2021年2月2日 更新
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日本手話学会第29回大会
日程:2003年10月18・19日
場所:東京大学先端科学技術研究センター
【研究発表】
日本手話における語彙的アスペクチュアリティー:「過程性」と「継統性」をめぐって
佐伯敦也(東京外国語大学外国語学部)
本手話の品詞分類について80年代以前は7〜9品詞を想定していた.しかし,箕浦(1998,2002,forthcoming)のように2品詞(実詞,虚詞)とする考えがある.形態論的基準で分類できないこと同じ語形が主語位置にも述語位置にも現れうることを踏まえると箕浦の主張は正しい.しかし一方で,日本語口型を伴わない傾向がある,屈折をするなど,いわゆる「動詞」に関する経験的事実がある.また,音声日本語話者による日本手話学習上,「名詞」「動詞」という区分は手立てとして有効であろう.そこで本発表では「動詞」を取り上げ,語彙的アスペクチュアリティーの観点から動詞らしさについて考察する.
サインライト
萩原友美(無所属)・桑原康恵(日本ろう福音協会)
日本手話における語彙の強調変化の音韻論的分析:PhonologicalandMorphophonemicanalysisofFeaturesoflntcnsivcForminJSL
森壮也(日本貿易振興機構アジア経済研究所,財団法人全日本ろうあ連盟日本手話研究所手話構造研究部)
日本手の話話の強調変化については,これまで体系的な研究はなされたことがない.実際,多くの手話指導の現場でネイティブではない講師による指導では,誤った強調変化が教えられていることが多い.こうした状況について改めて注意を喚起すると共に,実際にはどのような強調形が存在するのか,またこれらの強調変化の音韻論的(または形態音秦論的)含意がどのようなところにあるのかを考察した.強調変化はかなりの程度,非手指動作のみによって表現される場合が多く,手指動作による表現は非手指動作の認知にハンディを持つ者聴のための「冗談手話」として存在することも明らかになった(過剰般化エラー).また手指動作については,正しいものは,手話の「大きさ」の変化によるものと「速さ」の変化によるものがメインで,そのほか,数は少ないが特徴的なものとして音素レベルDeのセグメント付加によるものが発見された.これらの区別が発生する理由については,Prosodic Modelが示唆を与えているが,未だ十分な説明が得られているとは言えず,今後のさらなる各手話話彙のデータの整理などが必要である.
2モード並列処理コード混交としての日本語対応手話
箕浦信勝(東京外国語大学外国語学部)
(日本)手話と,日本語の混成言語は,日本語対応手話,手指日本語,シムコム(SiCom,simultaneouscommunication)など様々な名称で呼ばれている。ここではひとまず,ろう者の間で使われることの多い,日本語対応手話という名称で呼ぶことにする。日本語対応手話は,統語論をはじめとした文法と語彙の選択に日本語からの影響を受け,一方表出媒体として,日本語として聞き取りうる音声を表出し,あるいは音声を伴わずに日本語口形を伴い,日本手話単語の手指動作を用いて表出される。日本語対応手話は従来,安易にピジン言語とみなれることがあった。本稿では日本語対応手話をピジン言語と呼ぶことに疑問を投げかけ,特殊なコード混交であるこという解釈を提案したい。
日本手話における引用の文法化
木村 晴美(国立身体障害者リハビリテーションセンター)・小薗江聡(東京家政大学)・市田 泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)
日本手話には, 引用表現を, その本来の目的である会話や独り言, 思考内容などの再現のためでなく,特定の文法形式の一部として用いる構文がある.このような構文においては,引用表現は文法化している.引用の文法化に関する先行研究としては, 使役構文について記述したものがある(小菌江・木村・市田 2001;市田 2001).本論では,日本手話における引用の文法化について,より包括的な記述を試みる.
日本手話の音韻論における「はり」と「ゆるみ」の区別(予稿なし)
市田泰弘(国立身体障害者リハ ビ リ テーションセンター学院)
関係性の中で作られるアイデンティティ:コーダを通して考える「Deafness」と「deafness」
澁谷智子(東京大学大学院)
古日本手話を探す : 日本手話,台湾手語と(ハングル文字)の語彙分析
茂流岸マイク(Michael W. Morgan)(神戸市立外国語大学)
中年層の手話者,非手話者の「読み(語)」の認知処理様式は同じか?:聾者,聴者,聴手話学習者,聴手話通訳
田中光子
日本手話における空間の文法化
小菌江聡(東京家政大学)・木村晴美.市田 泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター学院)