分析:PhonologicalandMorphophonemicanalysisofFeaturesoflntcnsivcForminJSL

森壮也(日本貿易振興機構アジア経済研究所,財団法人全日本ろうあ連盟日本手話研究所手話構造研究部)

日本手の話話の強調変化については,これまで体系的な研究はなされたことがない.実際,多くの手話指導の現場でネイティブではない講師による指導では,誤った強調変化が教えられていることが多い.こうした状況について改めて注意を喚起すると共に,実際にはどのような強調形が存在するのか,またこれらの強調変化の音韻論的(または形態音秦論的)含意がどのようなところにあるのかを考察した.強調変化はかなりの程度,非手指動作のみによって表現される場合が多く,手指動作による表現は非手指動作の認知にハンディを持つ者聴のための「冗談手話」として存在することも明らかになった(過剰般化エラー).また手指動作については,正しいものは,手話の「大きさ」の変化によるものと「速さ」の変化によるものがメインで,そのほか,数は少ないが特徴的なものとして音素レベルDeのセグメント付加によるものが発見された.これらの区別が発生する理由については,Prosodic Modelが示唆を与えているが,未だ十分な説明が得られているとは言えず,今後のさらなる各手話話彙のデータの整理などが必要である.

 

2モード並列処理コード混交としての日本語対応手話

箕浦信勝(東京外国語大学外国語学部)

(日本)手話と,日本語の混成言語は,日本語対応手話,手指日本語,シムコム(SiCom,simultaneouscommunication)など様々な名称で呼ばれている。ここではひとまず,ろう者の間で使われることの多い,日本語対応手話という名称で呼ぶことにする。日本語対応手話は,統語論をはじめとした文法と語彙の選択に日本語からの影響を受け,一方表出媒体として,日本語として聞き取りうる音声を表出し,あるいは音声を伴わずに日本語口形を伴い,日本手話単語の手指動作を用いて表出される。日本語対応手話は従来,安易にピジン言語とみなれることがあった。本稿では日本語対応手話をピジン言語と呼ぶことに疑問を投げかけ,特殊なコード混交であるこという解釈を提案したい。

 

日本手話における引用の文法化

木村 晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター)・小薗江聡(東京家政大学)・市田 泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

日本手話には, 引用表現を, その本来の目的である会話や独り言, 思考内容などの再現のためでなく,特定の文法形式の一部として用いる構文がある.このような構文においては,引用表現は文法化している.引用の文法化に関する先行研究としては, 使役構文について記述したものがある(小菌江・木村・市田 2001;市田 2001).本論では,日本手話における引用の文法化について,より包括的な記述を試みる.

 

日本手話の音韻論における「はり」と「ゆるみ」の区別(予稿なし)

市田泰弘(国立身体障害者リハ ビ リ テーションセンター学院)

 

関係性の中で作られるアイデンティティ:コーダを通して考える「Deafness」と「deafness」

澁谷智子(東京大学大学院)

 

古日本手話を探す : 日本手話,台湾手語と(ハングル文字)の語彙分析

茂流岸マイク(Michael W. Morgan)(神戸市立外国語大学)

 

中年層の手話者,非手話者の「読み(語)」の認知処理様式は同じか?:聾者,聴者,聴手話学習者,聴手話通訳

田中光子

 

日本手話における空間の文法化

小菌江聡(東京家政大学)・木村晴美.市田 泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)


日本手話学会第28回大会

日程:2002年6月15・16日

場所:日本大学文理学部キャンパス

 

【研究発表】

植民地統治下朝鮮と日本手話

岩井智彦(東京大学大学院)

 

東アジアにおける手話の語彙の比較:日本手話と韓国手話の比較を中心に

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)

 

中国手話の漢字借用Ⅱ

宮本一郎(全日本ろうあ連盟 日本手話研究所外国手話研究部)

 

アメリカ手話における語彙サンドイッチ構文

松岡和美(慶應義塾大学経済学部)

 

手話による敬意表現に関する一考察

橋本陽子(上越教育大学大学院)・石井良介(群馬県立吾妻高等学校)・星名信昭(上越教育大学)

敬語は人間関係をスムーズにするために大切な交信手段の一つがある.本研究は.手話の敬語について語彙的に調べるとともに成人聴覚障害者を対象として手話による敬意表現の実態を調査した.その結果手話に敬語の語彙数が少ないことがわかった.特に尊敬語と謙譲語が少なく,接頭語の「お~」や「ご~」は認められなかった.しかし非手指動作を有効に用いることによって敬意を表す上が重要な役割を果たしていることがわかった.

 

言語行動「すみませんが」:社会言語学的考察から

平山千賀子・宮本一郎(D-PRO手話研究センター)

 

手話通訳に対する期待の内容に関する研究

白澤麻弓(筑波大学大学院心身障害学研究科・日本学術振興会特別研究員)

手話通訳の評価のためには,通訳の受け手となる聴覚障害者からの評価が重要であることは言うまでもない.しかし,現在のところ聴覚障害者が手話通訳に対して抱いている期待の内容については,個人間で異なることのみが強調されており,実際に抱かれている期待の全体的傾向や,個人間の差異の実態については明らかになっていない.そこで本研究では,インタビューおよび質問紙調査によって,聴覚障害者が手話通訳に対して抱いている期待の内容について広く意見を求め,その傾向を把握するとともに,聴覚障害者の背景の違いによる期待内容の差について検討することを目的とする.

 

同定文・存在文・所有文の類型論

箕浦信勝(東京外国語大学 外国語学部)

 

Classifierと文法的リズムの考察

棚田茂(立正大学社会福祉学部・D-PRO)

 

CL型文の構造:Some findings of JSL features from a viewpoint of CL predicate

森壮也(日本貿易振興会アジア経済研究所・全日本ろうあ連盟日本手話研究所外国手話構造研究部・世田谷副詞専門学校手話通訳士養成学科)

日本手話の形態素の語形式を見てみると固定語彙と言われるいわゆる手括栢彙と言われるものとそれ以外のものに大別することができる。このそれ以外のものは、CLとジェスチャーにさらに分けることができると思われる。CLはジェスチャーと異なり、あるルールを持った形式である。このCLによって捐成される文は手話の語順の基本的な基底をなしていると考えられる。いわゆる修飾語後償の文が自然だと言われるのは、そうした理由からであろう。固定語彙による文の分析のみでなく、こうしたCL型の文の構造のさらなる分析が今後必要である.

 

日本手話におけえる視線の文法化:目の開き方と眉の動きについて

小薗江聡(東京家政大学非常勤)・木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

トラピスト修道院の手話:『聾啞界』記事にみるトラピスト手話の歴史的考察

野呂一(東京都中野区役所)・上野益雄

戦前,ろう関係者に広く読まれていた雑誌に『聾唖界』がある.これは,大正3(1914)年1月に東京聾唖学校内にあった聾唖倶楽部が創刊したもので,翌年,日本聾唖協会が発足するとともに同会に引き継がれた.11号から編集は,大阪市立聾唖学校の教師であり,戦後,全日本堕唖連盟の初代理事長をつとめた藤本敏文があたった.昭和17(1942)年3月,政府の雑誌統合政策により,『聾唖教育』,『口話式聾教育』,『聾口話教育』とともに『聾唖の光』に統合され,昭和19(1944)年8月終刊となった.この『聾唖界』76号に,「トラピストに於て使用の手真似辞典」(以下,「トラヒスト手真似」)という興味深い記事が掲載されている.この記事をもとに今回は,トラピスト修道院で使われていた手話とはどういうものか,これがわが国にどのように影響を与えたかに焦点をあてることを目的とする.


日本手話学会第27回大会

日程:2001年6月23・24日

場所:金沢大学

 

【研究発表】

指文字の変遷と地域的特性

野呂一(D PRO・東京都中野区役所)

 

アメリカ手話の「サンドイッチ構文」の分析:二つのタイプの動詞上昇

松岡和美(慶應義塾大学経済学部)

 

日本手話音節の適格性条件に関する研究

原大介(愛知医科大学)・宮原麻衣子(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)・芳仲愛子(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話の非手指動作の基本タイプについて

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話の使役構文

小薗江聡(東京家政大学)・木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話の非手指信号の統計的分析:sIGNDEX V.2 解析作業中間報告

神田和幸(中京大学 教養部)・市川熹(千葉大学大学院 自然科学研究科)・長嶋祐二(工学院大学 工学部)・加藤雄二(手話技能検定協会)・寺内美奈(職業能力開発総合大学校)・原大介(愛知医科大学 看護学部)・佐藤昌延(東京工科大学大学院 工学研究科)・渡邊勇夫(千葉大学大学院 自然科学研究科)

 

手話の分析支援ツールの開発

渡邊勇夫(千葉大学大学院自然科学研究科)・堀内靖雄(千葉大学大学院自然科学研究科)・市川熹(千葉大学大学院自然科学研究科)

 

手話技能検定一その基本理念と実施方法一

神田和幸(中京大学)・加藤雄士(手話技能検定協会)・加藤勝由(中京大学オープンカレッジ)・川岸忍(堺市役所)

手話も言語であるから、その技能を検定することができるはずである。英語には、実用英語検定、EEICなどがあり、それぞれの分野で社会的に認知されている。手話は書記法がないので、「聞く、話す、読む、書く」の4つの技能のうち「聞く,話す」に相当する2技能について検定する。実際には、語彙と例文について、使用頻度と難易度により範囲をきめて出題する。この発表は、手話技能検定の基本的考え方と実施方法を述べ,夷際に行われた検定結果についても報告する。

 

手話教育システムの試作

田畑慶人・黒田知宏・村上満佳子・異鍋佳嗣・千原國宏(奈良先端科学技術大学院大学梢報科学研究科)

手話サークルに通う時間がない等の理由で自習型学習により手話を勉強する人々は,間違いを指摘される環境がないために間違った動作を学習する可能性が高い.自習型学習の問題点を補うために,著者・らは修正フィードバック機能を持つ手話教育システムを提案する.本稿では,提案システムのシステム溝成を述べ,簡単な動きで表現可能な手話単語を学習できるプロトタイプシステムを紹介する.

 

中国手話の漢字借用

宮本一郎(全日本ろうあ連盟 日本手話研究所外国手話研究部)

 

日本手話話者と日本語話者の言語行動の違い:第二言語と仕手の手話教育における言語行動対象研究の有用性

小薗江聡(東京家政大学)・芳仲愛子(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話母語話者人口推計の試み

市田泰弘•難波友加・伏原桃子・三宅三枝子・吉井美樹(国立身体障害者リハピリテーションセンター学院)

 

東アジアにおける手話の語彙の比較:日本手話の影響

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)

 

日本手話における時間構造の分析

平山望武・桑子浩明・堀内靖雄・市川熹(千菓大学大学院 自 然科学研究科)

 

2人の対話場面についての手話表現の特徴

石井良介(群馬県立吾妻高等学校)・星名信昭(上越教育大学)

 

日本語から手話への変換作業の分析:言い換えを中心に

白澤麻弓(筑波大学大学院心身障害学研究科・日本学術振興会特別研究員)


日本手話学会第26回大会

日程:2000年6月24・25日

場所:東京外国語大学

 

【研究発表】

日本手話の助動詞について

市田泰弘・川畑裕子(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

日本手話には助動詞はあるのだろうか.そもそも助動詞とは何だろうか.本論では,日本手話において助動詞という品詞を想定することの有効性について論じるとともに,日本手話にも助動詞が多数存在すること,それらが独自の文法化の結果であることを指摘する.

 

日本手話におけるロールシフト

小薗江聡・木村晴美・芳仲愛子・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

手話言語におけるロールシフトとは,話者が現在の話者以外の他者(過去/未来の話者も含む)の役割を演じることである.その時,話者の非手指動作,すなわち,表情,視線,上体の動きは,それぞれ他者の表情,視線,身体動作を表している.ロールシフトは,手話言語の文法構造において,きわめて重要な役割を果たしているが,詳細な分析話されていない.本論では,ロールシフトの詳細な分析のための枠文を提示したい.

 

日本手話の否定の表現に関する研究

赤堀美里・乗富和子・赤堀仁美・津山美奈子・福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)

聾者の自然な対話(延べ1時間・総語数1万2戦後)を研究対象にして,「違う(L)」『ない(て)』「ない(め)」「いや」の語を用いて表現している否定の表現の中で,「首振り」がどのように表現されているか研究した.否定の文の中では,首振り動作は表現されている文の統語構造に従って表現されていた.また,首振りと同様に文法表現が頭の動きによって表現される疑問文のような中で否定が表現される場合には,首振りが省略されても正しい文とされることがわかった.次に,語自体に否定の意味がある語を対象に,それが使われている文例で,首振り表現を研究した.語の前後に頭の動きを伴うような文例では,首振りが消失したり,首振り動作のあいまいな表現である「頭をかたむける」動作に変形しても,正しい文とされることがわかった.

