2021年2月2日 更新


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日本手話学会第21回大会

日程:1995年9月9・10日

場所:中京大学・名古屋学舎

 

【研究発表】

離島に住む成人聾者の身振りについて

武居渡(筑波大学大学院)・鳥越隆士(国立身体障害者リハビリテーションセンター)

離島に住む修学経験のない成人聾者の姉妹2名(70歳・67歳)の使用していた身振りを記述し,その分析を行った.その結果,以下の事が明らかになった。第一に,指さしが身振り全体の約30%を占め,それが示す範囲は,単に具体物に限らず,その場にない抽象的な事象までも含んでいた.第二に,手話言語がそうであるように,手型が,非連続的ないくつかのカテゴリーを形成し,これを用いて現実の事象を表していた.

 

入所施設における聾者と聴者の相互行為 –聴覚障害者専用老人ホームにおける観察調査-

西野恵美子(明治学院大学)

全国に四施設ある聴覚障害者専用老人ホームの一つ,あすらや荘.そこにクラス入所者の”ことば”は多種多様であり,日本手話の通じる人は多く見ても3分の1程度しかいない.一方,施設職員は皆聴者で,シムコムができる職員はいるが手話を話せる職員は一人もいない.このような状況下で観察された相互行為事例を通し,聾者と聴者のコミュニケーション上の課題,手話を習得していない聾者の”ことば”について考察する.

 

手話工学:日本手話電子化辞書研究の現状

加藤雄士(筑波技術短期大学)・神田和幸(中京大学)

 

日本手話電子辞書データベースの分析

神田和幸(中京大学)・中 博一(聴力障害者情報文化センター)・加藤勝由(中京大学オープンカレッジ)・後藤昭夫(サインメディア)

 

日米手話テキストの比較

赤城俊仁(日本手話学会会員)

アメリカの手話テキストの内容を日本の手話テキストと比較すると,かなり進んでいます.進んだ手話の言語学的研究を基礎に作成されているアメリカのテキストと日本の手話テキストとを言語学的な視点から比較検討をしながら,アメリカの手話テキストを紹介したいと思います.

 

手話の文末における動きの分類

関 宜正・馬屋原邦博・塚田賢信(東京都心身障害者福祉センター)

 

指手骨格モデルを用いた指文字認識

荻原芳彦・堀口進(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)

近年,人と機械の新しいコミュニケーション手段として身体動作を用いたインターフェースに関する研究が活発に行われている.情報伝達手段に身体動作を用いる事は,人間の意思を自然かつ直接的に機械に伝える事を可能とする.テは身体動作の中でも最も代表的な効果器であり,外界に対して積極的に働きかける最も友好的な手段を提供する.手を用いたインターフェースを実現するためには,複雑な3次元形状を呈する手形状の認識が必須となる.本報告では,手形状入力装置を用いた指文字認識に関する手法について検討する.まず,手形状入力装置から得られる手指の関節角を直接用いて作成した標準登録パターンを用いた手法では個人差による影響が大きくなることを示す.次に,入力データをまずコード化し,その特徴を考慮して標準登録パターンを作成することより,個人差の影響をある程度吸収する事が可能となることを示す.更に,骨格モデルを考慮して指の位置関係の情報追加を行って認識を行うと,単独一位認識率を向上させることができることを明らかにする.

 

日本語から日本手話への機械翻訳に関する検討

徳田昌晃・奥村学(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科)

計算機で扱いやすい手話の一次元的な表記法「手話表記法」を提案する。この手話表記文で記述した対訳コーパスと手話単語辞書を作成し,これらを使った日本語から手話への変換手法を検討する.日本語に比べ,手話単語は非常に少ないため,適切な単語が手話単語辞書に存在しなかったり,変換の際に日本語単語の曖昧性で変換先の手話の単語を決定できない問題が発生する.そこで日本語辞書の語釈文を使って日本語単語の語義を決定し,手話単語を選定する方法を検討する.

 

手話学習システムの入出力インタフェースに関する一考察

寺内美奈(職業能力開発大学校)・長嶋祐二(工学院大学)

手話は聴覚障害者が確立したコミュニケーション手段の一つである.従来の手話の本では単語レベルの記述が多く,このため初学者は文章表現でも単語の羅列のみで調動し非文を表出してしまう.これは,文脈により語の屈折 (調動の変化)が生じることに気づかないためである.このような間題を考慮し,我々は手話学習支援システムの構築を行っている.本報告では,本学習システムの基本構成ならびに入出力インタフェースの基本設計概念について検討する.

 

手話の大局的な調動認識に関する基礎的検討

藤井昌紀・亀離了・長嶋祐二(工学院大学)

近年,手話の関心が高まり,工学的な側面からの研究も年々増加している.我々は手話を非接触型で認識する方法について研究を進めている.本報告では,手話の大局的な動きを表すV形態と空間関係を,射影された2次元の時空間画像と時間遅延型ニューラルネットを用いて認識をする方法について検討を行う.また,片手のみの手話単語について基礎的な実験を行ったのでその結果を示す.

 

【公開シンポジウム】

自然言語の意味論の最近の動向:言語の意味の総合的理論に向けて

白井賢一郎(中京大学教養学部・大学院情報科学研究科)

 

計算言語学の立場から意味論を考える

白井英俊(中京大学情報科学部)