2021年2月2日 更新


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日本手話学会第28回大会

日程:2002年6月15・16日

場所:日本大学文理学部キャンパス

 

【研究発表】

植民地統治下朝鮮と日本手話

岩井智彦(東京大学大学院)

 

東アジアにおける手話の語彙の比較:日本手話と韓国手話の比較を中心に

佐々木大介(テキサス大学オースチン校大学院)

 

中国手話の漢字借用Ⅱ

宮本一郎(全日本ろうあ連盟 日本手話研究所外国手話研究部)

 

アメリカ手話における語彙サンドイッチ構文

松岡和美(慶應義塾大学経済学部)

 

手話による敬意表現に関する一考察

橋本陽子(上越教育大学大学院)・石井良介(群馬県立吾妻高等学校)・星名信昭(上越教育大学)

敬語は人間関係をスムーズにするために大切な交信手段の一つがある.本研究は.手話の敬語について語彙的に調べるとともに成人聴覚障害者を対象として手話による敬意表現の実態を調査した.その結果手話に敬語の語彙数が少ないことがわかった.特に尊敬語と謙譲語が少なく,接頭語の「お~」や「ご~」は認められなかった.しかし非手指動作を有効に用いることによって敬意を表す上が重要な役割を果たしていることがわかった.

 

言語行動「すみませんが」:社会言語学的考察から

平山千賀子・宮本一郎(D-PRO手話研究センター)

 

手話通訳に対する期待の内容に関する研究

白澤麻弓(筑波大学大学院心身障害学研究科・日本学術振興会特別研究員)

手話通訳の評価のためには,通訳の受け手となる聴覚障害者からの評価が重要であることは言うまでもない.しかし,現在のところ聴覚障害者が手話通訳に対して抱いている期待の内容については,個人間で異なることのみが強調されており,実際に抱かれている期待の全体的傾向や,個人間の差異の実態については明らかになっていない.そこで本研究では,インタビューおよび質問紙調査によって,聴覚障害者が手話通訳に対して抱いている期待の内容について広く意見を求め,その傾向を把握するとともに,聴覚障害者の背景の違いによる期待内容の差について検討することを目的とする.

 

同定文・存在文・所有文の類型論

箕浦信勝(東京外国語大学 外国語学部)

 

Classifierと文法的リズムの考察

棚田茂(立正大学社会福祉学部・D-PRO)

 

CL型文の構造:Some findings of JSL features from a viewpoint of CL predicate

森壮也(日本貿易振興会アジア経済研究所・全日本ろうあ連盟日本手話研究所外国手話構造研究部・世田谷副詞専門学校手話通訳士養成学科)

日本手話の形態素の語形式を見てみると固定語彙と言われるいわゆる手括栢彙と言われるものとそれ以外のものに大別することができる。このそれ以外のものは、CLとジェスチャーにさらに分けることができると思われる。CLはジェスチャーと異なり、あるルールを持った形式である。このCLによって捐成される文は手話の語順の基本的な基底をなしていると考えられる。いわゆる修飾語後償の文が自然だと言われるのは、そうした理由からであろう。固定語彙による文の分析のみでなく、こうしたCL型の文の構造のさらなる分析が今後必要である.

 

日本手話におけえる視線の文法化:目の開き方と眉の動きについて

小薗江聡(東京家政大学非常勤)・木村晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)・市田泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)

 

トラピスト修道院の手話:『聾啞界』記事にみるトラピスト手話の歴史的考察

野呂一(東京都中野区役所)・上野益雄

戦前,ろう関係者に広く読まれていた雑誌に『聾唖界』がある.これは,大正3(1914)年1月に東京聾唖学校内にあった聾唖倶楽部が創刊したもので,翌年,日本聾唖協会が発足するとともに同会に引き継がれた.11号から編集は,大阪市立聾唖学校の教師であり,戦後,全日本堕唖連盟の初代理事長をつとめた藤本敏文があたった.昭和17(1942)年3月,政府の雑誌統合政策により,『聾唖教育』,『口話式聾教育』,『聾口話教育』とともに『聾唖の光』に統合され,昭和19(1944)年8月終刊となった.この『聾唖界』76号に,「トラピストに於て使用の手真似辞典」(以下,「トラヒスト手真似」)という興味深い記事が掲載されている.この記事をもとに今回は,トラピスト修道院で使われていた手話とはどういうものか,これがわが国にどのように影響を与えたかに焦点をあてることを目的とする.