 

非手指副詞と強弱表現

市田泰弘・江藤雄二(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話における修飾表現の分析と手話アニメーションへの付加

村上満佳子・田畑慶人・黒田知宏・眞鍋佳嗣・千原國宏(奈良先端科学技術大学院大学)

従来の手話アニメーションでは,形容詞の程度情報を正しく表現できていない.そこで本研究では,修飾表現を手話アニメーションに導入する手法を提案する.本報告では,就職後による手話の強調表現に関する分析結果と,これに基づき生成したアニメーションに関する主観実験結果について報告する.

 

日本手話に特徴的な話法

森壮也(アジア経済研究所)

近年,日本手話の様々な特徴が音韻論,形態論,統語論などのレベルで観察され報告されるようになってきている.これらは日本手話の言語的特徴を明らかにしてくれているという意味で大変有意義であり,今後もそうした研究は続けられなければならない.一方,ある事象を表現する際の話法という意味で聴者の手話学習者とろうの手話使用者との間で大きな差が見られることが特にろうの手話指導関係者の間で言われてきている.その一部はロール・シフトという形でのものであるが,それに限らず,今回はそうした差について記述的にこれを述べてみたい.これはろう者から見た時により自然な手話になるという意味で,手話通訳者の学習上のヒントにもつながるのではないかと思われる.

 

談話分析に見る詩的表現:ろう文学の可能性

棚田茂(日本大学大学院総合社会研究家文化情報専攻)

ろう者の談話スタイルは様々あるが,その中で物語性の高い談話,韻律のある談話について日本国内ではあまり研究されてこなかった.言語芸術の一環としてろう者演劇が著名であるが,最近では手話詩も創作され,ろう文学の基盤が出来つつある.ろう文学に見る談話の詩的表現について分析を試みた.これについて考察する.

 

手話通訳作業に関する心理言語学的研究:その3訳出パターンおよび通訳中に用いられている手話の特長

白澤麻弓(筑波大学大学院心身障害学研究科・日本学術振興会特別研究員)

ある言語(sL:source language,起点言語)における考えや概念を,他の言語(tL: target language,目標言語)に変換する作業のうち,起点言語および目標言語に音声または手話を用いる形態のことを通訳と言う(Brislin,1976).本項では,日本語から手話への同時通訳を取り上げ,この記述分析を通して,通訳者ごとの訳出パターンや用いられている手話の特徴を明らかにすることを目的とした.この結果,通訳者の訳出パターンには,脱落,言い換え,圧縮・統合の各変換作業が大きく関係していること,訳出表現のうち,区切りの表示の仕方,不要な間の出現回数は個人差が大きく,これが訳出表現の見やすさに影響を与えている可能性があることなどが明らかにされた.

 

高齢ろう者と若年ろう者の手話表現の違い:予備的検討

乗富和子・赤堀仁美・赤堀美里・津山美奈子・福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)

20歳代・30歳代・50歳代・60歳代のろう者の自然な対話を研究対象にして,高齢のろう者と若年のろう者の手話表現の違いを,語彙の使用の仕方・顔の表情や頭の動きなどの非手指表現・CL表現などについて,研究した.その結果には次のような傾向があった.①使用語彙について,高齢と若年のろう者のではその表現が異なっているものが多数あった.②高齢者は顔の表情で副詞的な表現をするのに対して,若年のろう者ではそれを語に置き換えて表現している例が多数見られた.③高齢者では,文の構造を表現していく上で,「頷き」など頭の動き+PT−3で表現されているものに,若年者では手指動作による語表現が付け加わるものも多かった.

 

ボリビア手話のルーツの探索:クラスター分析モデルを使用して手話方言の分類法

茂流岸マイク

本発表ではボリビア手話を紹介する.米国手話ASLとの類似性を述べた後,これがASL方言の1つであろうという提案をする.他のASL方言の中,どの地位を占めるか決めるため,コンピューター・プログラム・クラスター分析方法を使って,Shroyer & Shroyerの方言データを分析する.米国それぞれの州の手話と他の州の手話との関係についてのデンドログラム(樹形図)を作る.最後に,ボリビア手話の地位を決めるため,残る課題を述べる.極小な予備データと簡単な統計を使用して,仮定結果を述べる.

 

日本手話における日本語口形について

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)(予稿なし)

 

最適性理論による両手手話の研究:試論

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)(予稿なし)

 

日本手話におけるWeak Dropについて

宮原麻衣子(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話における時間構造の分析

平山望武・堀内靖雄・市川熹(千葉大学)

 

韓国手話について

宮本一郎(日本手話研究所外国手話研究部)

Getting Collaboration of Korean Association of the Deaf, Members of Foreign Sign Department, Japan Institute for Sign Language Studies, JFD visited to Korea from 26th October to 4th November 1999, and investigated Law, Life, Labor, Sign Language concering on Korean deaf people.

 I recorded Korean Sign Language from three informants. I will present of the analysis on Phonology and Semantics.

 

小高学年の「スピーチ練習」における手話能力の向上

伊藤貴俊・小野広祐・岡本真未・坂口公将・赤堀仁美・今里見(龍の子学園小学部)

龍の子学園は1999年4月に開校した,ろう者によるろう児のためのバイリンガル・バイカルチャー教育実践の場である.現在,日本のろう教育では口話・指文字・キュードスピーチ等の様々な手段が用いられており,混沌とした状況である.日本手話の環境におけば,聴児が日本語を獲得するプロセスと同じように,ろう児は日本手話を自然に獲得することができる.ろう者の言語である日本手話を共通言語とすることによって,ろう者の言語や文化の継承を図り,さらに,日本手話で日本語の読み書きを高める,これが我々の目指すバイリンガル・バイカルチャー教育である.

 

手話言語環境にある聾児が表出した2語文における指さしの役割

武居渡(金沢大学教育学部)

 

手話習得の環境の違いが手話表現に及ぼす影響:手話言語の表現の評価の試み

赤堀仁美・赤堀美里・乗富和子・津山美奈子・福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)・武居渡(金沢大学)

20歳前後から20歳代の聴覚障害者を対象に,13語〜18語から成るかなり複雑な構造の手話文を刺激にして,手話言語の表現の評価を試みた.その結果を分析して,手話習得の時期や環境の違いが手話表現に及ぼす影響を検討した.その方法や結果について,詳細を報告する.


日本手話学会第25回大会

日程:1999年7月10・11日

場所:国立妙高少年自然の家

 

【研究発表】

手話表記法を活用した手話辞典のプロトタイプ提案

宮下昭宣・吹野昌幸(Dプロ)

現在,世界中で手話表記法を活用した手話辞典が刊行されているものの,日本では,手話表記法を活用した手話辞典は未だ刊行されていない.世界中でいくつかの手話表記法がある.どれが良いかと検討した.その結果,ドイツのハンブルク大学のドイツ手話センターで開発されたハムノーシスという手話表記法を採用した.そのハムノーシスは<手型><手の方向><位置><動作><非手指記号>の5つの部門に分けて記述を可能にしている.それに基づいて,日本の現実に即した手話辞典プロトタイプ案を作成し,提案する.

 

音節の適格性に関する一考察:complexity-based approach

原大介(シカゴ大学)

音節を構成している複数の要素を統一的な基準に基づいて数値化する必要がある.また,その基準は客観性の高いものでなければならない.ここでは,情報理論の情報という概念を用いて,音節の適格性を論じる際には不可欠となる.音節構成要素の数値化について考察する.

 

日本手話のデータから見たH1概念の再検討

森壮也(アジア経済研究所・全日本ろうあ連盟日本手話研究所)

Battison(1974)以来の手話音韻論ではH1(利き手,Dominant Hand)という概念が重要な部分を構成してきている.これまで,日本手話の研究でも同じような考え方が適用されてきているが,この際に研究者の側でASLの知識がまだ十分でなかったためもあって,両手話の間での言語的特性の差があまり省みられてこなかった傾向がある.しかしながら,ASLを日常使用している米国のコミュニティ(必ずしもネイティブ・サイナーにこだわる必要はない)との接触が増えてきた現在,いくつか日本の手話についてこれはどうもASLとは少し違うようだという形で指摘を受ける特徴がいくつかある.そうした中から,今回は利き手交代(Hand Swithing, Battison 1974)の現象に注目してみたい.そうした観点から日本手話の語をよく見てみると,本報告であるH1概念がそのまま当てはまらないものがASL以上に大きい.そうした日本手話の語彙の例を手がかりに両言語の言語的特性の違いと,H1のとらえ方の再検討を試みる.

 

頭のうなずきや顔の表情による日本手話の表現の詳細な分析

赤堀仁美・乗富和子・福田友美子・木村晴美・鈴木和子・津山美奈子・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

多頻度使用単語が用いられている文を例にとって,頭の動きや顔の表情が日本手話の言語表現にどのように関係しているか調べた.その結果,次のことがわかった.

① 疑問や同意を求める文・逆接や理由の接続などを表現するには,頭の動かし方が重要であり,それぞれの内容に対応した表現方法が存在しているようである.

② 単語表現に表情や口形が付加することで,その単語が本来持っている意味を限定しているようである.

③ 日本手話には,手指・顔・頭などの複数の調音器官があり,別の調音器官によって,同時に2単語が表現されることがある.

 

性について:/就く/,/降りる/(試論)

宮本一郎(Dプロ)

欧州諸言語には,男性名詞/女性名し,あるいは,通性名詞/中性名詞などの,名詞の性があることが知られている.例えば,天然/自然や文法上などの区別によって男性名詞/女性名詞と分け,形容詞と指示詞も男性形/女性形と分けている言語(フランス語など)や,かって存在した男性名詞/女性名詞/中性名詞が,現在,ほとんど通性/中性隣,定冠詞や指示形容詞の通性/中性がある言語(オランダ語)などがある.今回は,ろう者間に交わされているコミュニケーション現状を踏まえて,日本手話で表現される「性」について,考察する.

 

地名表現:/新潟/考

佐藤聖(社団法人新潟県聴覚障害者協会)

1969年(昭和44年)に財団法人全日本ろうあ連盟から「わたしたちの手話」が出版された.その出版以来,早いもので30年目を迎える.現在,全国レベルの会議・集会・手話ニュースなどで,標準手話として用いられたり,ろう者間の会話に取り入れられたり,様々な展開を見せているのが現状である.地名表現「/新潟/」について調査を行ったことを報告する.

 

聾者間の対話の日本手話での単語の用法に関する研究

乗富和子・赤堀仁美・福田友美子・木村晴美・鈴木和子・津山美奈子・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

2人の聾者の30分にわたる日本手話による対話で,高頻度に使われている基本単語20種を選定し,対話中で使用されているすべての例について,単語の用法を次の観点から分析した.① 各単語に対応する語義の多様性 ② 各単語の単語熊田は文中での非手指表現(口形の付加・顔の表情・目の開閉・頭の動きなど)その分析の結果,次のことがわかった. ① 対応する日本語の本来の語義に加えて,異なる語義を持っているものが多かった.② 単語単語区で表現される場合でも,非手指表現を伴うものがかなりあった.③ 同じ手指動作で表現される単語に,異なった口形を付加することによって,その意味が異なってくる場合が多くあった.④ 手指動作によってある単語が表現されるのと同時に,非手指動作によって別の単語が表現されることもかなり多く観察された.

 

日本手話一致動詞パラダイムの再検討:「順向・反転」「4人称」導入からみえてくるもの

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

コードスイッチング分析の試み

大杉豊(ロチェスター大学)

本研究(予備的研究)では二つの異なる手話言語話者(日本手話とアメリカ手話)の談話を対象として,コードスイッチングのパターンを分析した.その結果,音声言語話者のコードスイッチングと共通する点が多いことが確認された.その一方,音声言語に見られないものとして,移動・存在動詞構文がコードスイッチングを促す一つの環境であることが見い出された.それにより,日本手話とアメリカ手話が移動・存在動詞構文において極めて似た機能と構造を持つことが改めて示唆された.

 

日本手話のモーラ,日本語のモーラと比較して

堀米泰晴(Dプロ)・棚田茂(日本大学大学院)

日本国内では,手話辞典の開発にあたり,手話単語の造語活動が盛んである.スポーツ用語,コンピュータ用語,建築用語など分野は様々であるが,一般のろう者に受け入れられるものとそうでないものがある.これらの差異には,音韻的問題,メタファー的問題などが挙げられる.今回は音韻的問題を持つ単語に焦点を当ててみた.造語の元になった言語(日本語)から手話単語を造語する過程で問題が発生しているものに言語(日本語)のモーラが影響していることが分かった.一方,日本手話は一単語に対し2モーラであることが観察されている.例えば,日本語のモーラが5個の場合,造語過程で日本手話のモーラが3個になる.一般的に日本手話単語のモーラが2個であることと比較すると「3個」は矛盾する.矛盾を起こした造語された手話の多くは,音韻変化が起こる.日本手話は2モーラで構成されていることを確認したので報告する.

