2021年2月2日 更新


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日本手話学会第30回大会

日程:2004年6月5・6日

場所:中京大学・八事学舎

 

【研究発表】

手話の音素をキーワードとした手話・日本語辞書システムの試作

尾崎保紀(豊田工業高等専門学校 情報科学専攻)・木村勉(豊田工業高等専門学校 情報工学科)・原大介(3愛知医科大学 看護学部)・神田和幸(中京大学 教蓑部)

本研究では,手話の音素をキーワードとした手話・日本語辞書システムの試作を行ったまず,手話単語を音素に分類し,階層データモデルでデータベースを設計した.この設計したデータベースを基に,ユーザが直感的に手話の動きを入力することで,手話の意味を検索することができる手話・日本語辞書システムを試作した.

 

手話単語の時間構造に関する一考察

大高崇・西田昌史・堀内靖雄・市川熹(千葉大学大学院自然科学研究科)

手話においては,文の構造や強調などによって手話を表現する時間長が変化するという特徴があり,この点が手話の読み取りを容易にする一つの要因になっていると考えられている.こうした手話の時間的構造のメカニズムについて検討するため,先行研究ではメトロノームを用いて手話の時間構造の基準となる単位を求めようという試みがなされた.分析の結果から,手話の時間構造の単位(時間構造単位)は単語よりも細かい単位であるということが推察されたが,本研究では,この点について更に詳細な検討を行った.その結果,手話においては単語の種類によって時間構造に差異が見られ,これらは動作転換点の特徴によってある程度分類が可能であるという点が示唆された.

 

手形記号出力可能な手袋型計測装置の開発

田畑慶人(京都医療技術短期大学)・黒田知宏(京都大学医学部附属病院)・後藤忠敏(株式会社アミテック)

本稿では新しい手袋型計測装置を提案する.近年、様々な分野で動作計測装置は利用され,その中で、手袋型入力装置は重要な位置を占めている手話の中で,手は複雑な動きをする.この手の動作計測するためには,従来の手袋型計測装置では難しく,特に指同士の接触などの情報を計測することは困難である。本研究では、指の屈曲と指同士の接触情報を同時に計測でき且つ手形記号を出力できる手袋型計測装置を開発した.

 

日本手話における韻律要素の文法化について「遅さ」と「静止挿入」

市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

日本手話における韻律要素である「遅さ」と「静止挿人」が、図像性をもつ領域(CL)ではどのような意味をもち、それが、図像性をもたない領域(フローズン)にどのように引き継がれ、文法化しているかを明らかにする。

 

日本手話と日本語対応手話:手話の変種と社会的認識の差異

神田和幸(中京大学教養部)

社会言語学から見た手話の変種と、日本における手話の歴史、また手話に対する社会的認識の差異について考察学問的事実と社会認識の差について検証した.

 

アイコン性と自然言語:日本手話の「Classifier」の場合

ハロフスキー·W·J(W.J.Herlofsky)(名古屋学院大学外国語学部)

日本手話に於けるclassier構造に見られる類像的(iconic)な手の形の性質を記述・分析し、他の自然言語の類似形式と比較する。

 

日本手話における複数性の表示としての3回の反復

岡 典栄・水野 里香

日本手話において同じ表現が複数回表出されるものの中で,特に3回で現れているものに着目した.CLにおいては,1回の表出では「1回性(単数)」が,2回の反復では「2回性(複数)」が強く示唆されるために,複数性の表示として3回の反復が用いられる反復運動の起こる位置には,「移動」「固定」「交互」がある複数性には,存在の複数性と動作の複数性があり,それらは反復運動の起こる位置を引き継いで,文法化,語彙化,およびその組み合わせ,という形でフローズンに現れる.また,様態を表す局所運動を移動させることによって,様態の広がりが表される.

 

wh疑問文の類型論と日本手話

箕浦信勝(東京外国語大学外国語学部)

日本手話のwh疑問文において、疑問詞は文末に置かれる。このことが言語類型論においてどんな意味を持つのかを吟味する。

 

日本手話における語彙的アスペクチュアリティー「過程性」からみた品詞一

佐伯敦也(東京大学大学院総合文化研究科)

語彙的アスペクチュアリティーの観点から品詞について考察した。時間的展開性があることを示す「過程性」を動詞らしさの特徴とし、語ごとにその有無を調査した。すると形容詞的語彙、名詞的語彙には「過程性」がなく、動詞的語彙には「過程性」があることが確認できた。

 

聾中3生と聾学生の「語」の認知処理様式の比較

田中光子

聴者の言語認知(ひらがな無意味語の「読み」)について心理学的実験を行った(田中・川端・多羅間,2003).対象として小3生から中3生の7クラスの児童生徒と大学生を比較した.分析の結果,中1生時には既に成人大学生と等質の認知処理をすることが明らかになった.では聾者においても同じことが言えるのだろうか.同じ課題を用いて,聾学生と聾中3生を対象に検討した.

 

手話アニメーション用Java3D版Mpeg-4Face&BodyAnimationPlayerの構築

黒田知宏(京都大学医学部附属病院)・田畑慶人(京都医療技術短期大学)

手話アニメーション環境は、手話アプリケーション開発に必須の環境である。本研究では、ISOによる標準人体身振り通信規格であるMpeg·4Face&BodyAnimationに準拠した手話通信・アニメーション環境構築ライブラリを、プラットフォームフリーなソフトウエア開発環境であるJava3Dを用いて構築した。本ライブラリを適用した手話アニメーションプレーヤーを構築し、通常のPC環境下で十分な描画速度が得られることを確認した

 

【パネル討論会】

日本手話学会の歴史と展望

パネラー:田上隆司・神田和幸・森壮也

 

【ミニ講座】

ろう児の文法獲得

武居渡(金沢大学 教育学部)

 

【記念講演会】

聴覚障害児教育と手話:言語獲得・言語資本・障害認識

上農正剛(九州保健福祉大学社会福祉学部東洋介護福祉学科)