 

日本手話と北米先住民諸語の類型論敵対照研究

箕浦信勝(東京外国語大学)

本発表では日本手話の様々な類型的特徴を,主に北アメリカの諸言語と対照させながら概観する.その北アメリカの諸言語も,もとより系統的,類型的多様性たるや絢爛たるものがあり,決して一枚岩ではない.然し乍ら,日本手話の類型的諸特徴,すなわち,主要部標示,名詞と動詞の不峻別,順向・反転,類別詞,名詞抱合,語彙的接辞,重複法,音象徴と擬声語,整合性概観することによって,日本手話が,(音声)日本語よりは,新大陸・北アメリカの諸言語と多くの類型的特徴を共有することを見ていこうと思う.

 

スリランカ手話におけるネームサインの命名行為

加納満(長岡技術科学大学)

本研究の目的は,スリランカ手話を対象にネームサインの命名に関わる諸要素をもとに命名行為がどのように組織化されているのかを探ることである.その結果,聾者が他者をどのように認識し,命名行為過程に組み込んでいるかが一部明らかになった.

 

日本手話における「しゃれ」について

広川毅(千葉県聴覚障害者連盟)・森壮也(全日本ろうあ連盟日本手話研究所)

日本手話の中には/シ/ /ャ/ /レ/と指文字で表現されるものが存在する.しかしそれは(音声)日本語で「しゃれ」と言われているものと若干異なる意味で使われている.それがどのようなものなのであるのか,またこの手話での/シ/ /ャ/ /レ/に入らないものとしてどんな語があるのかを探ってみた.江口福(1990)でも述べられているように「言葉遊びには,むろん,その言語的好みがうまく反映されており,したがって言葉遊びの理解は,各言語とその言語文化の把握に関わってくる.」こうしたことを念頭に置いて考えてみると,日本語からの借用という意味では一見,同じように見えるこうした「ことば遊び」の中には手話として受け入れられているものとそうではないものがあることが分かった.またその区別は,手話のなりたちが通常思われているよりもはるかに複雑な複線的ななりたち方をしている可能性があることが示唆された.これらの事実からろう者にとっての日本語は単に外国語であるとして外部的なものとするのには疑問符がつけられねばならないことも明らかになった.

 

手話通訳作業に関する心理言語学的分析

白澤麻弓(筑波大学大学院)

通訳とは,ある言語(sL:source language. 起点言語)における考えや概念を,他の言語(tL:target language. 目標言語)に変換する作業で,sLおよびtLに音声または手話を用いる形態のことを指す(Brislin, 1976).このうちsLまたはtLに手話を用いる手話通訳については,その通訳過程に焦点をあてた研究は少なく,必要と荒れる作業内容については明らかにされていない.本稿では,音声同時通訳研究における知見を元に,日本語から手話への通訳作業について,訳出情報量,訳出時間,変換作業,訳出表現の4つの側面から分析することで,手話通訳作業の評価・記述を試み,これを通して手話通訳に必要とされる作業内容について考察する.

 

手話詩の試論:メタファー

宮本一郎(Dプロ)

米国では,Ella Mae Lents女史(ASL講師,ASL詩人),Clayton Valli博士(ASL詩)らが,ASL詩創作活動・発表が続けておられる.彼らのASL詩が,米国ろう者自身の「ろう者」として,又,「第一言語:ASL」話者としてのアイデンティティに大きく影響を与えていることも事実である.また,「ろう文化」「第一言語:ASL」の主張,及び,(米国の)聴者多数派から成る社会の中における少数派と位置付ける,社会運動が活発となったのは1980年代からであり,ASL詩の創作発表もその時期から活発になっている.地球規模で眺めると民族蜂起や独立運動などと共に歩んで来たという歴史的事実が多くあり,この活発化事情は偶然なる出来事ではなかろう.現在,彼ら,ASL詩人の手話詩には,口頭自由詩や象徴詩もあれば,音数律・音韻律に基づいたものもあれば,様々な創作を試みて,発表されている.特に,Clayton Valli博士は,詩的直喩を用いた手話詩,或いは,象徴的な手話詩の創作が,もっとも得意としている.今回は,ポジティブ/ネガティブの詩的直喩を用いて,手話詩創作を試み,日本手話の手話詩の可能性を述べる.

 

指文字学習支援システムの研究

田畑慶人・黒田知宏・千原國広(奈良先端科学技術大学院大学)

手話の自習型学習は,学習者の好きなとき学習できる反面,学習した手話動作の正誤確認ができないという問題がある.そこで本報告では,学習者が提示した手話を評価し,他あしい手話への修正方向をビジュアルにフィードバックする学習支援システムを提案する.本システムにおいては,視覚的な正解を適切に認識することが重要である.そこで,本報告では入力データを記号列に書き下すことで,提示手話の曖昧性を吸収する手法を提案し,提案手法の評価を行ったのでこれについて述べる.

 

手話コミュニケーションにおける視覚的メタファの効果とその評価

佐藤昌一・松永哲也・和田充雄(北海道大学大学院)

手話コミュニケーションのためのコンピュータを介したインタフェースとして,アバター型(人型ロボット)が重要となってきている.その研究課題には,手話の動き認識,データベース化,アニメーション精製などの様々なものがある.本研究では,コンピュータからユーザに伝える画面インタフェースとしての立場から,インタフェースに視覚的メタファを取り入れた.アバター型のプロトタイプを製作した.ろう者,健聴者両方の被験者に対し評価実験を行い,その効果すなわち,見やすさや,わかりやすさなどについて考察した.手話で話し,手話で考えるろう者にとって,本当によいものになり得るだろうか,という問いに対し,手話インタフェースの新たな一つの方向性を見出したので,ここに報告する.

 

ネパール聾事情

寺井泰子(青森県八戸市城下小学校)

青年海外協力隊員(平成9年4月〜平成11年4月派遣)としての活動を通して見えたネパールの聾事情(学校教育の現状,手話の社会的認知度,聾者を取り巻く社会など)について報告する.

 

「二重のマイノリティ」としてのアフリカろう者社会

亀井信孝(京都大学大学院)

アフリカの各地にはろう者社会が存在しているが,先行研究や報道においてその実態を知る機会は少ない.結果として,アフリカのろう者社会について関心を持つ機会もなく,さらに語られにくくなるという悪循環がある.本報告では,まず文献の分析から,その認識的不均衡について論じる.ついで,アフリカ各地のろう者社会に関するさまざまなトピックを紹介し,いま研究として何が求められているのかを示唆する.最後に,アフリカのろう者社会の現状を「二重のマイノリティ」として捉える枠組みを示し,今後の課題について展望を述べる.

 

手話による立体表現の発達モデルに関する検討

中野聡子(筑波大学大学院)・吉野公喜・金澤貴之(筑波大学)

手を使ってさまざまな物の形や大きさを3次元空間上に表現するためには,複雑な空間的操作や空間的攻勢が行われなければならない.本研究では,手話導入を積極的に行なっている聾学校幼稚部に在籍する聾幼児と,同年齢の聴幼児および聾成人を対象に,15種類の3次元物体の描画表現・手話理解と表現の課題を行い,幼児特有の空間構成の特徴とそこに見られる手話の使用について検討する.

 

手話表現能力評価尺度作成の試み

長南浩人(神奈川県立平塚ろう学校)

本研究は,手話表現能力の評価尺度を作成することを目的としたものである.予備調査では,評定者が7人の聴覚障害者の手話表現を順位づけをすることと,その理由を自由記述することが求められた.その結果,評定者間で順位づけは一致していた.また,自由記述から17項目からなる仮尺度を作成した.研究では,この尺度の信頼性と妥当性を検討した.因子分析の結果,本尺度の1次元性が認められた.また信頼性も高く,併存的妥当性も検証された.

 

手話を学習する上でエラーの多かった単語の音韻的特徴

池田亜希子・木村晴美・竹内かおり・福田友美子・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

学習者の手話文におけるうなずきのエラー分析

竹内かおり・木村晴美・池田亜希子・福田友美子・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)


日本手話学会第24回大会

日程:1998年8月1・2日

場所:国立身体障害者リハビリテーションセンター

 

【研究発表】

手話のリズム

市川熹・田中裕史・堀内靖雄(千葉大学大学院)

手話のリズムを解明する予備検討として,ろう者と健聴者(手話学習者)の手の甲に磁気センサを付け,その空間的位置を計算器に取込み周波数分析等を行った.聾者の手話には部分的に5Hz(200ms)程度の周期的動作が確認されたが,健聴者では見られなかった.これは,言語のリズムには約330ミリ秒より短くパターンとして直接的に認識されるものと,約420ミリ秒より長く論理的に判断されるものの2種があるとの,神戸外国語大学の河野教授による最近の報告に照らすと,ろう者の手話はパターンとして理解しやすく,健聴者のはそれに欠け,一つ一つ論理判断を求められ,理解がスムースに行かないことが多いのではないか,ということを示唆している.

 

3次元位置測定装置による照応表現の測定

徳田正晃(北陸先端科学技術大学院大学)・市川熹(千葉大学)

磁気センサーによる3次元測定装置を使うと手や腕の位置が3次元空間上の点として観測し,処理することができる.この装置を使い,健聴者と聾者の照応表現を測定した.その結果,健聴者の手話表現に,聾者とは違うパターンが見られた.また,この測定を通して明らかになった測定装置とデータの処理方法の問題点と,その改善方法について考察する.

 

アバター型手話通信に適した表情パラメータの検討

黒田知宏・佐藤宏介・千原國宏(奈良先端科学技術大学院大学)

現在各家庭まで敷設されている電気通信ネットワークは音声の伝送を主目的としているため,これらから受ける恩恵には健聴者と聴覚障害者(以下,ろう者)との間で大きな差が生じている.そこで本研究では,各種動作計測技術とVR技術を利用し,遠隔地間での自然な手話コミュニケーションを支援する,アバター型手話伝送通信装置の開発を行っている.これまでの検討から,アバター型通信は画像通信に比べて伝送速度や解像度の面で有利であるが,表情情報が欠落しているという問題があること,画像情報を用いてCGアバター上に表情提示を行うと違和感が生じる,伝送符号量が増加する,CG描出レートが低下するなどの問題があることが明らかになった.

そこで本発表では,表情をCG提示するためにどの顔部位の動き情報を伝送せねばならないかを検討する.

 

聾幼児における手話の類辞SASSの獲得に関する一考察:空間概念発達との関連から

中野聡子・吉野公喜・金澤貴之(筑波大学)

 

手話習得における情意フィルター

木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター)・小薗江聡(Dプロ)

 

戦前から現在に至る沖縄のろう教育史

千々岩恵子(Dプロ)

 

カメルーン共和国における二つの外来手話教育

亀井伸孝(京都大学大学院)

 

日本手話のハムノーシスに対する考察・提案

宮下昭宣・棚田茂(Dプロ)

現在,世界中でいくつかの手話表記法が提案されており,実際に辞書,研究などに用いられているものもある.日本国内でもいくつかの表記法が提案されているが,我々はその中で特にハムノーシスを取り上げ,日本手話におけるハムノーシスの表記の改良を加えた.ハムノーシスで表記できない手話,口唇動作の表記に関する提案をする.これによって,手話・日本語辞典の作成をめざす.プロトタイプを紹介するが,実際,手話ポエムなど,日本語・手話辞典では到底実現不可能な活用を可能にしている.

 

聾者間の対話の日本手話で見られる音韻表現の変形

福島和子・関根智美・赤堀仁美・泉宣秀・福田友美子・木村晴美・市田泰弘・春日井中・鈴木和子・中嶋直子・近藤和歌子・乗松秀暢

聾者の日常的な対話で行われている単語表現を,ゆっくりと丁寧にいちごずつ発話した単語表現(基本的表現)と比較した.それに基づいて,聾者間の対話で使用されている日本手話の単語の手指表現が基本的表現からどのように変化するかについて,体系化を試みた.その結果,次のことがわかった.1. 手型では,それぞれの手型には必ず表現しなくてはならない手指の形の必要条件があり,それさえ満たしていれば,かなり広い範囲へ変形していた.2. 位置については,①接触を伴わない単語では,前後の単語(特に前の単語)に影響されて,動作位置が移動していた.②接触を伴う単語は,基本形では動作位置はかなり狭い範囲に限定されるが,対話では接触を伴わずに発話され,大きな位置の移動があった.3. 両手で表現される単語では,非利き手の動作が省略されていた.以上の変形すべて,手・指・腕などの調音器官に負担がかからないよう,前後の単語との組みあわせから,どのような表現がなされるかが,決定されていた.

 

指文字の有契成消失について

吹野昌幸・宮本一郎(Dプロ)

指文字表現は,使用頻度が高いほど,MOVE/HOLDが消失したり,手首の方向の無標化されたり,有契性消失の過程を経て,円滑化や縮約化(神田1994)の現象が起きていることが知られ,日本手話ネイティブ間で交わされている会話場面で見られる現象のひとつである.有契性消失には,要素の消失や無標化,そして方向の同化の様々な現象があり,コミュニケーションの円滑化・迅速化を果たしている.

今回は有契性消失の様々な現象の過程を経て,方向同化とニュートラル化に至ることについて分析を行い,考察を述べる.

 

日本手話の複合語形成における動きの弱化と消失

乗松秀暢・市田泰弘・泉宣秀・赤堀仁美・福島和子・関根智美・福田友美子・木村晴美・鈴木和子・近藤和歌子・春日井中・中嶋直子

 

日本手話品詞論試論:セイリッシュ諸語との対象を通して

箕浦信勝(東京外国語大学)

 

日本手話の名詞句内の語順について

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

日本手話のアスペクト表現

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)(予稿なし)

 

日本手話実詞の順向・反転について

箕浦信勝(東京外国語大学)

 

JSLに於ける頭の斜め:談話的な機能から意味的な根拠へ

茂流岸マイク(国際大学・新潟大学・長岡技術科学大学)

日本手話では,色んな文法上の機能が非手指動作で実現されることがよく分かってきた.この非手指動作の中には頭の斜め(左右傾き)も1つである.例えば,木村・市田(1995),市田(1991等)はwh疑問文を伴なう非手指動作要素の組み合わせは頭の斜めも含んでいることを述べた.しかし,頭の斜めが伴わないwh疑問文もあるし,手話談話では頭の斜めは疑問文以外の役割も果たしている.本研究の目的は,ビデオに録画された日本手話談話のコーパスに出る頭の斜めのすべての例を分析して,頭の斜めはどんな機能があるか,そうしてその機能は一般的な意味に基づいているかどうかとを論じる.

 

談話の中の登場人物の区別について:あるろう者の伊勢湾台風体験談より

シンシア・パチキ(中京大学)・黒坂美智代(名古屋市)

This study takes a look at the strategic features for distinguishing characters in signed narration. What has been traditionally called "role-playing" and what Winston(1992,1992) calls action performatives(what we call gendou noinyo), is analyzed. Eye gaze, body orientation, facial exression, and signing style are identified as the features of action performatives. They are found to be utillzed in isolation or in varlous combinations to make the switch of characters apparent. Findings resulting from this study include the fact that body orientation is only directionally consistent, and thus significant, for the main character, and irrelevant, or insignificant, in the case of the remaining characters whose positions are understood only in relation to the features of the action performatives of the main character of the story. It also appears that the scene of the story is set up relative to the main character as the story unfolds.

 

日本手話におけるメタファー

小川由布子(ギャローデット大学大学院)

認知言語学の領域の一つである,レイコフとジョンソン(1980)のメタファーとメトニミーの理論の日本手話における考察.数多くの日本手話における概念メタファーのうち,本論文はオリエンテーション・メタファー(方向性のメタファー)の中から「上−下」の空間のメタファーを紹介する.

 

詩的手話の音韻分析

棚田茂・宮本一郎(Dプロ)

手話ポエムに対する誤解が最近多く目立つ.ろう者にとっての音楽,詩とは何かを追求し,一般的に考えられている手話ポエムに対し,ろう者の手話ポエムの真相を解き明かし,日本におけるろう者による手話ポエムを紹介し,ASL詩の先駆者であるエラ女史,パリー博士の手話ポエムの音韻分析などを元に,日本手話における詩を音韻的に分析する.その結果をハムノーシスで表記することによりさらに明確な日本手話における手話ポエムの音韻的特徴,韻数律について述べる.

 

アメリカ手話語彙における分布の偏り

原大介(シカゴ大学)

アメリカ手話語彙の分布は均等ではなく,ある種の語は理論的に存在が予測されるものにもかかわらず実際に存在しない.動き・手型・位置のそれぞれにこのような偏りが存在することを指摘し,これらの「偏り」が音節形成・語形成の仕組みを解明する重要な手がかりになることを示す.

 

日本手話における口形表現の役割り

関根智美・赤堀仁美・福島和子・福田友美子・木村晴美・市田泰弘・鈴木和子・近藤和歌子・春日井中

日本手話の口形変化による言語表現を研究するために,まず,その表現例を3人の日本手話のネイティブサイナーを中心にして約500種を採集した.採集したサンプルについて,3人の聾者が持っている日本手話の知識を基にした直感的な分類にしたがって整理・記述した.口形表現では①1回(普通の長さ):ア ②1回(長い):アー③繰り返し:アアア④強調(各口形の特徴の強調):アッの4種類,手指動作による単語表現では①1回(普通の速さの動作) ②l回(ゆっくりの速さの動作) ③繰り返し ④なしの4種類の区別があり,この2つが組み合わされて意味的に違う表現がなされていた.また,口形の形の種類は20種類に区分したが,今後,客観的な測定をして,その詳細を記述する予定でいる.

 

地名表現/長崎/について考察:コードスイッチング

吹野昌幸・宮本一郎(Dプロ)

戦後のろう者の全国的な組織運動が高まった背景事情により,昭和44年(1969年)に(財)全日本ろうあ連盟から『わたしたちの手話』(全日連1969)が出版された.その出版以来,四半世紀以上経つ.現在,全国希望の会議・集会で,標準手話として用いられたり,ろう者の一般的生活では普段の手話会話に取り入れられたり,様々な展開を見せていることが事実である.昨年の,/大分/地名表現の観察(宮本,1997)に続き,今回は,長崎市においての(以後,「地元」と称す)地名表現/長崎/についての観察調査を行い,また,コードスイッチング現象(木村/市田1995)の発生有無の観察調査を合わせて行ったので,報告する.

 

聾者間の対話の日本手話での使用単語

赤堀仁美・福島和子・関根智美・泉宣秀・福田友美子・木村晴美・市田泰弘・鈴木和子・春日井中・中嶋直子・近藤和歌子・乗松秀暢

2人の聾者の30分にわたる日本手話での対話をレーザディスクに録画した.その録画された記録を用いて,対話を単語レベルで区切り,使用されていた単語すべてにラベル付けした.単語を区切る場合2つの単語に分けるかまたは独立させた方がいいか迷うことも多かったが,聾者が持っている日本手話の知識を基にした直感的な単語意識を,最終的な判断基準にした.また,ラベルには外国の研究で行われているように,便宜的に日本語表現を用いた.その結果,2人のろう者での高頻度使用語彙は類似していて,どのような単語が高頻度に使用されているか資料が得られた.また,高頻度に使用される日本手話の基本単語は,日本手話独特の使用方法が多い印象であった.その中のいくつかを紹介した.


日本手話学会第23回大会

日程:1997年7月5・6日

場所:沖縄県女性総合センター

 

【研究発表】

(日本)手話とアメリカ手話(ASL)の音韻的差異の例とそこからの理論的示唆

森壮也(アジア経済研究所)

発表者は昨年の本学会報告において近年の手話音韻論の分析枠組みの大きな変化をこれまでの日本における手話研究を振り返りながら,簡潔にまとめ,そうした新しい流れの中で特に音節構造などにも注目した非線形な音韻論が今後の日本手話の分析においても意味を持つことを示唆した.そして日本手話の音韻規則を明らかにしていくための方法論として,ASLネィティブ・サイナーの日本手話産出の分析という方法がこの枠組みを背景にして必須のものとなることを明らかにした.本発表では,この研究が実際に行われた結果,出てきたいくつかのエラーのパターンの分析とそこからの理論的示唆について論じたものである.エラー・パターンの数は,全部で8種類であった.このパターンを見てみた結果,従来の手話音韻論では見えにくいのにも関わらず,重要な違いとして手話とASLでリズムをもたらす構造の違いがあると思われること,また音素の中の素性にも注目すべきことが明らかとなった.また音素概念についてもASLと手話間での違いを説明できるようなものでなければならないだろうと思われる.

 

韓国手話と日本の手話の類似性について(その1)

竹内幸恵(和光大学)

現在の韓国の手話と日本の手話の双方の手話単語には類似性がある.大日本帝国が朝鮮総督府を持って朝鮮半島を統治していた時代の日本では,手話を用いたろう教育が行われていた.そして,当時の朝鮮総督府が日本のろう教育で用いていた手話を朝鮮総督府済生院盲啞部において朝鮮のろう教育でも使用した.このことが原因で韓日双方の手話単語に類似性が発生したことを,資料に基づいて明らかにした.

 

非利き手の動きと優位性条件

原大介(シカゴ大学)

これまでの研究で,両手を使って表される手話には様々な制約が課せられていることがわかっている.日本手話には両手の手型が異なりかつ両手が動くというバッチソンの条件では説明のつかない手話が多く存在する.今回の発表の目的は,近年,手話言語研究で注目を集めているソノリティー(sonority)の概念を用いて,これら例外的な手話の非利き手の動きには,韻律レベルにおいて依然として厳しい制約がかかっていることを示すことにある.

 

手話ラベリングの提案と実例

神田和幸(中京大学)・長島祐二(工学院大学)・市川熹(千葉大学)・寺内美奈(職業能力開発大学校)

手話工学研究会「手話電子化辞書ワーキンググループ」では手話の工学的研究の基礎となる手話のラベリングについて研究してきた.そのラベリングシステムをサインデックス(Signdex)と命名し,表記システムについてはすでに発表してきた.この小講演では表記システムの概要説明とそのシステムによる実際の表記,およびその実例として第1版(Signdex V.1)の作業過程,そしてその成果をビデオにして掲示する.

 

手話ディスコースの構造:インデックス的マーカーの相互作用の分析

茂流岸マイク(M.W.Morgan)(国際大学・新潟大学・長岡技術科学大学)

本原稿ではディスコース分析の基礎となる基本的な概念を紹介する.それから記号体系とした手話談話分析のためにインデックス的マーカーの重要性を述べる.インデックス的マーカーの定義は手話談話における「物語」空間(Narrative Space)の一部分に指示し,談話に機能的意味がある動作(例えば,指差し,視線,顔向き,上体向きなど)とする.最後に,ズービンとヒューイット(Zubin & Hweitt)の直示中央(Deictic Center)モデルを紹介して,手話談話の例を1つあげて,このモデルによって分析する.

 

手話における名詞編入

原大介(シカゴ大学)

名詞編入現象とはどのような現象なのかをMithun(1984)の類型に従って概観した後,日本手話にも名詞編入現象が存在することを示すことが今回の目的である.

 

日本手話における最小語制約と動きの挿入

原大介(シカゴ大学)

日本手話には,単独で現れる場合には「動き」を伴うが,複合語に参加する場合には「動き」を伴わない語が存在する.この事実は,これらの語が基底形で「動き」の指定を持たず,単独で現れる場合には,音節の適格条件を満たすために不履行規則により「動き」が挿入されていると考えることにより説明できる.

 

日本手話における視線

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

手話言語を構成する要素のひとつである視線について,日本手話の発話コーパスから用例を収集し,その果たす役割について,網羅的に検討し,その分析を試みる.

 

日本手話の疑問文における非手指動作

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

手話言語の疑問文は,日手指動作によって標示されることが指摘されてきた.本論では,日本手話のYES−NO疑問文とWH疑問文について,疑問文を構成する各要素のうち,疑問文を作るのに不可欠な要素は何か,各要素間の関係はどのようなものかということについて論じる.

 

地域名(/大分/)の語彙化についての考察

宮本一郎(D PRO)

都道府県市町村や地区等の地域名の表現は,(社)全日ろうあ連盟発行『わたしたちの手話』をはじめ,各団体に至るまで,様々な刊行物で紹介されている.各々の表現は,民間伝承や,地域の象徴的存在から由来されたものであれば,出身者の第一印象等なら由来されたといった面白いエピソード・時代考察ができそうなものもある.それら表現のうちに,時代的整理的影響を受けて変化が発生されるという,時間的経過が観察できる表現が見い出されることができる.

/大分/表現の,利き手:「め」手型の,非利き手への接触位置について,大分県在住ろう者と域外のろう者との表現が違う.この差異点に着目し,調査を行ったので.報告する.

 

手話の初語を準備するもの −マニュアル・バブリングを中心に−

武居渡(筑波大学)

手話言語環境にある初語表出前後の乳児3名の手指運動を記述,分析した.その結果,特にろうの両親を持つ聾児において,手話による諸語が出現する以前に,無意味な手指の運動が頻繁に観測された.無意味な手の運動は,10ヶ月頃に最も頻繁に観測され,リズミカルな繰り返しが見られた.また,後に出現する諸語と音韻的な連続性が観察された.これらのことから,無意味な手指の運動は,喃語の役割を果たしており,喃語は音声モダリティ−に限定されたものではなく,もダリティーを超えた現象であると考えられた.

 

手話教育の実践報告

神田和幸・加藤勝由・城戸千代子(中京大学)

中京大学オープンカレッジでは入門クラス,実践クラス,応用クラスを開講しているが,これらのクラスは基礎的な語彙学習と文法学習に主眼があり,手話の実用能力開発には足りない. それを補うため1996年後期から 「手話サロン」という名称のろう者讚師による手話教室を別途開講した.手話サロンの目的はろう者との自然な交流による自然な手話習得であり,学習環境を工夫し,内容も斬新なものを考案している。 本論は現 在実施中の各クラスについて具体的に報告し,それぞれの目的と思想 その効果と反省を報告する. 

 

手話伝送システムS―TELにおける表情通信方式に関する基礎検討

黒田知宏(奈良先端科学技術大学院大学)

現在各家庭まで敷設されている電気通信ネットワークは音声の伝送を主目的としているため,これらから受ける恩恵には健聴者と聴覚言語障害者(以下、 ろう者) との間で大きな差が生じている.そこで,本研究では,各種 動作計測技術とVR技術を利用し、 遠隔地間での自然な聴障者同士のコミュニケーションを支援する,手話伝送システムS-TELを開発している.S-TELでは,映像情報ではなく骨格情報として手話を伝送し,発話者と全く同じ動作を行うアバター(avatar,化身) を CG を用いて次話者側の端末に提示することで,プライバシーの侵害を防ぎながら,手話の持つ感性情報を損なうことなく,手話の自然なコミュニケーションを可能にしている.本報告では,S-TELのアバター像に表情情報を付加する方式について検討を加える.

 

手話認識における顔の動作の検出法の検討

市川熹・高橋明・岡田陽一郎・堀内靖雄(千葉大学工学部情報工学科)

手話における言語情報としての顔の動作を検出する手法を検討した.提案する手法は,顔に人為的なマーク等はつけずに,ヒストグラムを用い上半身の動画像を動的計画法により追跡する方式である.まず顔領域,口,眉の上下端位匿がマーク付けされている標準パターンと入力顔画像の上下及び左右のヒストグラムを動的計画法により対応させる.そして,対応づけされた入力パターンを次の入力に対する標準パターンに用い,順次各部位の動きを追跡する.提案手法は,従来の画像処理をベースとした顔画像処理手法に比べ処理抵が少なく,パソコン程度で処理が可能である.

 

手話伝送の現状とこれから

竹内誠(日本手話学会)

音声の伝送に利用されている電話の利便性は,近年急速に増大している.それに対して手話を伝送する現状で可能な手段では,伝送する必要のある情報の量が電話と比べ圧倒的に多いこと,あるいは発話側の手話採取の困難さや機材が高価であること,さらに手話を伝送する手段の需要自体があまり期待できないことから,その開発・普及が遅々として進んでいない.このままでは基本的な情報通信の面において,聞こえる人と聞こえない人の間の利用できる情報の量の格差は開く一方である.現在研究されている手話の伝送手段には幾つかの種類がある.しかし,どの方法にも手話を伝送する方法として普及するには克服しなければならない点があり,現状では手話を伝送する方法が実用化されるに至っていない.本発表ではこれらのことについて概観する.また本発表では,手話を伝送するときに必要な情報の量は現在画像の伝送で手話を伝送しようと考えるときと比べて大幅に少ないことを示した.さらに,手話を伝送する方法を考案した場合に,その方法が本当に手話の伝送をする方式として妥当であるかをどのように評価 してやるかということについて考察を加えた.


日本手話学会第22回大会

日程:1996年7月20・21日

場所:筑波技術短期大学

 

【研究発表】

地域名の語彙化について

宮本一郎(沖電気工業)

道都府県名や都市名,町名などの地域名の表現は,(社)全日ろうあ連盟発行の「わたしたちの手話」に載っているような,民間伝承,日本語借用から作られたものの他に,或る地域の出身者の第一印象を採用した,なかなか面白いエピソードが語られているのもあれば,時代と共に変わる,時代的考察ができそうなものもある.地域名表現の習得するにあたり,当地域の在住者と部外者の表現について,必ずしも同一でないこと,気付かれることがある.今回は,この差異,且つ,民間伝承的解釈含まれない点に着目し,考察して,仮説を述べる.

 

手話の分布実態把握の試み(予稿なし)

川岸忍(堺市堺福祉事務所)

 

日本手話の音韻規制についての試験:分析枠組みを中心に

森壮也(アジア経済研究所総合研究部)

ここ数年,欧米の手話音韻論では分析枠組みの大きな発展が起きており,それらを用いての世界各地の手話の分析が待たれている.こうした近年発展した分析枠組みの代表的なものとして音節構造(Syllable Structure)分析がある.これまでの日本での手話音韻論の議論がとかく枠組みの議論に偏りがちであったのに対して,音韻規則の提示という手話音韻論の本来の役割を考えた時にも,この分析は興味深い発見をもたらしてくれるであろう.特に音声言語との比較ではなく,異なる手話言語同士の比較に際して,非ネィティブ・サイナーが習得した手話がどのようなアクセントを持つかという観察とこの枠組みとの対比から当該手話 (今の場合は日本手 話) の音韻規則をあぶりだそうとするものである.

 

{男}と{指さし/男}の意味論的分析

大杉豊(ロチェスター大学)

名詞の指示対象がそれと同時的あるいは継時的に共起する{指さし}によって何らかの制限を受 ける傾向は世界中の手話言語に共通して見られる.しかし,空間のある位置ではなく手話単語の {男} を指さす {指さし/男} は日本手話に特有の表現であり,従って{男}の構造と併せて意味論的に,統語論的に分析することで引き算的に{指さし}の言語的な性質が解明されるだろうとの予測が立つ.本論は統語論的分析に先立っての明示的な意味論的分析である. (手話単語の表記法は神田 (1994) の案に従う.)

 

手話教育の実際

神田和幸(中京大学)・加藤勝由(中京大学オープンカレッジ)

中京大学オープンカレッジでは1995年春期から手話講座を開設しているが,新しく考案したカリキュラムに従い,入門クラス,実践クラス,クラスを運営している.1996年夏をもって一連の講座の第1期修了生が誕生し,新たな局面へと展開するため,これまでの実践を報告する.入門クラスでは手話が自然言語であることを啓蒙し,視覚言語としての特徴や基本的文法を講習している.実践クラスでは文例の学習を基本とし,手話表現力の向上を目指す.応用クラスは手話による歌,芝居,ミュージカルなどの練習を通して,翻訳技術と文脈における表現を学習する.こうした基礎的な語学力を修得した上で会話や通訳などの現場における実際を学習していこうというものである.

 

手話学習のためのマルチメディア型教材開発

寺内美奈(職業能力開発大学校)・長嶋祐二(工学院大学)

近年,各種メディアを通して手話への関心が高まり様々な形態の手話教材が検討されている.視覚言語である手話を学習する場合に,重要となるのが3次元空間内での情報伝達方法の獲得, さらに非手指信号などを付加することで,適切に文章の統語構造に対応した調動の習得である.既存の手話学習のための教材では,主に辞書型である基本的な単語の調動のみが説明されていることが多く,語の屈折については述べられていることは少ない.また,収録されているビデオ映像や語彙数や文章数に限りがある.このような従来の学習方法における問題点を改善するため,我々は現在,パーソナルコンピュータによるマルチメディア型の手話学習支援システムの構築を行っている.本報告では,健聴の初級者を対象とした学習システムを構築するにあたり,開発中の手話電子化辞書を応用したより効果的な手話学習を行う方法について検討を行ったので,報告する.

 

電子化辞書による手話アニメーション伝送に関する検討

亀井了・長嶋祐二(工学院大学)

ネットワーク時代の到来といわれる最近,インターネットなどのキーワードを中心に,マルチメディア技術を駆使した通信環境が徐々に整備されつつあり,多くの人々がそのサービスを利用し始めている.しかし,聾者とのコミュニケーションを考慮したサービスは,まだ確立されていない.本報告では,著者らが現在構築中の日本語手話電子化辞書の重要な機能のひとつである,3 D手話アニメーションの自動生成機能を用いることにより,インターネット上で少量のデータ伝送で手話通信が行えるシステムについて述べる.

 

手話の時空間構造における特徴抽出

田中裕史・市川熹(千葉大学工学部情報工学科)

手話の時空間構造における特徴を,工学的に捜し出して抽出しようと試みた.手話には手指の形や動きのほかに,表情やボディーランゲージも含まれるが,敢えて手話の手の動きだけを用いて解析を行なった.時間的,空間的な要素それぞれに注目して解析し,いくつかの手話の特徴と思われるものを抽出することができた.この特徴を用いることで,機械による手話認識システムの意味理解部分への手がかりとなることが期待できる.

 

キーワードスポッティングと共起関係を利用した手話文理解

勝田亮・田中裕史・林誠士・市川熹(千葉大学工学部情報工学科)

工学的視点から手話文理解の可能性を検討している.対話型自然言語である手話には,実時間理解可能な形での構造があるとの仮説に立ち,状況情報の制約条件下でのキーワードの組み合わせ(共起)情報を用いた文理解方式を提案する.文におけるキーワードのスポッティングには,手の上下左右前後の大きな動き(大局的情報)を特徴パラメータとする連続DPマッチング方式を 適用した.医療現場を想定したキーワード92語72文の実験に対し,約70%の認識率が得られた.

 

日本手話における視線について

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

手話言語を構成する要素のひとつである視線について,日本手話の発話コーパスから記述した.視線をその方向や動きによって9種類に分類し,それらの現れる位置が決まっていることを示した.また,特定の視線とその現れる位置ごとに,その果たす役割と機能について考察した.

 

日本手話の指導にディレクトアプローチを考える

土谷道子(社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター)

日本手話は,音声言語としての日本語と違う言語である.日本手話を第2言語として指導する場合,目標学習言語,すなわち日本手話を用いて指導する方法を用いた方がのぞましいと考える.その方法は,ディレクトメソッドまたはディレクトアプローチと呼ばれるが,日本手話を習得させるためにどのように指導すべきかについて,実践をまじえて考えてみる.

 

手話教育の技法

神田和幸(中京大学)

現在全国各地で実施されている手話講習会は言語教育の観点に立つと問題点が多い.またナチュラルアプローチによる手話教育も一部で試行されているようだが,この方法が手話教育にそのまま応用できるかどうかには疑問がある.日本での英語教育の経験を元に,言語学,言語教育理論を検証し,さまざまな言語教育技法を取り込みながら,1つの教育システムを構築し,現在それを試行している.実際の現場はポスターセッションで紹介し,本論ではその理論的背景を考察する.

 

口話併用手話の持つ非手指動作習得状の弊害について

赤木俊仁(日本手話学会会員)

最近日本手話における言語学的な分析が進められ,多くの文法構造が明らかにされている.その中で非手指動作の働きの重要さも明らかにされている.日本手話を勉強することは,単語等の習得の他に,この非手指動作の習得も大きなポイントになる.しかし,現在非手指動作の研究はまだ始まったばかりで,現在のところ,一部の非手指動作について報告されているが,その他については,未だに未解明のままである.非手指動作を身につけるためには,どうするべきか.非手指動作の資料が少ない段階ではあ るが,ある健聴者の手話を例を基に,非手指動作の習得について考察する.

 

聾児の言語発達

小田候朗(国立特殊教育総合研究所)・森井結美(奈良県立ろう学校)・鷲尾純一(国立特殊教育総合研究所)

本研究では聾の両親のもとで育つ一人の聾児を対象として,その手話を中心とした言語発達と多様なコミュニケーション手段の使い分けについて考察した.その結果,本児が手話の発話をはじめとする様々な面で発達的変化を見せていることと,現在本児が身につけている様々なコミュニケーション手段を,相手によって使い分ける様子が確認された.

 

手話単語辞書の補完と日本語から手話への機械翻訳について

徳田昌晃・奥村学(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)

変換方式の機械翻訳システムでは変換元と変換先の言語の機械可読辞書が必要である.日本語から手話への機械翻訳の場合,変換元の日本語の機械可読辞書は現実的な使用に耐えうるものが存在するが,変換先の手話は600語〜数千語程度の規模の辞書しかない.本研究では日本語辞書を使って手話単語辞書を補完し機械翻訳に使用する手法を提案する.この手法で,単純に変換できなかった単語のうち,約70%を補い,入力文に対して95%の形態素が変換できる見込みがついた.

 

手話伝送システムS-TELにおける通信回線に関する基礎検討

黒田知宏・佐藤宏介・千原國宏(奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)

現在各家庭まで敷設されている電気通信ネットワークは音声の伝送を主目的としているため,これらから受ける恩恵には健聴者と聴覚言語障害者(以下,聴障者)との間で大きな差が生じている.そこで,本研究では,各種動作計測技術とVR技術を利用し,遠隔地間での自然な聴障者同士のコミュニケーションを支援する,手話伝送システムS-TELを開発している.S-TELでは,装藩型デバイスを用いて手話を座標情報として入力,転送し,出力側で三次元CG を用いて再現することで,プライバシーの侵害を防ぎながら,手話の持つ感性情報を損なうことなく,手話の自然なコミュニケーションを可能にしている.本報告では,S-TELで手話を実時間伝送する際の必要データ量,及び利用可能な通信回線について述べる.

 

手話アニメーションによる情報提供

池田尚司・大木優・崎山朝子・佐川浩彦・竹内勝(日立製作所中央研究所)

話は聴覚障害者にとって自然なコミュニケーション手段の一つである.聴覚障害者への手話による情報提供を進めるため,手話をアニメーションで表現することを支援する,手話アニメーション編集ツール「Mimehand」を開発した。手話単語見出しのキー入力によって文の骨格を作り,マウス操作によって表情などを付加したり,手の動きの細かい部分を変更して,読み取りやすい手話アニメーションを作成する。話し言葉である手話を推敲することができる「手話のワープロ」として手話アニメーション編集ツールを用いることにより,手話アニメーションを自治体や公共施設での情報提供や,テレビなどでの緊急情報の伝達などに応用することが可能になる。

 

パソコンを使った手話学習システムの実際

竹村茂(筑波大学附属聾学校)・平川美穂子(富士通)

「手話一日本語辞書」の手順について長らく検討を重ねてきましたが,富士通のCD-ROM手話ソフト(96年3月リリース)で実現することができました.手話を「片手を使う手話」「両手が同じ形の手話」「両手が違う形の手話」に分類した上で,28種の手形を手掛かりに候補手話を最大9語に絞り込みます.9語は,画面上に小さい動画で同時表示できる最大数です.必要に応じて動きや位置のパラメータも加えます.収録手話は約400語ですが,今後は数千語の手話を包括できるシステムを目指しています.また,パソコンソフトのインタラクティブ性を生かし,初心者向けの手話学習システム(「手話へのステップ」)を構築しました.

 

手話対話コーパス開発の必要性とその課題:音声認識研究の反省を通して

市川熹(千葉大学工学部情報工学科)

音声対話インターフェースの研究開発は長い歴史あるにもかかわらず未だ本格的実用に耐える技術開発されていない.これは,対話音声と書き言葉の本質的違いを十分に認識しないまま開発進められてきたためと思われる.この反省に立ち,同じく対話型自然言語である手話の研究方法について議論を行なう.対話言語と書記言語の本質的相違点に注目し,対話言語としての手話コーパスの開発の必要性を提案、実現に向けて検討すべき幾つかの課題を示す.

 

手話でいかに会話が進行するか?:発話交替における発話の重なりを中心に

鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター)・小川珠実(横浜国立大学教育学部)

本研究は,手話における会話の進行の特徴を明らかにする目的で,発話の重なりを中心に,時間的な分析を行った.分析対象は,ろう者2人による自然な対話である.分析の結果,発話の重なりが,(1)広範囲に見られること,(2)その生起位置があいづち時だけでなく,発話交替時においても見られること,(3)しかも,発話の実質的な部分を含んでいることが明らかになった.それにより,発話の重なりが手話の会話の進行において何らかの機能を担っていることが示唆された.最後に,手話の会話研究における問題点について議論した.

 

認知科学的手法による手話読取特性の検討

市川優子・福田忠彦(慶応大学)・関 宣正(東京都心身障害者福祉センター)

認知実験,(1)アイカメラを用い,手話表現の何処を見ているかを調べる,(2)同内容の「非日本語対応手話」と「日本語対応手話」の認知に及ぼす影響を比較する,(3)ゲート法により簡単なキャリアセンテンス中の手話単語をどの時点まで見ると理解出来るかを調べる,の3種類を行い,ろう者,手話通訳者,手話学習初心者を比較し,3者間に明らかな差異があることが観察された.

 

「手話」 の定義とその与える影響について

長谷川 洋 (筑波技術短期大学)

 日本における「手話」に対する定義やその位置付けは,聴覚障害者の社会的な地位や個人のアイデンティティともからむ問題であり,その与える影響は少なくない.手話を聴覚障害者に対する社会的な抑圧を跳ね返す武器として使おうという動きもあり,学問と運動との関連も無視できない.本稿では,これまでの言語学者による「手話」の定義やその位置づけが聴覚障害者の世界に与えた影響を考察し,言語学者は研究において,その与える影響についての配慮が必要なことを示す.


日本手話学会第21回大会

日程:1995年9月9・10日

場所:中京大学・名古屋学舎

 

【研究発表】

離島に住む成人聾者の身振りについて

武居渡(筑波大学大学院)・鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

離島に住む修学経験のない成人聾者の姉妹2名(70歳・67歳)の使用していた身振りを記述し,その分析を行った.その結果,以下の事が明らかになった。第一に,指さしが身振り全体の約30%を占め,それが示す範囲は,単に具体物に限らず,その場にない抽象的な事象までも含んでいた.第二に,手話言語がそうであるように,手型が,非連続的ないくつかのカテゴリーを形成し,これを用いて現実の事象を表していた.

 

入所施設における聾者と聴者の相互行為 –聴覚障害者専用老人ホームにおける観察調査-

西野恵美子(明治学院大学)

全国に四施設ある聴覚障害者専用老人ホームの一つ,あすらや荘.そこにクラス入所者の”ことば”は多種多様であり,日本手話の通じる人は多く見ても3分の1程度しかいない.一方,施設職員は皆聴者で,シムコムができる職員はいるが手話を話せる職員は一人もいない.このような状況下で観察された相互行為事例を通し,聾者と聴者のコミュニケーション上の課題,手話を習得していない聾者の”ことば”について考察する.

 

手話工学:日本手話電子化辞書研究の現状

加藤雄士(筑波技術短期大学)・神田和幸(中京大学)

 

日本手話電子辞書データベースの分析

神田和幸(中京大学)・中 博一(聴力障害者情報文化センター)・加藤勝由(中京大学オープンカレッジ)・後藤昭夫(サインメディア)

 

日米手話テキストの比較

赤城俊仁(日本手話学会会員)

アメリカの手話テキストの内容を日本の手話テキストと比較すると,かなり進んでいます.進んだ手話の言語学的研究を基礎に作成されているアメリカのテキストと日本の手話テキストとを言語学的な視点から比較検討をしながら,アメリカの手話テキストを紹介したいと思います.

 

手話の文末における動きの分類

関 宜正・馬屋原邦博・塚田賢信(東京都心身障害者福祉センター)

 

指手骨格モデルを用いた指文字認識

荻原芳彦・堀口進(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)

近年,人と機械の新しいコミュニケーション手段として身体動作を用いたインターフェースに関する研究が活発に行われている.情報伝達手段に身体動作を用いる事は,人間の意思を自然かつ直接的に機械に伝える事を可能とする.テは身体動作の中でも最も代表的な効果器であり,外界に対して積極的に働きかける最も友好的な手段を提供する.手を用いたインターフェースを実現するためには,複雑な3次元形状を呈する手形状の認識が必須となる.本報告では,手形状入力装置を用いた指文字認識に関する手法について検討する.まず,手形状入力装置から得られる手指の関節角を直接用いて作成した標準登録パターンを用いた手法では個人差による影響が大きくなることを示す.次に,入力データをまずコード化し,その特徴を考慮して標準登録パターンを作成することより,個人差の影響をある程度吸収する事が可能となることを示す.更に,骨格モデルを考慮して指の位置関係の情報追加を行って認識を行うと,単独一位認識率を向上させることができることを明らかにする.

 

日本語から日本手話への機械翻訳に関する検討

徳田昌晃・奥村学(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)

計算機で扱いやすい手話の一次元的な表記法「手話表記法」を提案する。この手話表記文で記述した対訳コーパスと手話単語辞書を作成し,これらを使った日本語から手話への変換手法を検討する.日本語に比べ,手話単語は非常に少ないため,適切な単語が手話単語辞書に存在しなかったり,変換の際に日本語単語の曖昧性で変換先の手話の単語を決定できない問題が発生する.そこで日本語辞書の語釈文を使って日本語単語の語義を決定し,手話単語を選定する方法を検討する.

 

手話学習システムの入出力インタフェースに関する一考察

寺内美奈(職業能力開発大学校)・長嶋祐二(工学院大学)

手話は聴覚障害者が確立したコミュニケーション手段の一つである.従来の手話の本では単語レベルの記述が多く,このため初学者は文章表現でも単語の羅列のみで調動し非文を表出してしまう.これは,文脈により語の屈折 (調動の変化)が生じることに気づかないためである.このような間題を考慮し,我々は手話学習支援システムの構築を行っている.本報告では,本学習システムの基本構成ならびに入出力インタフェースの基本設計概念について検討する.

 

手話の大局的な調動認識に関する基礎的検討

藤井昌紀・亀離了・長嶋祐二(工学院大学)

近年,手話の関心が高まり,工学的な側面からの研究も年々増加している.我々は手話を非接触型で認識する方法について研究を進めている.本報告では,手話の大局的な動きを表すV形態と空間関係を,射影された2次元の時空間画像と時間遅延型ニューラルネットを用いて認識をする方法について検討を行う.また,片手のみの手話単語について基礎的な実験を行ったのでその結果を示す.

 

【公開シンポジウム】

自然言語の意味論の最近の動向:言語の意味の総合的理論に向けて

白井賢一郎(中京大学教養学部・大学院情報科学研究科)

 

計算言語学の立場から意味論を考える

白井英俊(中京大学情報科学部)


日本手話学会第20回大会

日程:1994年7月23・24日

場所:工学院大学・新宿校舎

 

【特別講演】

チンパンジーの認知発達とコミュニケーション

1976年からアイという名のチンパンジーを主要な対象として,チンパンジーとヒトの認知機能を比較する研究をおこなっている.その一方,1986年からは,西アフリカのギニアとコートジボワールで,野生チンパンジーの道具使用と文化にかんする野外調査を継続している.こうした研究から,チンパンジーの認知機能がきわめてヒトと似ていることがわかった.ただし傾きの知覚や顔認知など両者で異なる認知機能もある.認知機能を野生チンパンジーの道具使用から検討すると,こうした認知機能の発達には長期にわたる親子のきずなが重要なことなどもわかってきた.チンパンジーの認知発達とコミュニケーションを考えるために,比較認知科学という視点からおこなってきた従来の研究の概要を述べる.ヒトの認知機能がどのような進化的背景をもっているかを探るために,ヒトと最も近縁な種であるチンパンジーの認知機能をさまざな角度から検討してきた.ヒトとチンパンジーは約500万年前に分岐した最も近縁な関係にある.

 

【研究発表】

中間型手話より日本語に忠実な手話システムの開発

長谷川浩(筑波技術短期大学)・矢沢国光(足立聾学校)・田上隆司(作新学院女子短期大学)

手話はろう者を中心に用いられてきたが,中途失聴・難聴者も同じく聴覚障害をもち,視覚的コミュニケーション手段である手話の必要性は変わりない.しかし中途失聴・難聴者は日本語を基盤としているので,音声語との対応が低い場合は表現しにくく,読み取りにくく,また覚えにくい.そこで我々は5年前から中間型手話より更に日本語に忠実な手話システムの開発を行ってきた.その概要を表現法,品詞などに分類して報告する.

 

聴覚障害者のコミュニケーション手段の使用と福祉サービスの利用に関する実態調査

福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所),上久保恵美子(早稲田大学大学院)

現在の日本社会における聴覚障害者のコミュニケーション手段の使用と福祉サービス利用に関して,先天性の重度の聴覚障害者の集団を対象にして,郵便によるアンケート調査を行った.得られた有効な回答1696通を対象にして分析したところ,次のことがわかった.(1)コミュニケーションの相手によって,異なったコミュニケーション手段を用いていた.(2)音声言語でのコミュニケーションが要求されている場面では,筆談を用いているものも多かった.(3)コミュニケーションの手段として,手話が最も有効であり,続いて指文字・読話・補聴器の順に有効性が高いという判断がなされた.(4)情報補償の手段として,手話だけでなく文字による保証への希望も同様に多かった.

 

日本手話の携帯構造

神田和幸(中京大学)・長嶋祐二(工学院大学)・中博一(聴力障害者情報文化センター)

日本手話単語の一般的形態構造について,1つの仮説を提案.N形態とV形態および動詞スロット,フィラという概念を創案して,一般的形態記述モデルを示した.

 

手話の言語発達評価について

小田候朗(国立特殊教育総合研究所)

我が国の聴覚障害児の言語発達評価に関する研究を概観し,その主要な観点を整理する.さらに近年のアメリカにおける手話の言語発達評価を紹介し,我が国での手話の言語発達評価研究の今後を展望する.

 

言語構造における日米手話の比較

土谷道子(日本ASL協会)

日本とアメリカの聾者が使用する手話には,それぞの国柄,すなわち文化の違いや生活習慣,歴史などの違いが見いだされる.しかし,日米の聾者はどちらも,コミュニケーションのチャンネルに資格を利用し,意味の伝達に身体を使うというコミュニケーション戦略を用いている.日米両国の手話表現や言語構造には,どのような共通性,またはどんな相違性がみられるかを考察する.

 

指さしの文法化家庭:日本語手話,修得,ホームサインの分析を通して

鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

日本手話の文末の指さしについて

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

日本手話の文末の指さし(pointing/indexing)は,接語(clitic)であり,他動詞構文において主語と一致する(鳥越,1991b: 市田,1994).本論では,接語は主語と一致するという見方が,一致同士の受動文,自動詞構文,無一致動詞の受動文,関節受動文,補文をとる構造など,他動詞構文以外のさまざまな構文についても有効であることを示した.また,鳥越(1991b)が主語以外の名詞句に一致するとした例についても再検討した.

 

新しい手話の音韻論的検討

木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

従来行われている新語の造語において,日本手話の音韻体系の存在が無視されていることを指摘する.また,語彙化する過程での音韻的変化を検討し,造語における写像性(iconicity)の役割を主張することに問題があることを指摘する.

 

サーフェイスモデルによる3D手話アニメーションの描写

藤森憲男・長嶋祐二・長嶋秀世(工学院大学)

近年,聴覚障害者の情報伝達手段の一つである手話への関心が高まり,手話の習得を志す健聴者も年々増加している.我々は,手話学習の補助や県庁舎と聴覚障害者間のコミュニケーションの円滑化を目的とした.パーソナルコンピュータによる手話電子化辞書システムの構築を目指している.本文では,システムにおける手話調動の表示部である従来の3D手話アニメーションシステムをさらに改良したのでその結果について報告する.

 

時系列データを用いた手話アニメーション生成方法の検討

崎山朝子・佐川浩彦・大平栄二・池田尚司・大木優(日立製作所中央研究所)

本研究の目的は,3次元コンピュータグラフィックス(3次元CG)を使い,読みやすい手話を簡単に生成することである.著者らは簡単な手話生成を実現するために,編集が楽な3次元CGを使う.また,読みやすい手話アニメーションを生成するために,データグローブを用いて手話の手動作データを収録する.本報告では初めに,データグローブを使う利点を分析する.次に,手話アニメーションの表示が小さい場合でも,手動作がはっきりわかるようにするために開発した,2重消点遠近法について述べる.

 

日本手話電子化辞書試作Ⅱ

神田和幸(中京大学)・中博一(聴力障害者情報文化センター)福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)

日本手話電子化辞書をCD−ROMに搭載した試作品.日本語と手話を双方から引くことができ,確認用に手話単語の動画像が掲示される.音声的記述データをデータベース化し,形態情報,文法情報などがテキストとして掲示される.

 

教育用手話電子化辞書の試作

加藤雄二・内藤一郎・安東孝治(筑波技術短期大学)

手話は,聴覚障害者同士ばかりでなく,聴覚障害者と県庁舎のコミュニケーション手段であり,近年,学習する人も増えつつある.しかし,手話が視覚的な情報伝達手段であるために,これまでのイラストを利用した学習スタイルは,手話を学習するうえでは必ずしも効率的であるとは言えない.日本手話の学習を効率化するために情報処理の技術を応用した手話電子化辞書を試作し,辞書の検索方法や表示方法などを検討した.手話の掲示は,コンピュータで制御された動画像で行ない,日本語からの検索や手の形態からの検索などの機能を作成した.しかし,現システムは,実用にするためには,使い勝手や理解しやすさなど,まだ解決すべき問題点も多く,これについても報告する.

 

パソコンを使った手話検索システムの研究

竹村茂(筑波大附属聾学校)・平川美穂子(富士通)

現在の日本の手話の時点は,手話の日本語ラベルから手話の形を検索するシステムになっています.手話を手の形から検索して,その手話の意味や日本語ラベルを知るための辞書が必要です.しかしストーキーのように手話の形を厳密に記号化して,その記号によて手話の検索をしようとすると,まず手話の記号について熟達する必要が生じて,辞書の使い勝手がきわめて悪くなります.本研究は,指文字を理解している程度の初心者でも,手の形から手話を手軽に検索できる辞書を書籍及びパソコンのデータベースシステムとして考案してみたものです.

 

動的技術教育用手話データベースの試作

村上裕史・高橋秀知・清水豊(筑波技術短期大学)

聴覚障害者の主なコミュニケーションの方法である手話には,日常会話では豊富な表現方法を持っているが,専門教育で使用するような語彙は少ない.そこで,教官と学生が共通の表現をもち,教育を円滑にするために,データベースシステムが必要となった.従って,電子・情報工学関係の専門用語を,動画表示の可能なパソコン・システムを利用して,手話データベースを試作した.その試作品について報告する.

 

健聴者のための手話教育システム構築のための基礎検討

寺内美奈(職業能力開発大学校)・吉永喜美子(雙葉高等学校)・長嶋祐二(工学院大学)

近年,聴覚障害者の情報伝達手段の一つである手話への関心が高まり,手話の習得を志す健聴者も年々増加している.一般に手話を学習する方法としては,手話講習会や手話サークルへの参加,TV講座や手話の本の利用するなどがある.我々は手話を学習するための補助手段として,パーソナルコンピュータによる手話学習システムの構築を目指している.本報告では,手話学習システムを構築するにあたり,従来の手話の学習方法について調査し,本システムにおける学習目標を明確化する.また,手話を学習する上で重要である手話の調動を習得するための一機能として,以前我々が報告した液晶シャッターを用いる3D手話アニメーションを採用することについて検討する.

 

手話通訳システムにおける手動作認識方式の検討

佐川浩彦・大木優(日立製作所中央研究所)

聴覚障害者と健聴者のコミュニケーション支援を目的として,手話通訳システムの開発を進めている.本システムでは,手話の手動作をデータグローブという装置を用いて入力する.入力した手動作のパターンと,あらかじめシステムに登録してあるパターンを音声認識で一般的なDP照合を用いて認識を行う.単語数620語のパターンを用いた認識実験の結果,98.7%の認識率が得られ,本方式の有効性が確認できた.

 

手話表現の経時観察

川岸忍(堺市役所)(予稿なし)

 

日本手話における非手指動作の検証

赤木俊仁(日本手話学会会員)

 

対話型自然言語としての手話と音声

市川熹・橋戸忠久(千葉大学)

工学的立場から手話と音声とを比較検討することによって,手話を理解するシステム開発のための手がかりと,対話型の自然言語の構造を解明する手がかりと,を検索した.文の構造を決める付属語の省略や言い直しなどが多い音声を聞いても即座に理解出来き,また対話している二人の間の発話の交代が自然に行われたり,話しのポイントが簡単に聞き取れるのは抑揚の効果であると考える.対話型の自然言語である手言葉にも,同様の情報が存在するものと仮定し,その可能性を実験的に検討した.

 

日本手話における日本語借用と手話化現象:ムードの動き

棚田茂(NEC)

従来から言われて来た日本手話の談話の曖昧性を解消できると考え,手指動作だけでなく,非手指動作,口唇動作を分析した.日本手話に日本語借用があり,主に名詞,動詞の一部に用いられるとしたが,更なる手話分析の過程から導き出された日本語借用における助動詞,例えば「みたい」「らしい」などのムードについて述べる.これらの分析,仮説を基にして日本手話日本語翻訳システムを構築することを今後の課題とし,最終的には日本手話と日本語の文章の対照を行う双方向の翻訳技術の開拓を目標としている.

 

腕と手の解剖構造モデルによる手話動作のコンピュータ・シミュレーション

池原和子・安藤理子・比企静雄(早稲田大学人間科学部)


日本手話学会第19回大会

日程:1993年7月24・25日

場所:熊本県職員会館むつみ荘

 

【研究発表】

手話統語における「うなづき」「指さし」「表情」の役割

平岡 武(大阪市・フリー研究者)

 

日本手話における非手指動作(1)文法マーカー

市田泰弘・木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

日本手話における非手指動作(2)副詞的用法

市田泰弘・木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

数量表現の分析

棚田 茂(NEC日本電気株式会社 C&C応用ソフトウェア事業本部 汎用アプリケーション事業部共通基盤技術部)

 

日本手話の形態論的構造

神田和幸・大橋秀夫・足立公也(中京大学)

 

日本手話における語彙の構造と事象の焦点化 -認知言語学的分析-

鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

指文字表現(口話)における日本語借用

棚田 茂(NEC日本電気株式会社 C&C応用ソフトウェア事業本部 汎用アプリケーション事業部共通基盤技術部)

 

聾学校高等部国語科授業における手話の使用状況

栗原和弘(熊本県立熊本聾学校)

 

手話の発信速度の分析 –わたりと語の表出時間-

関 宜正・馬屋原邦博(東京都心身障害者福祉センター)

 

聴者に自発した身振りの言語学的分析

石橋佳子(東京学芸大学)・鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

日本手話の基本語彙

神田和幸(中京大学)・中 博一(聴力障害者情報文化センター)

 

日本手話の語彙に関するデータベースの開発

福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)

 

日本電子化辞書のための手話表記法に関する検討

長嶋祐二(工学院大学)・寺内美奈(職業能力開発大学校)

 

手話アニメーションの3D化に関する検討

長嶋祐二・藤森憲男・長嶋秀世(工学院大学 電子工学科)


日本手話学会第18回大会

日程:1992年7月25・26日

場所:国立身体障害者リハビリテーションセンター

 

【研究発表】

日本手話の音韻表記に関する研究

市田泰弘・木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

両手手話における手型の組み合わせについて

中博一(聴力障害者情報文化センター)

 

{男}と{女}と{人々}の構造 –日本手話形態論試論-

神田和幸(中京大学)

 

日本手話のWH疑問文について

鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

手話統語法研究への呼びかけ

平岡 武(大阪市・フリー研究者)

 

標準失語症検査の「まんがの説明」にみる手話表現の考察

関 宜正・馬屋原邦博(東京都心身障害者福祉センター)

 

第2言語としての日本手話習得過程の分析

中條晶子(東京学芸大学大学院教育学研究科障害児教育専攻)

 

離島のろう者の社会・言語調査(予報)

木村晴美・鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター)・武居渡(筑波大学)

 

手話・日本語辞典のための索引について

小田候朗(国立特殊教育総合研究所)

 

日本手話電子辞書: -Phase 1 試作-

神田和幸(中京大学)・中 博一(聴力障害者情報文化センター)・福田友美子(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)


日本手話学術研究会第17回大会

日程:1991年8月3-5日

場所:愛媛県身体障害者福祉センター

 

【研究発表】

聴覚障害者としての手話コミュニケーションを考える(※予稿なし)

岡田恒美(愛媛県聴覚障害者協会)

 

日本手話の造語辞について(2)

小田候朗(国立特殊教育総合研究所)

 

日本手話(Japanese Sign Language)における動詞の分類について

鳥越隆史(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

手話教授法に関して

木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

手話講習会で何を教えるか 〜社会言語学的考察〜

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)・大杉豊

 

第2言語としての日本手話(JSL)習得場面における誤用の分析

中條晶子(東京学芸大学教育学研究科)

 

手話単語要素の利用度

平岡武(大阪市・フリー研究者)

 

語と語のつながりについて(1)

川岸忍(堺市中福祉事務所)

 

聴覚障害者と手話との関わりについて

福崎裕子(京都市聴覚言語障害者センター)

 

左手(非利き手)による手話表現の考察

関宜正(東京都心身障害者福祉センター)

 

【講演】

手話と聾教育(※予稿なし)

伊東政雄(TC研会長)

 

手話と社会生活(※予稿なし)

米内山明宏(日本ろう者劇団)

 

【提言】

聴障者の福祉と手話施策

植村英晴(厚生省福祉専門官)


日本手話学術研究会第16回大会

日程:1990年10月6・7日

場所:国立身体障害者リハビリテーションセンター学院

 

【研究発表】

電子化辞書構築を目指した手話分類

藤野淑子・鎌田一雄・薄井幸江・中山忠男(宇都宮大学 工学部 情報工学科)

 

パーソナルコンピュータを利用した手話検索法についての試案

中博一(中京大学)

 

日本手話のClassifier

市田泰弘・大杉豊(名古屋文化学園言語訓練専門職員養成学校)

 

手話単語の同定について

川岸忍(堺市福祉事務所)

 

両親聾の聾児の手話獲得過程

鳥越隆史(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

 

聴覚障害者の聴覚障害者集団への参加と手話に対する意識について

横山ゆりか(綾瀬聾学校)

 

日本手話の造語辞について

小田候朗(国立特殊教育総合研究所)

 

日本手話作業用基本語彙

中博一・神田和幸(中京大学)

 

職業訓練専門用語手話の開発

田中弘幸(国立職業リハビリテーションセンター専門用語手話開発グループ)

 

手話直接教授法の基本原理と授業の実際 –ナチュラルアプローチによる実践例-

市田泰弘・大杉豊(名古屋文化学園言語訓練専門職員養成学校)

 

健聴失語症者の手話学習 -文献考察-

関宜正(東京都心身障害者福祉センター)

 

【パネルディスカッション】

UNLOCKING THE CURRICULUMをめぐって(※予稿なし)

パネリスト 神田和幸(中京大学)

      森壮也(アジア経済研究所)

      矢沢国光(足立ろう学校)


日本手話学術研究会第15回大会

日程:1989年10月14・15日

場所:中京大学・名古屋学舎

 

【研究発表】

手話機械処理と手話言語学

鎌田一雄・落合克幸・藤野淑子・吉田忠城・薄井幸江(宇都宮大学 工学部 情報工学科)

 

「手話の同時性」における「利点」と「問題点」 -ある事例の分析から,帰納的に考える-

吉沢昌三(栃木県立聾学校)

 

アメリカ手話の代名詞

神田和幸(中京大学 教養学部)

 

手話教育について –直接教授法をめぐって-

市田泰弘・大杉豊(名古屋文化学園LSC語学教育センター)

 

「手話・日本語辞典」の試み

竹村茂(筑波大学附属聾学校)・平美穂子(翻訳業)

 

手話絵入りテキストの試み

平岡武(サークル「くまた」)

 

脳損傷聴覚障害者に対する手話障害診断テスト(試案)

関宜正(東京都心身障害者福祉センター)


日本手話学術研究会第14回大会

日程:1988年8月20・21日

場所:戸山サンライズ

 

【研究発表】

「島」の手話表現の変化過程の考察

関宜正(東京都心身障害者福祉センター)

 

基本語いの地域的変異刑と分散パターン

神田和幸(中京大学)・中博一(シャープシステムサービス)

 

時制について

川岸忍(手話サークル かめのこ)

 

情報処理用語対応手話の作成に関する考察 <TECHNICAL SIGNS の言語的特性を中心にして>

堺晴雄((株)インテック)・岡本正純(東京都聴覚障害者連盟)

 

日本語対応手話 –教育漢字の学年別配当と漢字手話の難易度について-

伊東政雄・唯野玲子・竹村茂(筑波大学附属聾学校)・平美穂子

 

パーソナルコンピュータによる日本語・手話変換の検討

鎌田一雄・奈良岡孝寿(宇都宮大学工学部情報工学科)・薄井幸江((株)東北ユーザック)

 

SIMULTANEOUS COMMUNICATION IS NEITHER –自然言語の必要性について-

神田和幸(中京大学)

 

成人聴覚障害者における口話・手話・指文字・筆談等に関する意識調査(その一)

吉沢昌三・肥田博・藤田均子(栃木県立聾学校)

 

小学生の手話学習について

松宮隆(三重 小川ことばの教室)

 

二つ以上の単語の手話表示の間隔動作の分析

伊東政雄(筑波大学附属聾学校)

 

接続詞・連連語などにおける造語原則について

宇賀神尚雄・吉沢昌三・森明子(栃木県立聾学校)・田上隆司(作新学院・女子短期大学)・立野美奈子(栃木県立岡本養護学校)

 

日本の手話(JSL)の統語構造における線形性について

鳥越隆史(広島大学 教育学部)


日本手話学術研究会第13回大会

日程:1987年8月29・30日

場所:宇都宮市・青年会館

 

【研究発表】

日・韓手話の文法的特徴の比較

田上隆司(作新学院・女子短期大学)・鄭 春恵(韓国・大邱栄話学校)

 

手話教育をささえるもの

松宮隆(小川ことばの教室)

 

手話表現形態と社会的背景の関係

伊藤政雄(筑波大学附属聾学校)

 

聴覚障害者と情報コミュニケーションの質・量 —手話通訳の在り方—

野沢克哉(東京都心身障害者福祉センター)

 

Sign For Computing Terminologyの分析的研究

岡本正純(東京都聴覚障害者連盟)

 

パーソナルコンピュータによる指文字の分類方法について

鎌田一雄・浅井司郎(宇都宮大学工学部情報工学科)・瀬川仁(東北日本電気(株) )

 

『私たちの手話』等を聾学校やテレビ放送等で使用する時の問題点と対策

吉沢昌三・肥田博(栃木県立聾学校)

 

算数・数学用語対応手話の作成に関する一考察

石黒昌道(栃木県立聾学校)

 

手話の基本語彙について

神田和幸(東海産業短期大学)

 

否定について

川岸忍(手話サークルかめのこ)

 

今晩のひとつ覚え —中級用教材の試み—

平岡武(大阪聴力障害者協会)

 

『わたしたちの手話』の中に見られる日本対応の傾向

森明子(栃木県立聾学校)・田上隆司(作新学院・女子短期大学)

 

【シンポジウム】

テーマ「手話の現状と発展方向」

シンポジスト 伊東政雄(筑波大学附属聾学校)

       野沢克哉(東京都聴力障害者センター)

       矢沢国光(東京都立足立聾学校)

 

       吉沢昌三(栃木県立聾学校)


日本手話学術研究会第12回大会

日程:1986年8月30・31日

場所:仙台市

 

【研究発表】

現在の日本手話で不足している語彙の造語について —本年次大会の手話通訳のための暫定案—

坂本幸(東北大学・教育学部)

 

伝統的手話の格表現 —格助詞「を」の機能に対応する表現—

小田候朗(国立特殊教育総合研究所・聴覚言語障害教育研究部)

 

日・韓手話の文法的特徴の比較

田上隆司(作新学院・女子短期大学)・鄭春恵(韓国・大邱栄話学校)

 

談話としての手話の特性 —トピック導入における場面の設定およびトピック転換における橋渡し的要素—

堀越喜晴(筑波大学・大学院文芸言語研究科)

 

サットン手話文字の研究(Ⅰ) —日本手話への応用を求めて—

加藤三保子(金城学院大学・大学院文学研究科)

 

指文字の改善について

浜津平一(国立久里浜養護学校)・平美穂子(筑波大学・大学院心身障害学研究科)

 

データベースにみる最近の手話研究の動向(Ⅱ)

高橋隆(平安女学院 短期大学)

 

初学者のための基本手話単語

平岡武(大阪聴覚障害者協会)

 

あるグループにはいる手話語彙作成について

稲垣誠一(栃木県聾啞協会)

 

麻雀用語の手話表現

関 宜正(東京都心身障害者福祉センター)・小海秀純(東京都ろうあ者厚生寮)・岡本正純(東京都)

 

漢字対応手話の作成と利用

宇賀神尚雄(栃木県立富屋養護学校)

 

手話単語のゆれについて

川岸忍(堺市手話サークルかめのこ)

 

手話発信と手話通訳における省略と変形

肥田博・吉沢昌三(栃木県立聾学校)

 

【会議報告】

アメリカ手話研究の動向 —手話研究の理論的諸問題会議に参加して—

神田和幸(東海産業短期大学)

 

【解説講演】

手話とコンピュータ

田村進一(大阪大学・基礎工学部)・河合秀夫(大阪電気通信大学 短期大学部)

 

【シンポジウム】

『日本語対応の手話をめぐって —シンポジウムの背景—』

田上隆司(作新学院 女子短期大学)

 

日本語対応手話の必要性

玉谷市太郎(日本放送協会)

 

日本語対応手話の言語的特徴

竹村茂(筑波大学附属聾学校)

 

日本語対応手話における指文字

浜津平一(国立久里浜養護学校)

 

聴覚障害者の立場から見た現行手話と日本語対応手話

河合洋祐(埼玉県ろうあ協会)

 

通訳者の立場から見た現行手話と日本語対応手話

山城秀生(社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター)


日本手話学術研究会第6回大会

日程:1980年8月9・10日

場所:東京

 

【研究発表】

手話と音声語の発信所要時間の比較研究 —3の1—

吉沢昌三(栃木県立聾学校)・小野則雄(栃木県立聾学校)

 

様子を表す手話について

川岸忍(手話サークルかめのこ)

手話においては,手話独自の単語の分類法があるのではないかと考え,手話の表す意味から単語をみてきた.前回は,「運動を表す手話」について発表を行ったが,今回は「ようすを表す手話」について考えてみた.「ようすをあらわす」とは,人物または物体等の状態,性質,属性および「運動」のようすを表すものと考えた.岩する,音声言語でいうところの形容詞,副詞,形容動詞などに相当すると考えてもよいだろう.

 

アメリカにおける手話研究の動向:言語構造の観点から

本名信行(金城学院大学)

 

手話の意味/統語構造化規則(2) —空間的表現について—

田上隆司(宇都宮大学附属養護学校)・立野美奈子(宇都宮大学附属養護学校)・森明子(栃木県立聾学校)

 

手話の複合語の造語法について

田上隆司(宇都宮大学附属養護学校)・立野美奈子(宇都宮大学附属養護学校)

 

聴覚障害幼児の指文字による言語学習について

前田芳弘(東京都立足立聾学校)

 

TCの理念

松宮隆

 

TCにおける手指法原則の若干の問題について

矢沢国光(東京都立足立聾学校)

 

ろう教育における英語教育の改革試案

神田和幸(目白学園女子短期大学)

 

学会・高等教育機関等で使用される専門的用語の手話化の試み(2)

野沢克哉(東京都心身障害者福祉センター)伊東政雄(筑波大学附属聾学校)

これは昨年に引き続いての研究である.昨年は言語面の専門的用語の手話化に重点を置いたが,今回は社会福祉面の専門的用語の手話化を試みた.

 

手話表現における口唇動作に関して

伊東政雄(筑波大学附属聾学校)

 

【記念講演】

音声情報を伝達する補助手段の多様な可能性

比企静雄(東北大学・電気通信研究所)


手話学会予稿リスト

日本手話学術研究会第4回大会

日程:1978年8月13・14日

場所:宇都宮市・くろかみ荘

 

【研究発表】

動物名の手話語彙とその造語形式

田上隆司(宇大附養)・宇賀神尚雄(1栃木県教委)(予稿なし)

 

語彙の類似性についての比較研究

神田和幸(目白女子短大) (予稿なし)

 

新しい手話の創造に関する試案

伊藤政雄(筑波大附属ろう)(予稿なし)

 

私にとって手話とは —理論化の中心に心を—

野沢克哉(東京都心障センター)(予稿なし)

 

音声語と手話との対応関係 —独話資料による—

関宜正(東京都心障センター)(予稿なし)

 

日本語の形態素と同時法手話の形態素

矢沢国光(足立ろう)・前田芳弘(足立ろう)(予稿なし)

 

日本の手話の特性 —アメリカ手話との比較—

小川再治(東京学芸大)(予稿なし)

 

ろう幼児の母子相互交渉について —身振り表現を中心として—

冷水来生(東京大)(予稿なし)

 

ろうの両親をもつ高度聴覚障害児の身振語について

坂本幸(東北大)(予稿なし)

 

手話における品詞について

川岸 忍(かめのこ手話サークル)(予稿なし)

 

手話の品詞について

田上隆司(宇大附養)・立野美奈子(宇大附養)・森明子(栃木県立ろう)(予稿なし)

 

手話における並列と所有の表現について

田上隆司(宇大附養)・吉沢昌三(栃木県立ろう)(予稿なし)

 

手話の語順について

田上隆司(宇大附養)・森明子(栃木県立ろう)・立野美奈子(宇大附養)(予稿なし)

 

手話の言語的特性 —場の表現と主体的表現をめぐって—

竹村茂(筑波大附属ろう)(予稿なし)

 

手話のシンタックス

田上隆司(宇大附養)・森明子(栃木県立ろう)・立野美奈子(宇大附養)(予稿なし)

 

【講演】

アメリカの手話とろう生活

本名信行(金城学院大)


令和元年(2019年)5月20日 更新